違った!男だらけの入浴大会!其の2
ちゃんとポールが言っていた通り、トイレに行ってから、体を洗うように渡されたスポンジと石鹸を持って、いざ浴室へ!
こんなお風呂見たことないですよ!
水瓶を持った石像からお湯がずっと出っ放しで、常に湯船には温かく清潔な温泉水が入っては出てを繰り返しててとっても贅沢です。
兄様から聞いた話だと、この町の温泉は、湯量が豊富だからこういった事をしても枯れないんだって。
「兄様、鼻血が止まってよかったね。」
「折角の機会なんだから気合で止めたよ。」
「気合で何とかなる問題なのか?」
「ちょっと!ポールなんで腰にタオル巻いてないの!?」
兄様と和やかな会話をしていたのに、間に全裸のポールが入ってきました。
本当になんでブラブラ見せつけてくるんだろう…やんなっちゃうよ。
全裸の変態さんを視界に入れないよう、背中を向けてスポンジを泡立てます。
ふふ…この花石鹸の匂いはいつ嗅いでも癒されますねー。
「エル、その花石鹸は自前なのか?」
「そうだよ。俺、この匂い大好きだから、お父様にお願いしていくつか買っておいてもらってるんだよ。」
「そうか…」
「どうかした?あ、ポールにも貸してあげるね!…どーぞ!」
泡立ったままで渡したら悪いと思い、石鹸を一回湯の張った桶に潜らせて綺麗にしてからポールに差し出した。
花石鹸は、ちょっと高価だからポールは持ってないと思って差し出したのに受け取らないでジッと見つめてくる。
「使わないの?」
「折角スポンジを泡立てたんだから、石鹸を貸すんじゃなくて、ついでに俺の背中を洗ってくれ。」
「もう…甘えん坊さんなんだから。仕方ないなー。」
俺の騎士になるって言いながら、俺に体を洗わせるんだからどっちがご主人様なのか分からないよ。
自分の体を洗う前に、ポールの大きな背中を泡立ったスポンジでガッシガッシ少し強めに擦った。
……泡が…すぐに無くなってしまう。
「ポール、もしかして体をずっと拭いてるだけだったの?」
「ああ、そうだな。」
「泡がすぐに無くなっちゃうじゃないか!今日は、徹底的に綺麗にするからね!」
《エルー。俺も花石鹸で洗ってー!》
《あ、俺も!その匂い大好きー!》
「私もエルに洗ってもらいたい!」
温泉に浸かる前に、俺は皆の体を洗って回るというハードな仕事を熟すことになった。
伽羅は、俺が入る時に一緒に入ってるからそんなに汚くないんだけど、ブルーノはとっても汚れていたので時間がかかった。
兄様は、綺麗にしてるから泡立ちも良くてあっという間に洗い終わったけど…ポールはブラブラとお尻以外しっかり洗って、頭も3回くらい洗った。
温泉って癒されるところのはずなのに、自分の体を洗いながらクタクタになっていた。
「エル、私が頭を洗ってあげるよ。」
「兄様…有難う…ってか、皆さっぱりした途端、当然のように俺を置いて先に温泉に浸かるってどうなの!?」
「私は、エルと一緒に入るから…ほら、目を閉じて。」
兄様は、優しいなー。
世の中のお兄さんって皆、弟に優しいのかな…兄様…お兄さん…兄ちゃん…兄ちゃん。
頭を洗って貰いながら、ぼーっと考えていた。
兄ちゃんって言葉…胸がすっごく痛くなる。
考えるのやめよう。涙が出ちゃいそうになるからね。
「エル、起きてる?流すよ?」
「うん…髪を洗って貰うって、とっても気持ちいいんだね…」
「喜んで貰えてよかった。」
温かいお湯と石鹸の泡が流れていくのを感じて目を開くと兄様が優しく微笑みかけていてくれた。
「兄様、有難う…大好き!」
「…エル…鼻血が出そうなくらい嬉しいよ。」
「出さないように頑張って!温泉入りに行こう!」
鼻血が出たら温泉に浸かれなくなってしまう!兄様を急いで湯船に連行しました。
綺麗な薄ピンク色の岩を大小組み合わせて作られた湯船に浸かると自然に変な声が出てしまった。
ポールは、笑いながら温泉とは、そうやって楽しむものだと言っていたので正しい楽しみ方らしい。
体の芯が温まっていくのをジンジンと感じ、さっきまでの疲労感がお湯に溶け出ていっているんじゃないかって位癒されてる。
「はー…気持ちいいね…」
「浸かりすぎて気分が悪くならないようにしろよ?」
「浸かりすぎると気持ち悪くなるの?」
「ああなる。」
ポールが指を指した先には、俺を置いて先に浸かっていたブルーノと伽羅が、床に倒れ込んで伸びていた。
二匹ともだらしなく舌が口から出てしまっているし、後ろ足まで伸び切っている。
「まだまだ、沢山温泉回るつもりだったのに、あれじゃ無理かな?」
「無理だろう。あの二匹はお湯に長時間ってのは苦手みたいだぞ…本人たちも今知ったみたいだがな。」
「お湯の質は、この辺りの施設全体的に変わらないから、ここを存分に楽しみましょう…休憩用の部屋も完備してあるから一日居れますしね。」
二人の言葉と濡れて冷たくなっている床に寝そべっている二匹を見て、仕方がないと溜息を吐いた。
明日は、湖みたいに大きな温泉施設に行くぞ!
そこは、入浴着着用厳守だから入浴着を帰りに買って行こう。
あとは…あとは…頭が回らなくなってきたからお湯から出て、冷たいものを飲んで考えよう。
ポールがブルーノを担ぎ、俺がふにゃふにゃの伽羅を抱き上げて脱衣所へ移動し、体と髪を拭いて着替えてからブルーノと伽羅の毛を乾かした。
兄様が、俺の頬が真っ赤になってるからと冷たい炭酸水を施設のサービス係に言って用意してくれた。
温風魔道具で乾かされてる二匹を見ながら優雅に炭酸水を飲んでしまって申し訳ないと思っていたが、俺は乾かすのが下手だし、体がだるくなってきたので二人の大人に甘えた。
この施設の名前は、極楽個室温泉ってところなんだけど…極楽です。
皆で温かい床の休憩室で横になり、ブルーノと伽羅と俺は冷たいものを飲んだり、ポールと兄様はお酒を飲んだりしていた。
お腹が空いたら、備え付けのベルでサービス係を呼んで食事をお願いした。
至れり尽くせり。細やかな心遣い。東の国が大好きになったよ。
お父様も言っていたけど、この国を嫌いな人なんていないと思う。
楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまうもので、閉店時間となってしまった。
あれから何度か温泉に浸かったり、まったり寝そべったりしていたので体がすっかりダルダルモードです。
ここに泊まってしまいたい。
「ポール…俺はここの家の子になる。」
「ここは家じゃねーから人は住んでない。残念ながら婿入りできません。ほら、抱っこしてやるから帰るぞ。」
《有難う!》
「ブルーノ、お前もかよ!お前はデカいんだから歩け!」
《ブルーノ…デカいと大変だな。》
伽羅はちゃっかり俺の肩にしがみついてポールに抱っこされて帰る気満々です。
兄様が、会計を済ませてくれ、俺は遠慮なくポールに抱かれて宿に帰りました。
その間、寝ちゃうかなって思ったけど、ブルーノが文句ばっかり言っていたので寝ることができませんでした。




