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偏在の理想ボーイ幻覚の普通ガール  作者: キャボション
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にゃーにゃー

映画館前

「ごめーん!寝坊したー!」

乃木が慌てて走ってきた。

「30分の遅刻ならまだ良いよ。昔2時間遅れで来た奴がいたから」

そう。俺が以前男の高校生だった時に当時の彼女が2時間も遅れてきたことがある。彼女は遅刻について謝罪をしないどころかその日のデートに対して文句しか言わず腹が立った俺が彼女を置いて帰ったのでよく覚えている。

それに比べたら乃木は非常に誠実だ。しかし遅刻は良くない。遅刻に関しては少しだけ乃木に注意した。

「まぁ映画を観に行こうよ!」

乃木は話題を変えた。かなり無理やり変えたのでむしろ清々しいくらいだ。

「そうだな。でも上映まであと30分くらいあるぞ?どこで時間を潰すんだ?」

「映画館でグッズを見てみようよ!」

「なるほど、それがあったか」

俺と乃木は映画館に入った。

「おっ!これは買いだな」

俺は戦争映画のグッズのドックタグを買った。

「乃愛ちゃんはなんだか男の子みたいだね」

乃木は微笑んでいた。

「そう言う真理亜は何を買ったんだ?」

「私はねぇ、これ!」

乃木は恋愛映画に出演する俳優や女優の写真集を購入していた。

「なるほど」

「この人格好いいでしょ?」

「だな」

「もう、ホントに見てるの?」

「見てるよ」

そんな会話をしているとあっという間に上映時間になった。

「あ!乃愛ちゃん、映画始まるよ!行こ!」

乃木は上映されるシアターまで走っていった。

「おい、待てよ」

俺は乃木を追いかけた。

数分後

「ほら、正直に言えよ」

ヒロインの幼なじみがヒロインに壁ドンをしていた。ヒロインの頬は少し赤くなり何かを小さく言った。すると幼なじみはヒロインに顎グイをしていた。すると後ろから「キャー」という小さな声が聞こえた。今俺は眠気と戦っている。要するにこの映画は俺にとって退屈以外の何者でもないのだ。

眠ろうと思ったが隣にはときめいている乃木が座っている。ここで眠るのは失礼になってしまう。しかしまぶたはだんだんと重くなっていき、ついには目を閉じてしまった。

2時間後

「乃愛ちゃん、起きて。起きてよ」

「ん?」

乃木が俺を揺さぶっていた。どうやら眠ってしまったようだ。

「映画終わったよ?本当にキュンキュンできる良い映画だったのに」

乃木は少し不機嫌そうになっていた。

「悪かったよ。映画館の近くにカフェがあるからそこに行こうよ。お金は全部こっちが出すからさ」

「本当に?」

乃木は少し機嫌が良くなったようだ。

「でも乃愛ちゃんが観たい映画は良いの?」

「カフェの後で良いよ。映画は逃げないしね」

「それもそうだね」

数分後

「ん~、美味しい!」

乃木は生クリームが山盛りになったパンケーキを幸せそうに食べていた。

「それなら良かった。本当に美味しそうに食べるな」

「美味しそうじゃなくて美味しいの!乃愛ちゃんはコーヒーだけで良いの?」

「良いんだ別に。お腹が空いている訳でもないし」

「それなら良いけど。そうだ、乃愛ちゃんの観たい映画はどんな内容なの?」

乃木は唐突に聞いてきた。

「第二次世界対戦で起きた出来事を元にした映画だよ。日本軍が当時敵だったイギリス軍の軍人たちを助ける話」

「そうなんだ」

聞いてきたはずなのに乃木は興味がなさそうにパンケーキを再び食べ始めた。女というのはまるで猫のように気まぐれだ。猫が女であるとイメージするのも仕方がない気がしてきた。

乃木と話をしているとひとりの男に声をかけられた。チャラい格好でサングラスをかけている。胡散臭い男だ。

「君、タレントとかに興味無いかな」

「いえ、無いです」

男は少し残念そうな表情をしていた。

「もしも興味が湧いたらここに電話してよ。じゃあ!」

男は名刺を置いてどこかに行ってしまった。

「なんだったんだあれ」

乃木にそう聞くと乃木は固まっていた。

「真理亜?どうしたんだ?」

「乃愛ちゃん、あの人有名なスカウトマンだよ。あの人がスカウトした人はみんな有名になってるの!ほら!見て!」

乃木のスマートフォンには先程の男についてのことが書いてあった。

「乃愛ちゃんすごいよ!」

「私は別に芸能人になるつもりはない」

「なんで?」

「私には他にやるべきことがあるからだ」

「やること?」

乃木は不思議そうな顔をしていた。

「真理亜と一緒に買い物に行ったり映画を観たりすることだ。さっ!食べ終わったところで映画を観に行くか!」

「乃愛ちゃん」

乃木は少し感動していた。

俺と乃木は俺が観たかった映画が上映されるシアターに入った。映画が始まって十数分後乃木は夢の世界に行ってしまった。このジャンルの映画では恋愛映画を夢中になって観ている人は寝てしまうようだ。しかし俺はそんなことを気にせず映画を観た。

2時間後

本当に素晴らしい映画だった。敵であるはずのイギリス軍の軍人たちを助ける誇り高き日本海軍。彼らの勇姿に涙がこぼれた。しかし最もすごいのはこれが実話であるということだ。ひとしきり感動したあと乃木を起こした。

「終わったの?え?なんで乃愛ちゃん泣いてるの?」

乃木は驚いていた。

「良い話だったから」

「そう」

乃木は少し受け流し気味に返事をした。

映画館の外は雨が降っていた。仕方ないので俺と乃木は割高の傘を買って別々に別れた。

「乃愛ちゃん、また学校でね」

「じゃあまた」

少しでも早く駅に着くために俺は近道をした。近道をしばらく歩いていると少し季節外れの黒いロングコートを着た男が立っていた。すると男は俺に近づいた。

「将軍に気を付けろ。将軍は殺し屋を使う」

「何のことだ?それにお前は誰なんだ!」

「いずれ分かる。それは明日かもしれないし数年後になるかもしれない」

男はどこかへ言ってしまった。

「いったい誰なんだ?」

俺は再び駅へと歩いていった。

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