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偏在の理想ボーイ幻覚の普通ガール  作者: キャボション
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疑惑の花

警察署では警察官に色々と聞かれた。嘘をついても仕方がないので質問されたことはそのまま答えた。今日は何日なのか警察官に聞いてみるとなんと10日間も監禁されていたようだ。その後質疑応答は2時間にも及んだ。10日間の監禁生活よりもこちらのほうがよっぽど疲れた。

取調室から出ると医者がいた。すると医者は小さな声で「久遠さん。大丈夫でしたか?」と聞いてきた。

「大丈夫です。それにこの娘に関することが少しわかりました」

「それはなんですか?」

「ここでは少し面倒です。一旦マンションに行きましょう」

「そうですね」

乃木はまだ取り調べを受けていない。どうやら少しパニックに陥っているらしく取り調べどころではないようだ。

俺と医者はマンションに向かった。

俺は医者に要点を教えた。久遠乃愛が同性愛者であること。彼女の交際相手を殺した楠田は一緒に監禁されていた乃木が雇った可能性が高いこと。そして久遠乃愛の死には将軍という人物が関係しているという3つの要点である。

「なるほど。では乃木について調べてみる必要がありそうですね」

医者は悩むようにそう言った。

「どうしてそんなに悩んでいる顔をしているんです?」

「彼女がその将軍という人物に関わっているとはいえ彼女もまた未成年。少し考えますね」

「でも乃木はこの娘の交際相手を殺しましたよ?」

「でも彼女は殺し屋を雇っただけですよ?」

医者の額からは少し汗が流れていた。

「殺し屋を雇うのも自分で殺すのも大して変わりませんよ。どっちも殺しです。違いは人数だけですよ」

「ですが」

医者の汗の量が少しずつ増えている。

「別に殺す訳ではありません。乃木について少し調べるだけですよ」

「なら、大丈夫ですか?」

医者は少し心配そうな表情をしている。

「えぇ。なので探偵を雇っていただけないでしょうか」

「はい、わかりました」

医者は探偵を雇ってくれた。乃木だって殺し屋を雇ったはずなのだ。探偵を雇っただけではバチはあたらないだろう。俺は探偵の調査結果を待つことにした。

数日後

マンションに探偵がきた。探偵は厚い封筒を持っていたがあまり表情は良くなかった。俺がどうしたんだと聞いてみると探偵は「これは触れてはいけないものだったんだ。下手したら俺が死んでいた」と青ざめた顔で言った。俺はひとまず探偵を部屋に上げた。

「触れてはいけないものっていうのはどういうことなんだ?」

「乃木真理亜、彼女はとても恐ろしい人物だったんです」

「恐ろしい人物?」

「久遠さん。ソルブ共和国って知っていますか?」

「ソルブ共和国ってロシアの近くにあるマイナーな国だろ?それがどうしたんだ?」

「乃木はその国の暗殺者だったんですよ。本名はマリア・ハルトマン。過去にエジプト軍のトップを暗殺した経歴を持っています。ひとつだけ言えるのは乃木が殺し屋を雇うのはおかしいということです」

「それ以外の情報は?それにその情報はどこで手に入れたんだ?」

「ひとつだけあります。将軍という人物が日本人であるということだけです。乃木や将軍に関する情報はパソコンを少しいじりました」

「ハッキングか。そりゃ死にかける訳だ。それで将軍についてもっと深い情報はないのか?」

「将軍についてもっと深く知っていたら俺はもうこの世にいませんよ。それと警告させてください」

探偵は怖がっている顔をしながらそう言った。

「彼女はあなたと交際するためにどんな手でも使います。形だけでも彼女と交際をしてください」

「わかった。警告ありがとう」

「ではまた。増山リサーチのご利用をお待ちしています」

探偵は事務所へと帰っていった。

まさか乃木が外国の暗殺者だったとは。ではなぜ楠田を雇ったのか。謎は深まるばかりだ。とりあえず形式上の交際はするべきだろう。そうすれば周りへの被害はほぼ無くなるに違いない。しばらくしたらハロウィンだ。おそらく乃木はその日に告白をしてくるはずだ。その時は受け入れよう。そんなことを考えているとメールがきた。乃木からだ。メールにはこう書いてあった。

「乃愛ちゃん、明日の放課後ハロウィンの衣装を買いにいこうよ」

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