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偏在の理想ボーイ幻覚の普通ガール  作者: キャボション
24/65

数十分後

俺と乃木は以前のように秘密の地下鉄を使い指令部にまでやって来た。以前とは特に変わっていなかったがやけに騒がしい。奥からは銃声が聞こえてきた。

「なんなんだ一体」

「なんだろうね」

乃木も原因がわからないようだ。するとひとりの男が俺に「なんだかあの副大臣、拳銃を持ってたらしくて」と言ってきた。

「撃ったの?」

乃木は驚きもしていなかった。

「まぁ、そうなるね」

男もあまり驚いていなかった。

「そうだ、取り調べ観に行こうよ」

「良いのか?」

「だって私たちが捕まえてきたんだよ?そのくらい大丈夫だよ」

乃木は走り出した。

「おい、待てよ」

俺も走り出した。

取調室は警察のとあまり変わらずシンプルなものだった。だが、やけに監視カメラの数が多く、10個の監視カメラが副大臣を監視していた。俺と乃木はマジックミラー越しに取り調べの様子を観察した。副大臣の両腕には手錠がついている。

「なぜ、ヤクザに武器を売ろうとしたんですか?」

「・・・」

副大臣は一言も発しない。

「もう一度聞きますよ?なぜ、ヤクザに武器を売ろうとしたんですか?」

「・・・・・・」

「はぁ、」

取り調べをしていた男は気だるげに手に持っていたスイッチを押した。すると副大臣は震え出した。

「あれって電流でも流してるのか?」

「乃愛ちゃん良くわかったね」

「そのくらいすぐ分かる。でも、コンセントも何も付いてないのになんで電流を流せるんだ?」

「乃愛ちゃん、手錠を見てみなよ」

「手錠?」

副大臣に付けられている手錠を良く見てみるとやや太めの線がついていた。

「あれか」

「あれを通って電流が流れるんだよ」

「なるほど」

俺と乃木が観察を続けていると眼鏡をかけた女性が「勝手に入ってこないでください」と感情に乗せず言ってきた。

「私たちが捕まえてきたんだよ」

「そんなもの関係ありません。これは尋問班の仕事です」

「むぅ、行こっ!乃愛ちゃん」

「お、おう」

俺は乃木に腕を引かれ休憩室まで歩いた。

「まったく、あの人はいつもああなんだよ」

「少し石頭な感じではあったな」

「でしょ?規則と結婚してるんだよ。あの人は」

乃木はコーヒーを飲みながら愚痴を垂れていた。

「乃愛ちゃん、これ不味いから飲んでみて」

乃木はコーヒーカップを俺に近付けた。

「なんで不味いものをわざわざ飲ませるんだよ」

「それもそうだね」

乃木はコーヒーを捨てた。

「あの取り調べはどのくらい続くんだろうな」

「あの調子だと二時間くらいかな」

「なんで分かるんだ?」

「いつも色んな取り調べを覗き見してたから」

乃木は指をくねくねさせて言った。

「その指の動きのせいで変態に見えるぞ」

「そう?」

乃木は指の動きを止めた。

「ねぇ、乃愛ちゃん」

「どうした?」

「私たちって恋人だよね」

「友達だな」

乃木は不満そうだった。この質問は定期的にされている気がする。

「今日、乃愛ちゃんの家に泊まっても良い?」

「別に良いぞ」

俺と乃木はマンションに向かった。

「言っとくが、変なことするんじゃないぞ」

「わかってるよぉ。もう」

乃木は顔を紅くしていた。

その後は一緒にテレビを見たりした。その間乃木はあまり話さず妙によそよそしかった。「どうしたんだ?」と聞いても「なんでもない」と言うだけだった。番組を見終わると眠気が襲いかかってきたので俺はベッドへと歩いていった。

「もう一度言うが、変なことするんじゃないぞ。おやすみ」

「・・・おやすみ」

一時間ほど経ってからだろうか。何故か目が覚めてしまった。体がやけに冷えて、腹の当たりだけ熱い。その時俺は自分が全裸になっていることに気が付いた。そして、俺の腹の上には全裸の乃木が乗っていた。

「おい!乃木!」

「あ!乃愛ちゃん起きた?」

乃木は発情期の動物のようになっていた。

「起きた?じゃねぇ!これはどういうことだ!」

「私の気持ちだよ」

乃木はそう言うと俺の唇にキスをしてきた。







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