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偏在の理想ボーイ幻覚の普通ガール  作者: キャボション
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俺たちは椎名の服を買うために店に向かった。俺は未だに女性のファッションがいまいち分からなかったので服のチョイスは乃木にすべて任せた。俺が外でスマートフォンをいじりながら待っていると、およそ1時間後にふたりは店から出てきた。椎名は白一色からパステルカラーに変身した。服装に色が付くとここまで雰囲気が変わるとは思っていなかった。

「はい、乃愛ちゃんにも」

乃木は俺に黄緑のマフラーを渡した。

「ありがとな」

「乃愛ちゃんは色が少ないんだよ。いつも黒か灰色だし」

乃木は俺の服装を気にしていたようだ。これも乃木の優しさなのだろう。俺はすぐにそのマフラーを首に巻いた。やはり、首と名の付く場所を暖めると体が暖まるのか体感温度がいくらか上がった気がする。

「じゃあ、適当にフラフラするか」

「そうだね」

「どこに行きますか?」

「俺は寄りたい所があったら寄るかなぁ」

「行き当たりばったりですね」

椎名は会話のやり取りを楽しんでいるようだった。おそらく椎名にとって初めての何気ない会話なのだろう。

「お、3人とも探したぞ」

「山猫、片付け終わったのか?」

「終わった。重かったよ。予想以上に」

山猫は肩を揉んでいた。その動きはかなり重かったぞという表現を体で表しているようだった。山猫が加わり4人になった俺たちは映画館に行く事にした。

「3人は何の映画を観たい?映画代は俺が出す」

「山猫太っ腹だね。私は恋愛映画かな」

「俺は一昨日公開したアメコミ映画だな」

「私は皆さんが観たいものを観たいです」

「俺も椎名の意見だな。面倒だしジャンケンで決めたらどうだ?」

「そうだな。乃木、ジャーンケーン」

ジャンケンの結果、俺がジャンケンに勝ちアメコミ映画になった。

「久遠さん、この映画面白かったですね」

「だろ?これは続編なんだが前作を観てなくても十二分に面白い。それがアメコミ映画の良いところだ」

「ですね」

椎名は映画のグッズまで買っていた。よほど気に入ったのだろう。乃木はこの手の映画にはまったく興味が無かったのか映画が始まってすぐに寝て、映画が終わるまで眠り続けていた。

「乃愛ちゃんたちは子供なんだよ。話がシンプル過ぎるもん」

「男はいつまでも少年の心は忘れないものだ」

「私は乃愛ちゃんに言ってるの。山猫には言ってないよ」

乃木は少しツンツンとしていた。

「じゃあ、今度は乃木の観たかった映画を観に行こう」

「前言撤回。乃愛ちゃんは紳士だね」

乃木は俺に抱き付きキスをした。

「おふたりは付き合ってるんですね」

「まぁ、そうだな」

そのあとはやけにデカイパフェを食べたり、色々な所をフラフラとしているといつの間にか夕方になっていた。

「椎名、俺たちの家に住むか?乃木は良いって言ってるんだが」

「いえ、私は山猫さんの家に住みます」

「大丈夫?」

「乃木さん。大丈夫です。だって山猫さん、とっても面白いんですよ」

椎名はとても嬉しそうにしていた。

「俺は別に構わないんだ。それに女の子が住みたいって言っている。断る理由も無いしな」

「椎名が良いなら良いんじゃないかな」

ふたりは手を繋ぎながら行ってしまった。遠くから見ると本当に恋人どうしのようだった。

「乃愛ちゃん、私たちはどうする?」

「そうだな、俺たちも手を繋ぐか」

俺と乃木は互いに手を繋ぎ、家に帰った。

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