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XINXIA-シンシア-  作者: 真白シグマ
6/7

#6 Re-union

遅めの投稿すみません。これからも週一目指して頑張っていきます

黒い爪撃(そうげき)をコロナは(さば)きつつ、尚も反撃を行わない。ナッツの攻撃が止んだ途端、コロナは大きく距離を取り、叫んだ。


「ナッツ、何故お前が私たちを攻撃するんだ!?お前は私たちの理解者だろ!」

「確かに、セレーネばっかりいい思いして罪も無いシンシアが駆除される世の中なんておかしい。けどね、そのためにヒトに危害を加えるのはお(かど)(ちが)いだ」

「違う!私たちは……!」


言葉を放ち終わるか否かという瞬間には、ナッツは既にコロナの背後に立っていた。鉤爪(かぎつめ)がその喉元に入ろうかというその時、一振りの太刀がそれを防ぐ。その刀の持ち主はワインレッドのスーツを着た青年、フレアだった。


「……久しぶり、フレア」

「クロニクス……手はかけたく無かったが、致し方ない!」



コブラ型のシンシアを撹乱(かくらん)させるため、アイクスが飛び回り、パンドラが箱から使えそうなものを手当たり次第に使っている。


「この……ちょこまかと鬱陶(うっとう)しい奴らめ!!」

「鬼さんこちらってなぁ!悔しけりゃ捕まえてみな!!」

「ほれ、ハッピーバースデー!!」


シンシアの鼻先でパンドラがクラッカーを鳴らし、小さく仰け反る。その隙を狙い、パラディンが大きく跳びかかる。そして、その大剣を尻尾に叩きつける。


「パラディン、今よ!!」

「はぁっ!!」


シンシアの最大の武器であった尻尾が切断され、バランスを崩し大きく倒れた。


「しまっ……」

「まだまだァ!!」


アイクスが追撃と言わんばかりに切断した尻尾を鞭のように何遍も叩きつけた。 コブラ型のシンシアは、既に虫の息といった様子で、回復しても体力が限界に近い。そして、既に動く力すらないシンシアの顔前にアイクスが降り立つ。


「くそっ……蝿どもが……!!」

「どうよ、その蝿にやられる気分は?」

「最悪だ」


アイクスがシンシアの言葉を聞くと、その拳を頭に打ち付けた。その頭部は完全に潰れており、再起は完全に不可能のようだ。生き絶えたシンシアが黒い球体に変わり、アイクスの胃の中に吸い込まれていった。


「……昨日のカエルもそうだったが、やっぱ養殖モノは不味いな。ランチは天然モノに限るぜ」

「やっぱ何者かの手によって改造されてんのか、朝月が言うには謎の団体ってとこか」


今朝聞いた噂は、どうやら事実のようだ。凶悪化するシンシアに、何かが接触している……。


「おい!あそこ見てみろ!」

「あ?一体何が……って」


朝月が俺の目線を病院に向かせると、そこには数本の火柱と黒い鉤爪を振り回すナッツの姿があった。


「あいつ……いつの間に、それに何だあの炎は?」

「ちょっと待って!なんでナッツちゃんが戦ってるの!?」

「アイツはセレーネだ。たぶん、宿主はとうに死んでる」

「それって……」


困惑するルナに、俺が昨日から疑問に思っていた事を伝えようとしたが、俺の言葉は遮られた。


「そんな事よりお二人さん、あの子の援護に行った方がいいんじゃない?」


朝月が俺たちの会話に割って入り、ナッツの下に行くように促す。それを受けて、俺はアイクスの背に乗る。


「俺は先に行く!後から合流してくれ!!」

「わかった!」

「……さっきの話、後で聞かせなさいよ!」


二人に確認を取り、俺とアイクスは病院の屋上へと飛び立った。

ある程度まで来ると、ナッツが赤いスーツの男と戦っているのが見えた。おそらく火柱はそいつが出したんだろう。


「ナッツ、そいつは!?」

「……敵だ」

「……ナッツ!!」


火柱の向こうから再びスーツの男が飛び出し、彼女を斬ろうと太刀を振りかざす。俺は反射的にアイクスに命じる。


「アイクス!」

「おうよ!」


アイクスはカウンターを男の顔面にぶち当て、数メートルは吹き飛ばした。


「……コロナァ!何故攻撃しない!!」


そう叫んだ男の目線の先には、先ほど学校まで案内したフードの少女が座り込んでいた。


「……私にナッツを攻撃する事なんて、できない!」

「昔とは状況も立場も違う!もう、そいつは我々の友人では無くなった!!あの日からそうだったろ!」

「……アホくせえ」


俺はアイクスの現出を止め、倒れている男とナッツの間に立った。二人は何をしてるんだとでも言いたそうな目でこっちを見ている。


「お前ら、一旦手を引けよ」

「なっ……!?」

「トカゲ使い、分かってんの?こいつらはシンシアに能力を分けて、ヒトまで殺した奴らだよ?」

「だとしてもだ」


俺はそこにいる三人の顔を見て、思った事をそのまま伝える。


「辛そうな顔して殴り合うお前らは見てらんねえし、そんな顔してる奴を殴る趣味もねえよ」

「……どういう意味?」

「そのまんまの意味だよ。お前ら全員、他人を殺す顔じゃねえつってんだよ」


三人は笑っても、怒っても、泣いてもいなくて、ただただ辛そうな表情を浮かべていた。とても戦える心境ではないのは見てとれる。


「説明してくれ。お前らに何があった?」

「それは……」


ナッツが口を開こうとした瞬間、彼女が真横に吹っ飛ばされる。彼女は受け身をなんとか取り、攻撃した張本人の姿を見た。


「……お前は!」

「懐かしい面々だな、ナッツ、フレア、コロナ……そして、新月夜斗」

「……アイクス」

「ああ」


ナッツを攻撃したのは、黒い肢体に青い角が特徴的な竜人で、八年前からの俺の復讐の目的であるシンシア。


「この時のために俺は戦い続けてきた。てめえは今、ここで……殺す!!」


アイクスを現出させ、俺たちは二人同時に殴った。が、両手でガードをされる。__まるで歯が立たない。


「もう終わりか?」

「この……ッ!!」

「やめろ!お前たちではリオンには敵わない!」


スーツの男が俺たちを黒いシンシアから突き放し、俺たちの前に立った。


「リオン……今更何をしに来た!」

「今更?俺は結構長い間お前らの活動に関与してたんだがなぁ」

「……何だと?」

「疑問に思わなかったのか?本来ヒトを襲うことはあれど食うことは無いシンシアが、ヒトを食ったのを!」

「……リオン、アンタがやったのか!罪も無い人間を!!」


その時まで座り込んでいたフードの少女__コロナが立ち上がり、叫び、その両腕を巨大な鉈に変える。


「俺に立ち向かうか?"レジスタンス"の中で、最強の俺に?」

「お前が最強だったとか、そんな事は関係ない」


「クックック……シンシアが大量に集まってんな。こりゃノルマ通り越してボーナス入りだな」


コロナとリオンがぶつかろうというその時、フェンスの上に座る男が割り込む。その男に向けて、リオンが口を開く。


「そのノルマとボーナスに俺は入ってねえんだろうなぁ?」

「当然だ。契約は絶対、これは守るさ」

「おい……契約って何だよ!シンシアがノルマって……お前、そこまで堕ちたのかよ!?」


コロナが激昂するも、当の本人は意に介せずといった模様だ。挙句の果てにくつくつと笑い始める。


「シンシアの世か……素晴らしいよ、全ての種族が共存できる世界、それが俺たちの目標だったな」

「なら、どうしてあの時ナッツを、私たちを裏切った!!なんで、なんで今、シンシアの敵みたいな真似を!」

「自分たちを棚に上げるか。お前らこそ、シンシアに能力を分け与えてそこの人間に殺させてるじゃあないか」


コロナの叫びに対し、リオンは冷たく、冷酷に返す。怯む彼女に助け舟を出したのはフレアだった。


「俺たちは彼らに能力を与え、セレーネの駆除を行なったまで。これは弁明でも何でもない、事実だ」

「私情に駆られ、自らの不遇に反旗を翻す……シンシアにお似合いの薄汚い末路だ」

「もういい」


リオンの言葉を遮ったのは、起き上がったナッツだった。その目は怒りの炎で燃え上がっていた。


「そこの人間も、リオンも、私"たち"がぶっ倒さなきゃいけないやつってのはよく分かった」


彼女は右手を再び黒い鉤爪状に変化させ、戦闘の構えを取る。俺と、残りの二人も続いた。そして、ナッツが大きく叫ぶ。


「博士の……シンシア=クロニクスの仇だ!!」

「ナッツちゃん……これは、どういうこと?」

「!?」


シンシア=クロニクスの名前が出されたタイミングで朝月とルナが到着してしまい、ナッツの意識に隙が生まれる。当然敵がそれを見逃すはずも無く、フェンスに座っていた男が手元の拳銃で彼女を撃ち抜く。寸前であった。


「ノンノン、いただけないねぇ。今日はレディが不憫だと思わないか?翔ちゃんよ」

「同感だ。それとナイスフットワークだ、後で写真集やるよ」


パンドラが間一髪、銃弾を箱の中に入れ、ナッツへのダメージはゼロになる。


「……助かった。礼を言う」

「礼を言うのはまだだぜ御嬢さん。まずはこいつらを倒してからだ」

「そうだな。……ルナ!」

「分かってる。パラディン、来なさい!」


急にナッツに呼ばれたルナだが、その意図を汲み取りパラディンを現出させる。これだけいれば、戦力としては十分だ。


「フレア、だっけか?もう大丈夫だ。頭、しっかり冷やしたからよ」


俺はゆっくり立ち上がり、眼前にいる長年追い求めて来た敵と、その仲間であろう男を見据える。


「ナッツ、フレア、コロナ、朝月、ルナ!!やるぞ!」

「足、引っ張るんじゃないわよ。特にトカゲコンビ!」

「クロニクス、またお前と戦えるとはな」

「リオン、お前だけは絶対にこの手で倒す!」

「女の子を泣かすやつは、俺とパンドラが許さねえってな」

「たまにはいい事言うじゃない。全く、終わったら説明頼むわよ!」


俺たちは各々の覚悟を決めて、決戦に挑む。


「行くぜ、アイクス」

「ああ!」

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