表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/45

13話 コアとコア

姫さまは、「だから!」と強めの口調で、


思惟をぐっと引き寄せた。


多分、真剣に口説くつもりなのだろうけど、


ちょうどお湯の蛇口の下に引き寄せられた思惟の頭には、


蛇口からお湯が、滝の様に流れ落ちていた。




真剣な話をするには、若干不似合いな状況になってしまった。


お湯の滝に打たれたままの状態で、説得を続けるのか、


姫さまは少し迷ったが、決意を決め




「思惟・・・あたしの味方になって」



(続けるのかよ!)



滝の様に流れるお湯の向こう側の、


姫さまの、切羽詰まった哀しげな瞳に、思惟は、


「うん」


と、つい言ってしまった。



安心した表情になった姫さまは、可愛く微笑んだ。



これから、危険な道に進んだとしても、


この微笑みにはそれだけの価値があるの・・・


かも知れない?



わかんないけど・・・でも、いいんだ。


そんな、ふわふわした曖昧な感じで、


今までも生きて来たし、これからの生きていく。





黄金の武者は、思惟と姫さまが乗ったまま、


動き出した。




揺れは全く感じられず、


360度モニター画面の映像だけが動いていた。




騰子とうこと、会璃あいりが、


魂の抜けた思惟を支えているのが見えた。




「私が泣いてる」



魂の抜けた思惟の目から涙が零れていた。




はく・・・肉体にとって、


ずっと一緒だった魂がいないのって、寂しいの」




「・・・・」



「でも、大丈夫、思惟は死んだ訳じゃないから、


いつでも戻れるよ」



姫さまは、気遣う目で思惟を見つめた。


強気だったはずの、その目は弱々しく、


暗い後ろめたさを含んでいた。



姫さまを、後ろめたくさせる何かが、


この後、思惟の身に降りかかってくるのか?


いや・・・すでに降りかかってる。


肉体から切り離され、


今、思惟は魂だけの存在になっているし・・・



「思惟、ごめんね」



乳白色のお湯の中で、


思惟は姫さまに抱きしめられた。



魂だけの状態でのハグは、


肉体でいたころよりずっと相手に触れている感じがした。


相手の心のコアと自分の心のコアが、触れ合っているような。



急激な触れ合いに、思惟は慌てて


「私は、大丈夫だから・・・。」


と姫さまのハグから逃れた。



心と心・・・以前に、


姫さまは薄い下着の様なものを身に着けているけど、


思惟は全裸だと言う事に気づいた。


それも肉体もない魂だけでの全裸・・無防備すぎる(滝汗)




360度モニターに、思惟の身体が映った。



今まで自分自身だった自分の姿を、


こうして第3者としてみると、


思っていたより可愛い少女に見えて、


「私、意外と可愛いじゃん♪」


と、ちょっとにやけた。




つづく

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ