転職-02-
「ほ、本当にそれで良いのじゃな?」
転職神官になると宣言した俺に再度問いかけてくるが迷わず頷く。
「良かろう。<転職-ジョブチェンジ->」
俺の左胸に手をかざし、そう唱えられると暖かな光に包まれる。これが転職神官のユニークスキルか。
「おお!これでもう転職できたんですか?」
「うむ、これで完了じゃよ。ああ、そうじゃ久しぶりの同僚には名乗っておかなくてはな。ワシはダルマン、もう5年ほど一人でこの仕事をしとったからのぉ。早くギルドに登録して手伝っとくれ」
ダルマンさんはそう言いながら後ろで見ていた受付嬢に目配せをする。
「では、ギルド登録を承りますが転職神官の勤務場所はこのギルドになりますのでまずは中へどうぞ」
そう案内されたカウンター奥の個室で受付嬢と向かい合って座る。すると一枚の紙とペンを渡された。
「こちら、このギルドで働くのに必要な契約書になりますのでサインをお願い致します」
サイン…つまり名前を書けばいいんだよな。
しかしタイラ ユウトなんて完全な日本名はこの世界観に合わないな。しかもせっかくの新生活だ!名前も変えて生まれ変わろう!
転生とともに改名を決めた俺は契約書にそれなりに綺麗な字でこう書いた
「ユージン・テイラー」
「ではテイラーさん、改めまして当ギルド受付事務を担当しますリセ・プティオンです。これからよろしくお願いします」
そう名乗られて初めて彼女を凝視したが、長くウェーブのかかった綺麗なブロンドヘアーにメガネ、そして大きな胸。最高だ。
「こ、こちらこそよろしく」
「では早速ダルマン様と転職神官として働いていただきたいのですが、テイラー様は職業についてあまりご存知ない様子ですね。無職でしたし」
あ、この人ズバズバいくタイプの人だ
「いまから基本的なことをお教えしますので、しっかりと理解してください。質問があればいつでもお聞きください」
「は、はい!」
「まず全職業は大きく[戦闘系][非戦闘系]の2つに分けられ、さらに[近接職][遠隔職][魔法職]と[生産職][加工職]の5つに分けられます。転職神官は便宜上、魔法職に分類されますが非戦闘系になり、このような例外もございます」
割と即決してしまったが転職神官、例外職だったのか…
「ちなみに全世界の約8割の方々が非戦闘系になります。この非戦闘系の職業の方々が得られるスキルポイントは先程も少しお話ししましたように年間2Pほどになります。もちろん本人次第で得られるスキルポイントは増減いたします」
なるほど、完全に努力次第の実力社会だな。
「一方で戦闘系職業の方はモンスターを倒すことによってスキルポイントを獲得することができるため、非戦闘系より早い成長が可能になります。獲得ペースは個人の実力に依りますが、やはりモンスターとの戦闘で亡くなってしまう方もいますので危険の多い職業になりますね」
やっぱりいるよな、モンスター。さっきドラゴンテイマーって聞こえてきたってことはドラゴンもいるんだろうな…
まぁ俺は非戦闘系だ、命の危険なんてそうないだろう。うん。
「転職神官の仕事は一つがその名の通り転職です。<転職-ジョブチェンジ->を用いて対象をステータスの満たした職業に変更することができます。もちろん転職後は前職のユニークスキルを使用することはできなくなりますし、加えてその職業で覚えた特技や呪文も忘れてしまいます。」
さっきやってもらったばかりだからこれは想像できるぞ。無職だったから忘れる特技も呪文もなかったけどな!!!くそ!!!
にしても…
「すいません、転職神官が一人だったのは分かりましたけど、この街はそんなに転職する人が多いんですか?」
ふと疑問に思ったことを口にする。
あの長蛇の列ができるほどこの街は定職につかない人が多いのだろうか。
「いえ、そうではありません。転職神官は転職以外にもう一つ行えることがあります。というよりもこちらの方を利用される方が圧倒的に多いのですが、それが<転職-ジョブチェンジ->をあえて不完全に使用することで可能となる<一時転職-プロベーション->です。これは通常の転職と異なり、元の職業のユニークスキルはもちろん特技呪文を忘れることなく最長8時間の転職が可能となります」
「え!それはつまり近接職の人が遠隔職に<試用期間-プロベーション->した場合、近接遠隔両方のスキルが使えるということですか?」
「理論的にはそうなりますが、戦闘職の方は主に一つのステータスを集中的に上昇させますので大きく異なる職への転職はできませんね。<一時転職-プロベーション->の主な利用者は日々仕事内容が変わる日雇い労働者や本転職前に実践して見たい方、趣味や娯楽にユニークスキルを使用したい方などになります。非戦闘系の転職に必要なステータスが比較的低いためにできることですね。」
まぁ確かに趣味の部分は家庭菜園や日曜大工やるのに専門職のユニークスキル使えたらいろいろ捗るもんな。
「大まかな説明は以上になりますが、なにか質問などはありますでしょうか?」
「いえ、あとはやりながら覚えますよ!」
そうだ、はやく働かないと今日の飯も宿もなくなってしまう!
「ではダルマン様のお隣でよろしくお願いします」
個室のドアを開けてくれたリセに礼をした後、足早にダルマンの元へと向かった。
よし、とりあえず今日の日銭だ!
ハロワ職員1日目、やってやる!
完全に説明回になってしまいました…