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偏在の理想ボーイ幻覚の普通ガール  作者: キャボション
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甘いお菓子

放課後俺は約束通り乃木とハロウィンの衣装を買いにコスプレアイテムの店に行った。初めてコスプレの店に入ったが予想以上の品揃えだ。アニメのキャラクターの衣装から猫耳のカチューシャまである。これは、かなり悩む。

「乃愛ちゃん。どっちが似合うかなぁ」

乃木は2種類の衣装を俺に見せた。ひとつは警察官。もうひとつはアリスの衣装だ。俺は少し乃木の反応を確かめるために「真理亜の顔はハーフっぽいからアリスのほうが似合うんじゃないのか?」と言った。しかし乃木は特に反応を示さず「そう?じゃあアリスにするね」と答えた。

乃木の衣装は決まったから良しとして問題は俺が何の衣装を着るかだ。いくら見た目が女子高生とはいえ中身は30を過ぎた中年だ。こういった衣装には抵抗がある。だがここで仮装を拒否したら乃木の機嫌を損ねてしまうかもしれない。そうなったらこの体は二度目の死を味わってしまう。しばらく悩んでいると乃木がひとつの衣装を持ってきた。

「乃愛ちゃんはこれが良いんじゃない?」

その衣装はモノトーンカラーのゴスロリのドレスだった。俺にとってゴスロリは着ることにかなりの抵抗を感じるものだった。

「ゴスロリかぁ」

俺がそう言うと乃木は不思議そうな顔をしていた。

「なんで?乃愛ちゃんって可愛い顔でスタイルが良いんだから絶対に似合うよ?」

「そうか?」

「とりあえず試着してみなよ」

乃木の目からはかなりの期待を感じた。俺は渋々試着することにした。

数分後

「似合うか?」

「すっごく似合うよ!可愛い!もしも私が男だったら結婚したいよ!」

乃木はかなり興奮していた。乃木も喜んでいるようだしこのコスプレをしよう。俺は衣装を脱ぐために再び試着室に入った。

脱いでから衣装の値札を確認してみるとそこには七万円と表示されており俺は驚いてしまった。こんなに高いのか。俺が驚いていると乃木は俺の頭を撫でながら「大丈夫。私が買うから」と言った。

「良いのか?」

「良いよ。でもひとつだけお願いを聞いて貰おうかなぁ」

「なんだ?」

「それはハロウィンまでお楽しみ」

乃木はいたずらっぽい笑顔だった。

「なんだか悪いな。買ってもらっちゃって」

「良いんだよ友達なんだから。それに」

「それに?」

「あんなこともあったんだから」

乃木は少し暗い表情になっていた。あんなこととは楠田に監禁紛いのことをされたことだろう。

「まぁそれを無かったことにするくらいのハロウィンにしようぜ」

俺は乃木にそう言った。

「乃愛ちゃんは優しいね。私はそんな乃愛ちゃんが好きだよ」

「友達として?」

俺がそう言うと乃木は少し顔を赤らめながら「そっ!そうに決まってるじゃん!ほら!衣装!ハロウィンの時絶対に着てきてよね!」

乃木は俺に衣装の入った紙袋を渡した。

「また明日ね」

乃木は手を降りながら言った。

「明日な」

俺はマンションに戻った。

マンションに戻った俺はひとまずテレビを点けた。テレビでは終了間際のニュース番組がやっており、あと少しでバラエティ番組に移ろうとしていた。その時テレビ画面のしたに速報と表示された。どうやら楠田が見つかったらしい。テレビには七夕女子高生殺人事件犯人楠田徳仁の遺体を発見と報道されていた。

「楠田容疑者の遺体は死後最低でも2日は経過しており死因は頸動脈を切られたことによる失血性ショックです」

速報のあと何事もなかったようにバラエティ番組に切り替わった。楠田が死んだ。つまりはこの少女に関する情報を一部知っているであろうものが消えてしまったのである。速報もまるで俺がテレビを点けるのを心待ちにしているようだった。俺が違和感を感じていると携帯が鳴った。乃木からの電話だった。

「もしもし?どうしたんだ真理亜」

「乃愛ちゃん、今日の夜会えないかなぁ」

「どうしても今日じゃないとダメなのか?」

「うん」

「分かった。今どこにいる?」

「学校の屋上」

「すぐに行く」

俺は靴を履き、学校へ向かった。

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