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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界改革

作者: ねこぺんたぶ

リヒト・フォン・ルックナーはたぶん異世界転生人だ。


リヒト・フォン・ルックナーは伯爵家の次男。国内最高学府の5年制王立学校において最年少10歳で入学し、飛び級で2年で卒業。その後近隣2か国を4年留学。帰国してからはそのまま能力を買われ宰相補佐につき10年がたつ。

今年で26歳。このままいくとあと数年で宰相職も彼に承継されるのではないのかともささやかれている。

また能力だけならまだしも、エルフと見紛う程の美しく長い銀髪と蒼い瞳。

均整のとれた長身に優美な所作、物腰も柔らかく、王室の信頼もすこぶる厚い。


この世界同性異性婚認めているため、リヒト・フォン・ルックナーは時の人として国内の老若男女問わず、また周辺国から熱い視線を浴びていた。



この度ついに婚約者ができた。

お相手はダランベール侯爵家の三男ゲルト・フォン・ダランベール。28歳。

軽くウェーブのかかった金髪に下がり目じりにホクロ、すらりと背が高い二枚目。

高官として将来を期待されてる。

でも城内ではあまりいいうわさは聞かないんだけどね。


で、俺クルト・ベルガーはしがない子爵家の三男の18歳。

ここ剣と魔法の国なんだけど、残念ながら魔力はない。

では剣でと5年間剣術学校で死ぬほど鍛えて、王城の衛兵の職にやっとありついた。よくドアに前に立っているやつだ。

容姿も普通。毎日会わなきゃ顔も忘れると言われるくらい普通。身長も普通。

モテるわけでもない。ただ人と違うことといえば日本での前世を覚えているくらいかな。



こんな俺が仕事上がりに、王都では珍しく魚介を出すレストランで食事をしてた時

「ここよろしいですか」と聞かれ、咄嗟に「どうぞ」と答え、顔を上げると

リヒトがいた。

びっくりしたよ。背景がキラキラしてたよ。

目と鼻と口の穴が同時に開いたよ。食べてるものが口からちょびっと出た。あまりのキラキラに次には思わず手をかざしてしまったよ。ああ、もう少しで拝むとこだったよ。危ない危ない。

リヒトはクスクス笑いながら、

「箸を使うんですか?」と聞いてきた。

そう俺はナイフ・フォークもいいんだけどやはり箸が一番。

前世でもマイ箸を持って歩いていたぐらい。

やはりこれが一番。エコ大事!!

いやいやいや、箸やエコの概念この国にはなかった。

危ない、危ない。声に出すとこだった。

「なぜ?、…」と言いかけたら、彼も懐からマイ箸を出した。

これが彼との出会いだった。


箸の件はごまかしたけどね。母の兄の妻の弟の婚約者の友達から教えてもらったと言った。まっごまかしきれてるだろう。

リヒトも「留学先で知り合った、友人の妹の彼氏の幼馴染の隣に住む人から頂きました」と言ってたしな


これがきっかけで、彼とは会えば話をする仲になった。


ある休日、家の近くのカフェで少し遅い昼食をとっているとリヒトが入ってきた。

リヒトは俺に気づいてテーブルまで来てくれた。

「リヒト様もお昼をここで済ますのですか」

「いや、待ち合わせです。」と言いながら、コーヒーを頼んでいた。

待ち人と一緒に食事を約束しているから、コーヒー以外は注文はしないようだ。

相手はゲルト・フォン・ダランベール。

やはり、婚約者と待ち合わせかと俺は少しがっかりしたが、仕方のないこと。

まあ、ゲルトが来るまでは彼を独占しようと話かけた。


ゲルトは待ち合わせの時間より3時間遅れてきた。

「リヒト、すまない。遅れた。今日は道が混んでて、馬車同士の事故があったようだ」

と女性ものの香水のにおいをぷんぷんさせながら、悠然と手を挙げながら入ってきた

おいおいおいそれ嘘だろう。女と会って遅れただけだろ。それにリヒトを3時間も待たせて、何も食べていないんだぞ。と怒り半分ににらめつけてたのだが、

リヒトは、「えっそれは大変なことではないですか。事故現場はどこです? 

 被害は?  怪我人はでてませんでしたか? その後の対応は?   

 今日の城外守護警備はどこの隊でした?

 ああ、行って確認したほうが早いですね。案内してください。」と立ち上がり、

慌てたゲルトが

「ああ、いや、そんなに大事なことにはならなかったようだ。俺が通った時には片付いてたようだ。」とゲルトはバツの悪そうにぼそぼそと答えていた。

「そうでしたか。よかったです。あなたも気を付けてくださいね。ゲルト。

 ちょっと早いですが、夕飯のレストラン予約してますので、出ましょうか。

 じゃまたお話しましょうね。クルト君。では」

と二人は連れ立って出て行ってしまった。

二人の後ろ姿は一対の絵のようにきれいだった。


事故と聞いて、念のため、俺は確認に行ってみたよ。

結果からいうと事故はなかったし街はおおむね平和だった。酔っ払い同士の喧嘩の仲裁と路上で寝ていたおっちゃんを自宅に送り届けるくらいかな。

不幸な怪我人や馬はいなくてよかったよ。




翌日から、リヒトは怒涛の路線改革を始めた。

乗合馬車の停留所や時刻表。急病人のための馬車を企画立案、配置。馬車が通れない細い道には治安を守る守護警備の詰め所にストレチャーや担架を常備させた。

車道も狭いところは一方通行にし、上りと下りに分けるように走らせ、広い道には中央線を描き上りと下りに分け、歩道を作った。交差点では一時停止線を引いた。

馬車も通れない場所には人力車を設置。

道路の広さに応じて馬車の速度制限も設けたようだ。


ゲルトの屋敷にデートの時間4時間前にはなぜか人力車を配置したらしい。

「注意1秒怪我一生。」と書かれたプラカードを車夫は持っていたとかいないとか



俺はというと、リヒトの路線改革に何故かただの衛兵である俺が何故か巻き込まれ、衛兵の仕事を外され政務室での路線会議。

現場の視察や工事支持。人員の割り振り。監督。

人力車やストレチャーの製図を引いたり説明したりで。ん、なんで俺?

前世は建設関係の仕事だったから、できるけどさ。


ここはどこのブラックだよと弱音を吐きかけたときに、ようやく2か月ぶりに休みが取れた休日

リヒトと会ったカフェで昼食をとっていた。

そこにまたリヒトが手を挙げながら入ってきた。

デジャブ?と思いながらも、

「リヒト様。お疲れ様です。今日はお休みですか?」と連日の仕事疲れにジト目で挨拶すると

「クルト君、上目遣いだめですよ。」とリヒトは顔を赤くして目をそらし、

「やっと一区切りがついたので、ようやく休みがとれました。」と俺の前の席についた。

おっ今日はゆっくり話できるのかなと思い、「お食事ですか」と尋ねると

「待ち合わせです」と返事が。またゲルトか。へこむわぁ。

まあ屋敷前に人力車を用意しているらしいので、今回は遅刻なしかなと思い、ちょっと

残念な気持ちになったが。


ゲルトは待ち合わせ時間に来なかった。

3時間後、ゲルトは首筋にキスマークを付けて

「すまない。道に迷った」と言って入ってきた

はぁあああ!! 嘘つくんじゃねぇよ。キスマーク付けていう言い訳じゃあねえよ。

脳みそアメーバですか。そうですか。前回もここで待ち合わせやったやないかい。

と脳内で罵倒しまくる俺に対して、

リヒトは、「おや、人力車はどうしたのですか? 車夫にはこの場所を伝えていたのですが。

 彼が迷ったのですか? それとも路線改革の見直しをしなければならない案件ですか? 

 それは大変。対策をとらねばいけませんね」

「いや、急用ができたので、人力車は断ったよ。悪いな。出先からここに来たんだ」

と目をそらしながら言うゲルトに

「では、車夫に出先まで送ってもらってもよろしかったのに。」

「いやぁ、依頼されたこと以外のことを頼むのは悪いしな。

 でも、まあ、なんだ、今日は久々の休日なんだろ?

 ほしい本があるって言ってたよな。探しに行こう。」

「そうですね。じゃ、クルト君またね」と2人は立ち上がった




次にリヒトは地図を作った。等高線や細かな道や袋小路、隠し通路、軍事拠点、武器庫から個人宅名が入ったもの。後ろ暗い貴族が悲鳴を上げるようなやつ。

しかも大縮尺、中縮尺、小縮尺の地図。マニアか。

この情報満載な地図は国の情報機関に回したようだ。のちにリヒトの測量能力は高く買われ、次回外交官に随行が決まったのは別の話。

この正確な地図のもとに犯罪地図作り、各守護警備隊に配布し、防犯率を上げたようだ。

国内外には観光用に街角マップを配布し経済的にも潤ったようだ。


で、ゲルト宅にはゲルト宅からよく待ち合わせに使うカフェやレストランに行く道中の道しるべに、愛人宅や愛人とデートに使う常宿、花屋、アクセサリーショップ、婦人服屋等に印をつけ、

そこを通るように指示した地図を贈ったらしい。

・・・・怖いわ。



それでもゲルトは待ち合わせに遅れてきたらしい。

曰く「リヒトとのデートに着ていく服に悩んだとか」女子か。

悩んで2時間、ないわぁと普通なら考えるんだが

それを聞いたリヒトは王都内の洋装品店、ジュエリー、小物店に専門のコーディネーターを教育するように発信した。

次に商業施設に百貨店をつくり、そこに王都有数の洋装品店、アクセサリー、靴等の専門店を集約し、ショーウィンドウにトータルコーディネートされたマネキンを置いた。

また、リヒトは留学していたことから、諸外国の服飾にも精通しており、各国のオリエンタルな衣装の輸入。これをアレンジして国内に発信し、これが評判をよび逆輸入されたとか。

あとファッションデザイナーの育成と発表の場をもつように図った。

これには女性が食いつき経済が潤ったらしい


ゲルトには東国から輸入された着物とふんどし一式が贈られてきたらしい。

これ着方わかんないよね。それに、これを着て外出したら目立ってしょうがなくない? 愛人といたらばれるよね

でも贈られた手前、1度は着ていかなきゃだし。どうするのかな?

俺なら着方わかるし、着るけどな。




次のゲルトの遅刻理由は

夕飯の約束なのに、起きれなかったというものらしい

リヒトは懐中時計に目覚まし機能を取り付けるように開発したらしい

壁掛け目覚まし時計も作ったらしい

このころになるとリヒトの改革が経済効果が上がると各業種から、手が上がってきたらしい。

この目覚まし時計も、結構需要があったらしく、この開発協力に名乗りを上げた業者はウハウハだ。


で、ゲルト宅には、リヒト自らピタゴラスイッチを仕掛けに行ったらしい。

可燃性魔石が燃え尽きると同時に仕掛けが動くようにセット。

見事にベット横にたらいが落ちてきて、ゲルトは連れ込んだ女性とともに被害にあったらしい。



それでも、ゲルトは遅刻した。

曰く「仕事がんばりすぎて遅れたらしい」

翌日から、ゲルトとリヒトの王城の職場で業務改革が推進されていった。

業務内容の見直し、簡素化や業務の一本化などを行い、なるべく定時で上がれるように

図ったのだ。特にゲルトとの待ち合わせ日は定時退社日として固定をしてきたのだ

まあ公私混同ではあるが、今までの形態の仕事よりメリハリがあって、スムーズにはかどるとおおむね好評らしい。



結果ゲルトは粛清された。無断欠勤、早退、遅刻、横領などがばれてしまったらしい。

さすがの侯爵家も看過できないものとなりゲルトを放逐。リヒトとの縁談は破棄された。



リヒトは落ち込んでいるのかと思えばそうでもない。いつもの冷静沈着、物腰柔らかに仕事をこなす姿があった。




その後、貴族間ではリヒトとの婚約は身を亡ぼすといううわさが立ち始め、国内外でこの話題は

タブーとなった。





休日いつものカフェで、俺がランチをとっていると、リヒトが入ってきて一言。

「で、そろそろ、俺と付き合わないか? 俺の素性も気が付いているんだろ。お前の素性も知ってる」

リヒトはこのしゃべり方が地なのか? 案外新鮮。

何が「で、」で「そろそろ」ってなんだ? 付き合うって誰と誰とかな? 何を言っているのかよくわからないので、置いといてと。

でもリヒトが転生者なんだったて、うん、気が付いてたよ。

「置いといてって声に出てるぞ」とこめかみを指で押さえ、ため息をついてるリヒトほおっといて、

「俺の素性どこでバレたですか?」と聞くと

「気にするとこそこか? まあレストランで『エコ大事』とにぎりこぶしを振り上げたとこかな。

路面改革をしようと立ち上がった時、ガードレールと停留所の提案をし、また図面を引きながら各方面に指示出してただろ。

地図作ったときは国土〇理院か? ゼン〇ンやないかい‼と突っ込んでたし、

ゲルトに着物と贈った時は物欲しそうな顔してた。

ピタゴラスイッチのたらいに爆笑してたし。

業務改革では、〇き方改革なのか?と言って率先してテキスト作って各方面にレクチャーしに回ってたよな。途中、クルトは俺専用の補佐だと根回しすることになったのはうれしい誤算だったが。

で、付き合うんだろ?」


あぁレストランって、俺喋ってたんかい。ってか、思うこと全部口に出してるやん。

ダメじゃん。俺・・・・

路面改革のあたりから衛兵詰め所に俺のロッカーがなかったのは、あれっとは思ったけどさ。

宰相室近くに俺専用の部屋があったのは、リヒト専用補佐だったんだね。ロッカールームが変わっただけかと思ってたよ。

今更だけど、この人策士だわ。あっ俺が間抜けなだけか。

でも、悪くないなと思う自分がいる。



「じゃ、まず着物デートからお願いします。」と俺は答えた。

「脱がしやすくていいな」と舌なめずりをしながら答えるリヒトに早まったかなと

俺は思った。












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