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偏在の理想ボーイ幻覚の普通ガール  作者: キャボション
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訓練

「動きが遅い!」

「うわ!」

迷彩服を着た俺は今、男に投げられている。何故俺が投げられているかという話は3日前に遡る。俺は乃木と一緒に指令部へ山口司令に呼ばれた。

「特殊作戦群と訓練を行ってもらう」

この言葉が今、俺が投げられている原因だ。空を飛ぶ俺の体は道場の畳に叩き付けられた。畳に叩き付けられたのは男だったときの高校の授業以来だった。

「久遠は動きは良いが重心がやや不安定だ。そこさえ治ればすぐに格闘のスペシャリストになるだろう」

「そうですか。田村一尉」

「そうだ。しかし山根三佐。まさかあなたがこんなかくし球を持っていたとは」

「今は自衛官じゃない。ただの山根幸太郎だ」

山猫は火を付けていない煙草をクルクルと回していた。

「山猫って自衛官だったの?」

俺はなんとなく聞いてみた。

「何年か前まで特戦群いた。まぁ、昔の話だけどな」

山猫は煙草に火を付けた。すると田村は山猫の煙草を取り上げた。

「山根さん、屋内禁煙です。喫煙所で吸って下さい」

「分かったよ」

山猫は煙草を吸いに外へ行った。乃木はというと自衛隊最強の部隊である特戦群を次々と倒していた。

「久遠の他のダメな部分が分かった」

「何ですか?」

「自分自身の長所が分かっていない」

田村の言うとおり俺は自分の長所がいまいち分かっていなかった。この体になってから数ヶ月。乃木との仲が深まったのは良いがこの体の事はいまいち分かっていない。

「では、田村一尉は俺の癖とかは分かりますか?」

「攻撃を受けるとき一瞬だけ目を閉じている。これは危険な癖だ。今すぐ治したほうが良い」

「参考にしておきます」

その後も他の隊員と格闘訓練をしていくうちにぼんやりと自分自身の長所と短所が分かっていった。長所は相手の弱点である部分が感覚的に分かる事。短所は警戒心が足りない事だ。そういえば男だったときもよく上司に「注意力が散漫だ」と怒られていた。

格闘訓練以外にも射撃や潜入など様々な訓練があった。

「乃木、自衛隊との訓練はどのくらいやるんだ?」

「去年は確か年間10回くらいかなぁ。だんだん慣れてくるから大丈夫だよ」

「普通の人だったら慣れないだろ」

「少なくとも私たちは普通じゃないよ。それは乃愛ちゃんも知ってるはずでしょ?」

乃木は不思議そうに俺に言った。

「まぁ、そうだな」

「乃愛ちゃんって迷彩服似合うね」

「誉め言葉だよな」

「当たり前じゃん」

俺と乃木の迷彩服には三等陸曹の階級章が付けられていた。この階級は海外の軍隊でいう伍長に相当する階級だ。

訓練は5日間続いた。だが体力が尽きる事が無かった。この人間離れした体力は一体何なのだろうか。

「疲れたね。乃愛ちゃん」

「学校も休んじまったしな」

「大丈夫だよ。多分」

「多分っておい」

「でも射撃の腕は上がってたよね」

「まぁな。買い物して帰ろうか」

「うん」

いつも帰り道が何故か数年ぶりな感じがした。



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