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九の世界でお茶が怖い

まだ説明回です

「まず真弓に質問だ。おかしいと思わなかったか?どんな世界でも人の生存圏が出入り口になっていることに」


言われてみれば、さまざまな世界に通じているハザマの気温や重力や空気の組成が人類向けなのは不思議だ。


「ああ、鍵人の生活圏の話ね なのだ」


カコちゃんがなのだを一瞬忘れたのだ。

あと、鍵人とはなんなのだろう


「カコは黙っててくれるか。今は真弓に授業中だ。まあ正解だ。『鍵人』ハザマでは『主人公』呼びが一般的だな」


ああ、鍵人と主人公は一緒なんだ。


「まあ、主人公の特性なんだが人が住む世界と人が住む世界を結びつける役割がある。天然の界穴に落ちる話はどこにでもあるだろう」

ここでカタリーナさんは言葉を切った。


「界穴とは別世界への出入り口だ。失踪事件の何割かはそれなのだ。世界反発作用で戻って来ることも多い」


界穴は世界の扉。ということはハザマの扉とか、光る玉とかが界穴ということだろう。


「まあ、人類が生まれる世界だ。星の組成はそう変わらんし共通する生物も少なくない。ちょっとした可能性の相違で世界は無限に増えていく」


なんとなく分かった。つまり酸素濃度とか重力とかの心配は必要無いってことだな。


「あれ、わたし主人公なのに別の世界へ行って大丈夫なんですか?」

これだけ聞いておこう。


「ああ、主人公とはその世界の人類の中で天然の魔力が潜在覚醒合わせて一番多い者のことだ。その世界から消えれば自然と別の人間が主人公になる。ここまで大丈夫か?」


「魔力って何ですか?」

フンニューレロレロッパーの境地で考えるよりも先に言葉が出た。


「別の世界へ干渉する力のことだ。魔術のエネルギー源でもあるがその話は割愛させてもらおう」


「なるほどです」

分かったような分からんような。


「主人公及び元主人公には特殊な力があってだな。自分の強い感情を幻想領域内で独立させることが出来る」


どういうことだかよく分からない。


「死の間際の強い恨みから妖刀を作り出したりするのよ」

勇芽ちゃんが腰の刀を持ちながら言った。


なるほど。つまり主人公とはなにか不思議なことを起こせるかもしれない人間ということか。

その力がわたしにあるというのはピンとこないけど。


「あと異世界人の影響で主人公が満足すると特殊な界穴が開く」


わたしの世界を越えるときに触ったあの光る玉がその特殊な界穴なのか。


「その界穴は開いた異世界人の利になる世界へ繋げてくれるのだ」

カタリーナさんがなのだで区切ったのが少しおかしかった。


つまりあの花畑を踏みつけたら逮捕される世界はマガリさんの利になる世界ということだろう。


「この辺で異界越境理論の基礎は終わりだ。幻想領域理論は先ほどほとんど説明したが一応確認だ。幻想領域とは何だ?」


「えっと、思いが物理現象より優先されるなんでもありの空間でしたっけ?」

わたしは不安を抱えながら発言した。


「正解だ」


よかったと胸を撫で下ろした。


「神経細胞も微弱だが幻想領域を構築している。幻想領域は意外と普遍的なものだ」


「へぇー」


「次に究極エネルギーの説明だ」


「えっと、世界を滅ぼす幻想領域でしたっけ」


「正解だ。今回は伝え曲げの説明だけしよう。伝え曲げは元主人公が死から蘇ると生まれるビールス状の存在だ」


ビールスはウイルスのことだ。つまり伝え曲げは病気の一種なのだろう。あと、やはり死者を蘇らせる手段はあるみたいだ。


「死の瞬間の記憶を持ったまま蘇生すると死の瞬間の苦しみが長時間襲うのだが、それを軽減するため主人公の場合幻想領域を構築する際『伝え曲げ』が生まれる」


つまり蘇る側が辛いと。そしてわたしは元主人公だから生き返れないと。


「見せた方が早い」

勇芽ちゃんがどこからともなく棒付きのグラスを四つ取り出した。


「私と真弓とカコとマガリの分ね」

ミーヨンさんがそう言いながらわたしたちに配ってくれた。


ミーヨンさんとマガリさんが棒を耳にひっかけてグラスをの右目の前に持っていったのでわたしとカコちゃんも真似をした。


するとグラスに映像が映った。

わたしの動きに合わせて映像が移動する仕組みのようだ。


映る人は口々に「イェイ」と言っていた。


まるでイェイとしか言えなくなったみたいに。


次第に彼らの体がわけの分からない方向に曲がりくねっていった。


不気味なのは全ての人々が全く同じ形に変わったことだ。


ここで映像は途切れまた異界テントに戻った。


「これが伝え曲げに滅ぼされた世界よ。感染すると特定の言葉しか話せなくなり形状も変わり異臭を放つようになる」


見せられたことが衝撃的すぎて勇芽ちゃんの言葉が頭に入ってこなかった。


「まあ、ワタシに教えられるのはそんなところだ。1に戻るぞ」

カタリーナさんがそう言うと石の扉が空中に現れた。


「それはプレゼントするから」

勇芽ちゃんがそう言いながら扉を開けて奥へ行きゴーグルを再びつけた。


どうやらこの棒付きグラスはくれるらしい。


『人工知能のヘスティアです。よろしくお願いします』

グラスから声がした。


「どうもよろしく」

勇芽ちゃんたちに着いていきながら小さく頭を下げた。


ミーヨンさんが手に持っているライトで暗い石の階段が照らされた。

『万能スティック。ライトに刃物にスタンガンに送風機能、発熱機能、消毒機能、成分分析などが出来るアイテム。二万マザー』


ミーヨンさんが手に持っているライトの説明をヘスティアさんがしてくれた。


次に勇芽ちゃんの下駄に反応して『浮煙下駄。浮煙(ウキケムリ)が入った下駄。五十万マザー』なんて表示されるし、表示された浮煙(ウキケムリ)の文字を注視すれば『浮煙(ウキケムリ)。熱エネルギーを吸収して反重力力場を作り出すガス、持ち主の意志に反応して形を変える。可燃性』なんて表示される。


テンションが上がった。ヘスティアさんサンキュー。


確かヘスティアはギリシャ神話の神様だ。一番最初に父親に食べられちゃった女神様だ。


「勇芽。お前こんなところにいたのか」

黒地に緑の光が漏れる衣服を着た冴えない印象の男が階段の出口の先に立っていた。手には箱を持っている。


「神成戦士様がなぜここに!!?」

辟易したくなるような大声で男は驚いた。


「ワガハイはカコなのだ。猫の神成戦士なのだ。お主は誰なのじゃ?」


「ガランと申します。蝙蝠(こうもり)の神衞戦士です」

ガランさんはカコちゃんを見て急にかしこまった。


「世界の危機が近づいていておちおち寝てもいられんのだ」

カコちゃんはわたしを見ながらそう言った。


「で、何の用なのガラン?」

勇芽ちゃんがガランさんに親しげに話しかけた。


「ああ、新ハザマ名物の試作が出来たので感想を聞きたくて。カタリーナさんもミーヨンもカコさまもどうぞどうぞ。あれそちらの二人は?」

ガランさんがわたしとマガリさんをアゴで指しながら言った。


「ボクはマガリ。旅人サ」


「高槻真弓です」

お辞儀しながら名乗った。


「ガラン。農園区画、俗に言う2の管理人で()()()の永住者さ。真弓ちゃんだっけ、ハザマ歴浅そうだけど大丈夫?」


ガランさんはそう言いながら茶色い何かを箱から出してわたしの口に押し込んできた。


『老いず。何らかの理由で年をとれなくなった人』


ヘスティアさんの声は置いといて、みんなも箱の中から茶色い何かを取り出して口に入れた。

口の中の何かはシュークリームみたいな触感で味はあんこで、ここらで一つお茶が()()…じゃなくてお茶が欲しくなってくる味だ。と思っていたら中のクリームの味があんこから抹茶へ変わった。


抹茶味で落ち着きを取り戻し、饅頭怖いが少しツボに入りニヤケてしまうわたし。

ずいぶん古典的なネタで笑おうとしていることに吹き出しかけるわたし。

古典的なネタの意味が違うことに耐えられず吹き出してしまうわたし。


「ぷふっふぁははは」

わたしの口から飛び散ったそれはマガリさんの顔にぶつかった。


「不味かったかな」

ガランさんが申し訳なさそうに言った。


「いえ、全然」

わたしは手と首を猛烈に振って否定した。

具体的にいうと左手を顔の前に置いて左右に振りつつ首も左右にブンブンと振った。


「ガランさん、不味くはないけどもう少し美味しくできますよね?」


ミーヨンさんがそんなことを言った。


「待てミーヨン。これは単純な美味しさではなく印象に残すよう味を調節しているようだ」


カタリーナさんが分かりやすく味の説明を分かりやすくしてくれた。


「旨かったのだ。ガラン」

カコちゃんは目も鼻も口もないのに満面の笑顔をしていると理解できて妙な気持ちになった。


「Mrガラン.ビミだった」

わたしが吹き出した緑色の何か付けっぱなしのマガリさんが可愛かった。


数秒の間を置きマガリさんの顔を拭く事を思い至った。ハンカチをブレザーのポッケから取り出してマガリさんの顔をフキフキした。


「カタリーナさん、ハザマンジュウの量産体制が整ったら図書館に置いてください」

ガランさんが持ってきたこれはハザマンジュウというらしい。


「ガラン、あと四つはサンプルが欲しいがそれさえ揃えれば良いだろう」

カタリーナさんも満足そうだ。


「おいカタリーナ。緊急事態だ。ハザマに乱暴なお客様だ。ヌナが対応しているが、あいつは外交向きじゃない」

カタリーナさんの腕輪がしゃべった。


カタリーナさんの腕輪は銀色で衣装にマッチしていて全く意識していなかったが、意識するとやたら無骨で目が離せなくなる不思議なデザインだ。


黒小人(ダークエルフ)製の腕輪。超高性能人工知能や医療知識、魔術知識などを搭載した腕輪』

ヘスティアさんありがとう。


勇芽ちゃんとカタリーナさんとガランさんが急いでオレンジの光が当たる外に出た。


わたしやマガリさんカコちゃんミーヨンさんも続けて外に出た。


外にいる人の視点は一点に集まっていたのでそちらを見あげた。


そこには紫の船が宙に浮いてハザマのオレンジの空を埋め尽くしていた。


「おいガラン、勇芽。ワタシをヌナの元まで連れていけ」

カタリーナさんがそんなことを言うとどこからともなくガランさんが紙を取り出した。その紙が光って消えると変な形の木の台がどこからともなく現れた。


その紙は前に勇芽ちゃんが使っていた物に酷似していた。


『封印魔術。特定の物を低次空間に収納し任意のタイミングで任意の場所に低次空間から呼び戻せる』

この変な木の台はあらかじめ作っておいて封印しておいた物ということだろう。


「なるほど」

カタリーナさんはそう言うと約1.8mの銀色の大きい剣になった。

剣には神々しい装飾が施されていてわたしの目を奪う。


『幻想具現化具。無意識化の力のイメージに肉体を変換する。5億マザー』

無意識化で望んでいる姿に変わるってことでカタリーナさんは剣になりたかったということだろう。

五億マザーは日本円で約1290万円だからカタリーナさんはお金持ちだ。そういえばカタリーナさんって元女王だとマガリさんが言っていた。


ガランさんがカタリーナさんだった剣を変な木の台に乗せて射出した。


カタリーナさんだった剣は大艦隊めがけて飛んでいった。


射出した仕組みは原始的なゴムを使ったもののようだ。


「ナニがオきたのだ?」


「旧ハザマ提携都市のどこかかうかつな旅人からハザマのことが流出して侵略しようとして攻めてくるアレだな」

マガリさんの質問にガランさんが間を置かず答える。


『ハザマ提携都市。ハザマと人や物、文化の交流を行っている都市の総称』

ヘスティアさんサンキュー。


カタリーナさんが飛んでいった方を注視すると『拡大しますか』と視界に表示された。


なんとなく右目を閉じてみたが、ヘスティアさんの表示はそのままだった。


『脳に直接映像や音声を送っています』


すごい技術だ。ここでヘスティアさんにとある機能が付いているのか気になった。


『思考を読みとり疑問の答えを表示します』

やはり、わたしの頭の中を読む機能があった。


この機能を悪用する人はいないのだろうか。


『悪用出来ないようにロックがかかっています。さらにあなたの思考が干渉されるのを防ぐ機能もあります』


ヘスティアさんの質問で納得した。


『今のあなたには言語自動翻訳魔法により思考干渉を受けています』


言語翻訳魔法なんていつ受けたのだろう。

心当たりは逮捕されて宙吊りの時に勇芽ちゃんになにかされたことぐらいだ。


ここでわたしは、あの前は球の言っていることが理解できなかったけど、その後は理解できたのでおそらくあのときに受けたのだと理解した。


「あーあ、カタリーナさん忙しくなるな」

ミーヨンさんがボヤいた。


「その世界から外に出てる人間を戻して隔離いつものオチだ」


「全次元最強のヌナを敵に回したのが運の尽きね」

ガランさんや勇芽ちゃん、マガリさんやミーヨンさんもハザマが攻められているというのにのほほんとしていていまいち焦れない。


「ヌナとは何者なのだ?正直神成戦士にとっては不吉な名なのだが」

カコちゃんが目も鼻も口も無しに不満を表現していことのに感心した。


「ハザマを作った人」


「ハザマの管理者」


「カタリーナさんの思い人」


「サイキョウ」

勇芽ちゃんガランさんミーヨンさんマガリさんの順で回答が返ってきた。


ヌナさんはハザマで一番偉くて一番強い人だと。そしてカタリーナさんの思い人だと。


初めてハザマに来たときマガリさんが「魔性の女王様カタリーナが異世界人にホのジになってツいていったらしい」と言っていたがそのお相手がヌナさんみたいだ。


「もうオわったな」

マガリさんがそう言いますが何が起こったかチンプンカンプンだ。


『今回の顛末を最初から見ますか?』

なんてヘスティアさんが聞いてきたのでお願いしますと念じた。



視界の中央に丸い穴が作られた。


穴の奥はハザマのどこまでも続くようなオレンジの空でしたが黒い球が無数に発生してその穴から出てくる黒鉄(くろがね)の船がオレンジの空を覆い尽くした。


まっ黒ななにかがビュビュンとすごい早さで端っこから飛んできた。


その黒いなにかが消えたように見えましたがよく見ると中央に黒いなにかがいた。急停止に目が追いつけなかったみたいだ。


黒いなにかはよく見ると人の形をしていた。


『ヌナ』と黒い人に表示された。

つまりこの人が例のヌナさんということだろう。


『強い念動力で艦隊の動きを停止させています』


絵面が地味だけどこの一面に広がる数千はある大艦隊を念じるだけで停止させることが出来るとしたら確かにマガリさんの言うとおりサイキョウだろう。


ここで剣が飛んできた。カタリーナさんだ。


剣がヌナさんの近くで制止してカタリーナさんになった。


ヌナさんから黒いなにかが出てカタリーナさんの足場になった。


『強い念動力で幻想領域を構築して足場を生成しています』


視点がカタリーナさんの後ろに移動した。



「カコ、真弓をどうすれば世界の危機を回避できるの?」

勇芽ちゃんが興味深いことを言いだした。

カタリーナさんとヌナさんが動きを止めて映っている穴が小さくなって右端に寄った。ヘスティアさんすごいなありがとう。

わたしの興味が移るのに反応するのすごいなありがとう。


「ワガハイの予知は人に細かく話すことが出来ないのだ。今言えるのは真弓が色々な物を見て色々な物を聞くことが無数の世界を救う助けになるという事くらいなのだ」


カコちゃんが一息置いた。


「世界を救うところを真弓に見せてやれ。真弓が積み重ねる事が大切なのだ」


つまり、あの花踏み逮捕の世界が伝え曲げにああやって滅ぼされるのを勇芽ちゃんが防ぐとのを見せてくれるという事みたいだ。

「まず真弓に質問だ。おかしいと思わなかったか?どんな世界でも人の生存圏が出入り口になっていることに」

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原案橋本洋一
コラボ企画進行中
吉備太郎と竹姫はこちらから
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