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麗しき500万円分のジャンク  作者: 村崎羯諦
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 現場を遠くから見物していた警察官たちは、銀行強盗犯が中にいた人質たちを引き連れ、ぞろぞろと表へ出てくる光景を見て、いったいどのように感じたのだろうか。


 もちろん、彼らは驚嘆し、あるい夢でも見ているのかと自問自するものもいたかもしれない。しかし、歓喜に身をゆだねることや、また、不可能と思われた説得を実現した浜井を賞賛することはなかった。銀行強盗犯が拳銃を人質たちになおも向けながらぞろぞろと銀行の外へと出てきたまさにその時、そのビルの上空に、きらりと光る一番星のような瞬きが現れたのだ。


 そして、あれはなんだろうと考える間もないままに、炎に包まれた衛星が、耳をつんざく轟音を引き従えながら、一瞬のうちに銀行の真上のビルに激突した。衝突によりあたり一面に衝撃波が伝わり、すぐそばに立っていた街路樹は折れ、また近くの駐車場に停めてあったままの自転車もまるで綿毛のように空高く吹き飛ばされていく。

 

 その衝撃はもちろん現場から遠くにいた警察官たちにも直撃し、数人の華奢な警察官たちは自転車と同じように背後へ吹き飛ばされ、平均以上の体重をしている者たちも、おもわず後ろにのけぞった。そして、銀行から遠く離れることができなかった浜井らはそれ以上の被害を受けた。


 勲章レベルの働きをなした警察官だろうと、唾棄すべき銀行強盗犯だろうと、憐れむべき無辜の民であろうと、等しく衝撃波の犠牲となった。ただただ吹き飛ばされてしまうだけならまだましな方で、多くの者は固いアスファルトやガードレールに打ち付けられたり、飛び散っガラスの破片で無数の切り傷を負う羽目になった。彼らはすべからく血を流し、そして、骨折を負った。


 しかし、それでもなお、人質の中に年少者や高齢者がいなかったことも幸いして死亡者は一人もいなかった。もちろん銀行強盗犯も同じく、衝撃波に飛ばされ、地面に打ち付けられ、しばらくの間意識を失うことになったものの、何とか一命をとりとめた。


 そして、意識が目覚めた時に彼らは病院のベッドの上にいた。その横には彼らをじっと見下ろす数人の警察官がいた。そして、自分の命が助かったことに何らかの運命を感じつつも、警察官の横で、動くことも困難なほどの重傷を負った彼らは等しく聞くに堪えない悪態をつかざるを得なかった。ちくしょう!

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