VS 森熊
雪乃は木の上で待機していた。
偶然、巨大な熊を発見し討伐の為に罠を作って準備を済ませた。
「さて、始めようかね」
手にはゴルフボールほどの大きさの石が握られている。元々、棒手裏剣という投擲武器の扱いを習っていたおかげか、スキルに投擲術があった。色々とスキルの検証をしていて、このスキルは投げる物に割と何でも補正が入る事が分かった。当然、石も適応内である。
木の上から顔の側面に向かって石を投げた。元々のコントロールに加え、スキル補正が入ったことで見事に命中した。
「ほーら!こっちだよ!」
すぐさま木から飛び降り、わざと大きな声を出しながら収納から取り出した2つ目の石を投げた。熊は巨体ながら俊敏な動きで石をよけた。さらに雪乃のいる方に突進してきた。雪乃はさらに石を取り出し、熊に投げながら後退していく。
「はい。ご苦労さん」
雪乃がそう言った瞬間、熊は消えた。いや、雪乃が作った落とし穴に見事に嵌った。熊は四足で追ってきており、落とし穴に頭から嵌っていた。しかも、穴の底には土魔法で作った土槍付き。
「昔の日本じゃ落とし穴の底に竹槍取り付けて殺傷力持たせたりしてたからね。…それにしても結構酷いもんだね」
頭から落ちた熊の頭からはかなりの出血があった。しかし、絶命には至ってない。そのせいで半端にもぞもぞと藻掻いている。
「悪かったねぇ。私がもっと魔法を使いこなしてりゃ、そんなに苦しむ事も無かったろうに…」
見えている首筋に魔法を叩き込み、止めを刺した。そのままそこにしゃがみ込み、熊の死体に手を合わせる。
「さて、これどうしたもんかね?流石に熊の解体はしたことがないし、こういう素材も売れるっぽいしね。血抜きはこれで放置してればいいとして、どこに持ちこみゃ良いのかね?」
冒険者であれば大体が冒険者ギルドだが、雪乃はその辺りは詳しくなかった。とりあえず血抜きを終わらせた後、死体を収納に入れて拠点に帰った。そこで中途半端に穴を塞がれた拠点を見て呟いた。
「街を目指すのは明日にするか…」
熊に集中して拠点を出ようと入り口を塞ごうとしていた事を思い出したのだ。とは言え、巨体の熊を落とす為に結構大きめの穴を作ったりと魔力を消費していたので、結局一晩また拠点で過ごした。