特別なスカウト
エレベーターが止まった。階数が表示される所にはB5と表示されていた。エレベーターのドアが開くとスーツの男が3人いた。腰には拳銃がある。
「そこで止まれ」
男のひとりが俺にそう言って。ボディチェックをした。
俺が笑いながら「別に何も持ってないよ」と言うと男は「規則だからだ」と無機質に言った。
「問題ない、入れ。司令官が待っている」
「はいはーい」
乃木は適当な返事をして社長室のようなドアを開けた。俺は乃木の後を付いていった。部屋には大きな机があり。社長椅子に男が座っていた。
「やぁ、君が久遠くんだね。待っていたよ」
その男は以前俺によくわからない警告をした男だった。
「前にどこかで見ましたね」
「映画館の近くだったかな?」
男の穏やかな様子だった。
「司令官、乃愛ちゃんに会ったことあるんですか?」
「あるよ。君が久遠くんとデートをした日にだ」
「デートなんて・・・」
乃木の顔は赤くなり体をクネクネとさせていた。
「まぁ、本題に移ろう。君に治安維持部隊に入って貰いたい」
「どうしてですか?」
「君はこの組織のエージェントになるべくその少女の体に脳を入れられたようなものだからだ」
「つまり医者とこの組織はグルだったってことですか?」
「それは違う。あの医者はどんな形でありその少女に生きていて貰いたいからだ」
「なるほど。それでなぜ俺がエージェントになるべき人物なんですか?」
「君は今まで必要以上に恐怖や緊張を感じたことはあるかい?」
男は俺の目を見ながらそう質問してきた。
「そんなに緊張をしたことはないですけどそれがどうしたんです?」
「そう、それだよ。人は意識的に恐怖や緊張を押さえることは出来るが無意識に出来る人はなかなかいない。それは才能なんだよ」
男は感心するようだった。
「この少女はそれがなかったんですか?」
「その通り。その少女の精神は不安定だった。一度は交際相手が出来たがその彼女が殺されてしまったとき精神状態は以前より不安定になった。交際相手を殺した犯人の目的は恐らくそれだ。犯人は未だに分からない」
「なるほど」
俺が少し考えていると乃木が俺の背中に抱きつき「入ろうよう」と言ってきた。
「乃木、イチャつくなら後にしてくれ。私は久遠くんと大切な話をしているんだ」
「はーい」
乃木は少しふて腐れるようにソファに座った。
「それでだ久遠くん。この組織に入ればもしかしたらその少女の交際相手を殺した犯人を知ることが出来るかもしれない。この組織に入ってくれないか」
「ここまでどう行くか知ってしまったんです。入るしかないですよ」
俺はこの組織に入る旨を伝えた。
「良い返事を貰えて良かったよ。私はこの組織の司令官。山口だ。これからよろしく久遠」
「山口司令官。こちらこそよろしくお願いします」
俺は司令官に頭を下げた。
「それで、当分の君の仕事はここでの仕事を覚えることと様々な訓練だ。詳しいことは乃木に聞いてくれ」
「私が担当なんですか!」
乃木は嬉しそうだった。
「そうだ。2ヶ月で色々と叩き込んでくれ」
「了解しました!」
「話は以上だ」
山口は部屋から出るように促した。
「失礼しましたー」
乃木は山口に手を振りながら部屋を出た。
「失礼しました」
俺は乃木に続いて部屋を出た。
部屋を出るとボディチェックをした3人の男が俺に「これからよろしく。久遠」と言って俺の手を握った。俺も握手した。
「行くよー、乃愛ちゃーん」
「分かった」
俺と乃木は再びエレベーターに乗った。




