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偏在の理想ボーイ幻覚の普通ガール  作者: キャボション
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ハロウィンナイト

翌日 夜

俺と乃木はテレビで毎年出てくるスクランブル交差点にやって来た。もちろん俺と乃木は仮装をしている。俺がモノトーンのゴスロリ、乃木がアリスだ。しかしこの交差点は毎日人が多いというのにハロウィンになると余計に多くなる。この為だけに地方から来た人たちもいるのだろう。どの方向を見ても仮装をした人々で溢れ返っていた。交差点の中心では警察官が車両の上に立ち交通整理をしている。その姿は海を割ったモーゼに見えないこともなかった。この交差点がハロウィンのメッカのようになったのはもう10年以上前からで俺が学生だった時にはすでに人々で溢れ返っていたはずだ。

「やっぱりすごいね」

乃木は台風の日の海を見ているようだ。

「ギチギチだ。これじゃ仮装をするのが目的じゃなくて人の海に飛び込むのが目的になってる」

「本当にね。じゃあ、私たちも海に飛び込もうよ」

「そうするか」

俺と乃木は人の海に飛び込んだ。

予想通り、俺たちは流れに逆らうことなく仮装集団の行進についていくことになった。恐らくここで足を止めたら人の流れによって転んで散々踏まれてしまうだろう。

しばらく流されていると段々と流れが緩くなってきた。多くの人々が自撮りをし始めたのだ。何人かが何かある行動をすると全員がその行動をする。それは日本人の習慣であり、悪習でもある。

「ね!せっかくだから写真撮ろうよ」

乃木はそう言いながらスマートフォンを自撮り棒に付けた。

「そうだな」

「はい!じゃあ、私に寄って!」

乃木は俺に抱きついた。

「はい!チーズ!」

カシャッという軽い音がなりフラッシュが光った。

「ほら!見て!」

乃木は俺に撮った写真をグイグイと見せてきた。

「近い」

「あ、ごめん」

乃木は画面を少し離した。ピントがほんの少しずれていたが俺と乃木がしっかりと入っており、なかなか思い出に残りそうだった。

「良いじゃん」

「嬉しいな」

乃木はニヤニヤしていた。

その後俺と乃木は様々な仮装を見つけた。ゾンビ、ゲームキャラ、ナース、天使、悪魔・・・。とにかく様々な種類の仮装をしている人がいた。その上、警察官に注意を受けている警官の仮装をした男もいた。

「なんだか滑稽だね」

乃木は俺の耳元でそう言った。

「確かにな」

なんやかんやで結局俺はハロウィンを楽しんだ。意外と楽しかった。これが俺の感想だ。

「来年も行く?」

「そうするかな」

「そうこなくっちゃ」

乃木は嬉しそうだった。

「今日も家に来なよ」

「ここからじゃ乃木の家の方が近いしな。そうさせてもらう」

「本当に?」

乃木は本当に嬉しそうだ。

俺と乃木は駅に向かう。空にはわざとらしく光っている月が浮かんでいた。




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