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偏在の理想ボーイ幻覚の普通ガール  作者: キャボション
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ゴミ袋

俺は締まっている校門を乗り越えて校舎の屋上まで着いた。そこには乃木がいた。

「あ、乃愛ちゃん来たんだね」

笑顔でそう言う乃木の右手には小型の拳銃が握られており足元には大きな黒い袋がおいてあった。黒い袋は時折モゾモゾと動き、動く度に乃木はその袋を軽く蹴っていた。

「その袋の中身は誰なんだ?」

「乃愛ちゃんがさっきまで話していた探偵だよ。後で始末する」

「そいつは無関係だ。放してやれ」

俺はやや強めの口調でそう言ったが乃木は「なんで?」と返した。

「なんで放さないんだ?」

「この男が捕獲対象だからだよ。こいつ実は日本人じゃないんだよ?こいつは黒猫部隊っていう組織のスパイなんだよ。将軍が日本人ってのも嘘。そもそも将軍なんて呼ばれている人は今の日本にはいない。それに私は白石を殺してない。もしも私が殺してたら今頃液体として地面に染み込んでるよ。死体は残さない」

乃木は自身の誇りを守るかのように言った。

「じゃあ楠田はなんだったんだ?それに監禁紛いのときに私の太ももを舐めながら言ったあのアバズレってのは」

「楠田は私の協力者。まぁボディガードみたいなものよ。それに楠田も白石を殺していない。それにアバズレは白石じゃない。司令官よ」

「司令官は女なのか?それになんで私が白石を殺した奴を探している事を知っている」

乃木は少しふて腐れた顔をしていた。

「質問ばっかりだなぁ。そうだよ、司令官は女。70を過ぎていた。『仕事に恋愛を入れる女は一人前になれない』っていつも言ってたの。だから本当にせいせいしたわ!」

乃木は本当に不満そうな顔をしていた。

「最後の質問には答えてくれないのか?」

「あんなのうちの情報網を使えば簡単だよ」

乃木は得意気にそう言った。その時探偵だった奴の入った黒い袋が再びモゾモゾと動いた。すると乃木は黒い袋に拳銃を押し付け「もう一回動くと撃つよ。それに拳銃にはサプレッサーがついてるから誰も気付かない」と言った。黒い袋は動かなくなった。

「それで、2つの大事なお話に入るよ」

乃木はまるで遠足の日程を言うようだった。

「乃愛ちゃん。私はねあなたの事が一年生の時からずっと好きだったの。でももう一人好きな人がいた。その人は30を越えてる男の人だった。本当だったらどちらかを選ばなきゃいけないのに神様は優しいね」

乃木の目は穏やかだった。

30を越えている男?その時俺の頭の中を違和感が走り回った。なぜなら今の俺はその二人が合わさった人物に近いからである。

「男の方の名字は何て言うんだ?」

「久遠っていうの。それにあなたのことでしょ?」

「お前、どこまで知ってるんだ!マリア・ハルトマン!」

「マリア・ハルトマンなんて名前じゃないよ。私の本名は乃木真理亜で合ってるよ。それもこのスパイの嘘だね。それと脳が乃愛ちゃんじゃないのも知ってる。それだとしても私はあなたたちの事が好きなの」

乃木の目は本気だった。つまりは乃木が話している事が本当である確率が高い。

俺は乃木を信じる事にした。

「分かったよ。まさか初めて告白されるのが女の体になった時だとはな。あと太ももを舐められた時は本当に驚いた。だけど告白は考えさせて貰ってもいいか?」

「乃愛ちゃん!」

乃木は俺の言ったことを聞いていないのか俺に抱きついてきた。ひとしきり抱きつかれた後に俺が「そういえばこいつどうするの?」と聞くと乃木は「本部に運ぶかなぁ」と言った。

「ところで乃愛ちゃん」

「どうしたんだ?」

「英語話せる?」

「自慢ではないがペラペラだ。あとロシア語もある程度わかる」

「良かった。じゃあこの袋を一階まで運ぼ」

「了解」

俺と乃木は黒い袋をふたりで持ち上げた。

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