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渚のビーチフラッグ野球拳

「勝てればウフフ! 渚のビーチフラ……ビーチフッグ野球拳~」


 ハイジさんが一瞬強風で怯んだ。


「ようこそ渚へ!」


「ハイ……」


 凡リアクション。

 今回は「渚で楽しくやろう」とマイクロバスに乗せられて連れてこられたのはそこそこに名のあるビーチだったがなにせ真冬である。連れてこられたのはマスカラスマン、小林氏、桜井、円谷栄治と俺の5人。海辺なので風が非常に強く風が吹くたびマジで寒い。


「今日は皆さんにも楽しんでもらいたい、ということで女の子とキャッキャウフフですよねぇ明星さん」


「そうねぇ。きっと胸がドキドキよ!」


 そして着いたら陣内&鬼畜お姉さんの二人と、審判団の威嚇戦隊能面ジャーだ。これはもう罰ゲームだ。


「それではそぉい!」


 ハイジさんがホワイトボードにかぶった布をサァっと引く。するとそこには8人の笑顔がまぶしいボンキュッボンな女の子たちの水着写真が!


「ルールは簡単、ビーチフラッグで野球拳権を獲得したらレッツ野球拳! さぁお兄さん、どの女の子にしますか?」


「バックにヤクザついてない子っすよね。あと8番の子は、あの子だけは水着写真ではないですけど彼女はバックにヤクザはついていないことは確かです」


 8番の子、あれ桜井の彼女、通称サキちゃんだ……。


「なんで載せちゃうっていうかこういう悪ふざけに乗っちゃうのさ」


 桜井くんややご立腹。


「ちなみに女の子たちは皆バックにヤクザはついてません。全部芸能目指してるコースのうちの学生だから」


「18歳以降になってまだこんな下積みしてるのかい? まだまだ先は長いね」


 小林氏もややご立腹。


「だがぁ僕ぁ1番の子だ」


 小林氏、茶髪スレンダーでSッ気がありそうなタイプの女の子を指名!


「マドカちゃん(仮)氏名入りましたぁ!」


 そういう店みたいに見せそうな小芝居やめろ! 18歳にもなってまだこんなところにしか芽が出てない芸能コースが本当にその先がそういうアレしかなさそうに思えてきて可哀想だからやめろ!


「1番の子と野球拳って認識でいいんですよね陣内さん?」


「ああ」


「よし。僕ぁ1番だ!」


 小林氏→マドカちゃん(仮)


「じゃあ王子は?」


 王子=円谷栄治


「王子はねぇ……」


「否定をしろ。否定せずとも逡巡のポーズくらいとれゴミカス」


 円谷くん、腕を組みつつ顎に手を当てる。


「ボクは3番の子が好みなんだけど、陣内くん。多分野球拳はあのビニールハウスでやるんだよね?」


 円谷くんがハイジさんたちの背後にある急造ビニールハウスに目をやる。


「そうだな」


「なるほど、それなら脱がされる女の子たちも寒くはないね。本当によかった。あと気になるんだけど、なんとなくボクの奥さんがどっかでこれを見てる気がするんだよ」


「ああ、みちるちゃんな。あそこ」


 ハイジさんが渚の果てを指さした。一台の軽自動車が止まっている。


「あれはみちるちゃんのだね。なんで呼んじゃったのかな」


「予備で」


「野球拳のかい?」


「お前の嫁人気あるからな。それに人妻フェチもいるだろうし」


「OK、じゃあボクは3番の女の子にするよ。一番みちるちゃんに似てるからね。さぁ、恥じない活躍をするぞ! そして今夜は家族会議だ。いや、家族会議は明日かな」


「はいじゃあ円谷くんは3番のシャイなリオちゃん(仮)ご指名!」


 クズだな。


「次、桜井」


「8番のサキちゃん」


「うん、お前はそれでいいよ。あ、そうだ桜井。後出しは負けになれるからな」


「ありがとう、それが聞けて良かったです」


 桜井くん、彼女を守れる。そして芸能コースの子たちよりも、他校に行ってる普通の女子大生サキちゃんが一番かわいいという皮肉。桜井死ね。


「次マスカラス」


「5番だな」


「5番のハーフメガネっ子のカナちゃん(仮)でいいな?」


「待て。ハーフなのか?」


「ハーフだ。ハーフでメガネっ子を選ぶとは、お前は普段、身近な女子をそういう目で見てるのか……」


「いや、そうではないんだが、ここで引き下がるとそういう風に見てると思われそうでイヤだな。ここは毅然と5番のカナちゃんだ!」


 マスカラスマン→カナちゃん(仮)


「では出そろったな?」


「いいえ、まだよ」


「んん?」


「さぁ陣内くん。女の子を選んでください!」


「はぇ……」


 鬼畜お姉さん、急に主導権を握る。ハイジさんもすべてを理解した。


「ちょっと今面白いこと言えない」


「今は何番かだけで大丈夫よ。司会者ポジションに収まれれば、あの暖かいビニールハウスの中で野球拳見物ができるとでも思ったのかしら。君にそんなおいしい話は回ってこないわよ」


 ッシャア!


「7番……」


「陣内くんから7番のミナちゃん(仮)指名入りました!」


 小林氏→Sッ気のありそうなマドカちゃん(仮)

 円谷栄治→シャイなリオちゃん(仮)

 桜井→彼女のサキちゃん(仮)

 マスカラスマン→ハーフメガネのカナちゃん

 陣内→清楚なミナちゃん


「それではビーチフラッグ野球拳開始!」


 ハイジさん、小林氏、マスカラスマン、桜井、円谷くんがスタート位置で腹ばいになる。


「真冬の砂は冷たいな」


 少し雪が染みてるからな。そして威嚇戦隊能面ジャーがフラッグをランダムの位置に設置。鬼畜お姉さんのピッと鋭いホイッスルで全員が立ち上がり必死な形相!


「?」


「?」


「?」


「?」


「旗が5本だァ?」


 全員がだるまさんが転んだのように妙なポーズで硬直。そして強風に煽られて凍える。


「どうしたの!? さぁ、レッツビーチフラッグ!」


「もらったぁ!」


 沈黙を嫌ったのは円谷くん! まずはこの意味不明な5本体制のビーチフラッグの正体を知るべく先陣を切る。他の4人もまずはお前が様子を見ろということか阻みもしない。円谷くんがスタイリッシュに旗をとる。


「……」


「あぁーと円谷くん! 銀のエンゼルです。ハズレ!」


「ルールの追加説明をお願いしてもいいかな?」


「銀のエンゼルはハズレです。しかし、3つ銀のエンゼルを集めるとメルヘンなご褒美がもらえます」


 メルヘンなご褒美……メルヘンなご褒美ー!!!! こりゃあ、円谷くんの家族会議は長引きそうだ。


「それでは所定の位置へどうぞ」


 鬼畜お姉さんの合図でスタートラインに腹ばいになる5人。一番波打ち際に近かった桜井に飛沫がかかる。舌打ちが聞こえたような気がした。そして威嚇戦隊能面ジャーが、さきほど円谷くんが抜いた旗と同じ場所に新しく旗を設置。

 ピッと鋭いホイッスル!


「そりゃあ!」


 一番迷いがなかったのか、素早かった円谷くんがまたも旗をゲット。

 テーテーテレレレ……


「おめでとうございます! 円谷くん野球拳権ゲットです! 個室へどうぞ」


 鬼畜お姉さんの案内でビニールハウスに送られる円谷くん。そして無言でゾンビのような足取りでビニールハウスに群がる男子たち。


「おい! マジか! 写真より全然いいじゃねぇかクソッ!」


「ああああああクソッ!」


「ヒゲ! お前のマドカちゃんと俺のミナちゃん交換しろ!」


「そうはいきませんよ!」


「そういう具合に……勝て! 勝て円谷!」


「円谷ァー!」


 円谷ァ! 勝て円谷ァー!!

 ァー!!

 …ァー!!

 ……ァー!!


「さぁ、続きをしよう」


 円谷くんご満悦! 外で強風と寒さに晒されつつビニールハウス内の遊戯を眺めているしかなかった敗者たちは『北斗の拳』の虐げられる民のように歯を食いしばって何かを抑えている。


「コイツの嫁呼ぼうぜ。近くの方が奥さんも安心するだろ」


「フフ、勝って社会の窓閉めよ、さ!」


「驕るな円谷! 鬼畜お姉さん! 次行くぞ」


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