表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

第2話

広場のベンチに向かうと、既に天道さんは座りゲーム機をポチポチと操作していた。

 ベンチに着いたものの、現状をまだ飲み込めていない僕は何から質問するべきか考える。


「なにしてるんですか? 遠慮せず座ってください」

 彼女は空いた席をポンポンと軽く叩きながらそんなことを言った。

「遠慮してるわけではないんだけどな……」と、小さくツッコみながらとりあえず席に座る。

「では、ローカル通信(※近距離での通信のこと)で対戦募集しますね!」

「ちょ、ちょっと待って!」

 今すぐにでも対戦を始めたいという眼差しだ。慌ててリュックからゲーム機を取り出し、『ポコモン』を起動する。ポコモンとは自分がトレーナーとなり架空のモンスターを育成し、他のトレーナー達と対戦を交えながら冒険をするロールプレイングゲームである。多くのプレイヤーはストーリーをクリアした後に、より強いポケモンを捕まえ、鍛え、ネットを通じたオンライン対戦で日々バトルを楽しんでいる。対戦用のモンスターのパーティを編成しながら天道さんに質問することにした。

「あの……天道さんはなんで僕と対戦したいの?」

「サークルのツイッターで、マスター級に昇格したってツイートしていたのを見て、お手合わせ願いたいなーっと」

 マスター級とは、このゲームの全プレイヤーの上位1パーセントだけに与えられるランクのことだ。サークルのツイッターでは活動の一環として、サークルメンバーがプレイしたゲームについて発信することがある。先日、確かに僕はランク昇格の喜びをツイートしていた。

「あぁ、あれか。そういえばそんなツイートしてたな」

「あと……激レアモンのミュアをゲットしたというのも見たので……」

「もしかして……それを奪うのが本当の目的?」


ポコモンには一つの特徴がある。対戦に勝利したトレーナーは、敗者からモンスターを1匹《《奪う》》ことができるのだ。しかも一度奪われたモンスターは、交換しようとしても、また戦い勝利しても、元のトレーナーに戻すことはできないという徹底ぶりだ。悪魔じみたシステムだが、これが世の老若男女に意外とウケて、現在大ヒットしている。


「ふ、へへ。や、やだなぁ。そそ、そんなわけないじゃないですか! ちらっと見せてもらいたいと思っただけですよ!」

「明らかに動揺してるけど……ローカル対戦の仕様、知ってるよね?」


オンライン対戦とローカル対戦には大きな違いがある。オンライン対戦で勝利すると、相手のパーティ3匹の中から1匹を選び奪うことができるが、ローカル対戦で勝利すると、パーティに編成していない、戦闘に出さなかったモンスターさえも奪うことができてしまうのだ。つまり天道さんは僕からミュアという希少なモンスター、通称激レアモンを奪おうと考えているのだろう。多分。


「知らない、とは言えませんね。ふふ……さすが、ゲームサークルの代表を務めるだけことはあります……認めましょう。なんと! 私の目的はミュアちゃんを私のものにすることだったのです! よく見抜きましたね! 褒めてあげます!」

「そんなドヤ顔で言うことではないよ……」

天道さんは得意げな顔で堂々としている。

「うーん……ミュア狙いと分かったらこの勝負、簡単には受けられないな」

「えーーー! そんな!! 男らしくないですよ先輩!」

「これで男らしさのジャッジをされるのは困るけど……勝負するメリットが僕にはないからなぁ」

「こんなかわいい女の子と勝負できるっていうメリットがあるじゃないですか!」

「自分で言うんだね……」


ミュアとは、ストーリークリア後にいける高難易度のダンジョンで極稀に出現するモンスターだ。出現する確率が低いだけでなく、倒すことが困難な上、頑張って倒した後に超低確率で仲間にできるという、仲間にすることがとにかく難しいモンスターなのだ。僕も相当時間をかけて捕まえたので、できれば手放したくない。


「あ! そういえば先輩、サークルメンバーの募集してましたよね」

「え、あぁ」

「もし先輩が私に勝てたら、私がサークルに入る、というのはどうでしょう」

「!……なるほど」


現在僕らのサークルはとあるゲームの大会に参加しようとしているが、参加するためには後1人、人数が足りない。サークルに入ってくれるとなれば喜ばしいことだ。しかも、天道さんのこの自信満々な顔を見る限り、ゲームの腕前は相当ありそうだ。


「もし天道さんが僕に勝った場合は?」

「ミュアちゃんを頂くだけで構いませんよ」

「……よし、それで手を打とう」

お互いに顔を見合わせ頷いた。


ゲームを操作し近くの対戦募集を探す。


『プレイヤー名:てんてん さんが対戦を募集しています』


天道天音を略したニックネームだろうか。

この募集しかなかったので、参加ボタンを選択する。


「あは、『XxジンxX』って……ぷっ、ふふふ……随分と可愛い名前ですね」

「うるさいぞ…昔からこの名前でやってたからこれ以外だと違和感あるんだよ!僕は準備できてるからもうバトルはじめてくれ……」

「はーい」


テンションの上がるカッコいいBGMが流れはじめ、それぞれのプレイヤーキャラクターが表示された。

『てんてん VS XxジンxX』

『バトルスタート!』

ブックマークや☆☆☆☆☆を頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ