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第一章 不思議な学園と個性的な生徒たち 5

 ようやく、私は一人を確保する事が出来、ほくほく顔のまま彼女と手を繋ぎながら恵美さん達の下へ歩いて戻ります。

 恵美さんもどうやら一人勧誘に成功したらしく、その新しい人と一緒に何かを喋っている所でした。


「あ、アリスおかえりなさい。貴女も一人連れてきたのね」

「はい! 彼女の名前は赤井楓さんと言うそうですよ」


 私は笑顔で、私の背中に隠れてらっしゃる楓さんを恵美さんに紹介します。すると、恵美さんは彼女の名前を復唱し、それから微笑みながら彼女に向かって手を差し出します。


「赤井楓ね、私は涼波恵美よ、これからよろしくね♪」


 楓さんはおずおずとですが、恵美さんの差し出された手を私の背中越しから取ってから握り返し、彼女へ言葉を返しました。


「よ、よろしくお願い…… します」


 二人が挨拶を終えたところで、タイミングを見計らっていたかぐやさんが次に、次に楓さんへ挨拶をします。


「私は竹中かぐやって言うの、これからよろしくねー♪」

「は、はい…… ここ、こちらこそ、よろしく…… です」


 かぐやさんは楓さんと自己紹介を終えると、顎に指を当てていつも微笑んでいた顔から真面目な顔になり、それから真剣な表情のままぽつりっと呟きました。


「…… このカプもありね」


 すると、その謎の呟きに真っ先に恵美さんが反応し、彼女の頭にチョップします。


「あいたっ」

「また、貴女はいつもの悪い癖を……」


 恵美さんは何やら変な単語を呟いた彼女に指摘して溜息を吐き、チョップされた彼女は頭をさすりながら、いつもの笑顔で(だけどちょっと涙目)穏やかに恵美さんに言葉を返しました。


「いたた…… うふふ、だって、私はそれが大好きなのだもの(はぁと)」

「何が(はぁと)よ、もう」

「ごめんあそばせ♪」

「うわ、わざとらしい……」


 恵美さんとかえでさんは二人で、そんな絶妙なコントを繰り広げており、私と楓さんはすっかりと置いてけぼりにされます。いえ、私達だけじゃありませんでした…… そう、恵美さんが連れてきたらしき、一人の生徒をすっかりと放置してます。これはダメです。これはヤバイです。


 取りあえず私はあの二人をスルーする事に決めて、絶賛置いて行かれている彼女の下へ楓さんを連れつつ行くと、恵美さんの連れてきた少女はこちらにそっと顔を向けてくれました。


「あ、ども」


 灰色に近い若干もさもさしたロングの黒色の髪に、ルビーのような綺麗な赤い瞳をしている彼女は、私に気付くと頭を下げて挨拶をしてくれたので、私も同じように茶髪の少女に挨拶を返し、自己紹介をしました。


「私の名前は伏義アリスですー、何故か私の後ろに居らっしゃる方が赤井楓さんで、さっきのチョップされた方が竹中かぐやさん。そして、あっちで突っ込んだのが涼波恵美さんです」

「あのおバカコンビは知ってたけど、丁寧にありがとう。私は小枝心。これからよろしく」

「こちらこそ♪」


 こんな感じでお互いに親睦を深め合っている一方、例のお二方は未だに漫才を続けており、


「そんなんだからいつも変人って言われるのよ貴女は、さっさとその悪癖を直しなさい」

「これは悪癖じゃなくて、乙女に必要不可欠な所作の一つですってよ、恵美さん?」

「そんな迷惑千万な乙女の所作を神が許しても私が許さない」


 っとこんな感じで、なかなか話が進んでません。見ていて微笑ましいですけど、流石に今はこちらが困ってしまうので、私は彼女達の間に入って止めました。


「はいはい、喧嘩はそこまでにしてともかく人がようやく五人になったのですから、後一人を見つけましょう?」

「本当はこの自称乙女が見つける予定だったのだけどねー」

「私は自分から話しかけるのはちょっと恥ずかしくて」


 恵美さんに少しだけきつい指摘を受けても、かぐやさんは風のように受け流し、自身の頬を両手で挟んで恥じらいっぽく身体をくねくねさせながらわざとらしく喋ります。これには私も恵美さんに軽く同情。


「あ、でも丁度あそこに迷える子羊が」

「聖職者ですか貴女は」


 かぐやさんの言い回しに、私までつい素でツッコんでしまいました。だけど、確かに彼女の指差す方を見ると、ポツンっと灰音先生の隣に可愛らしい女の子がニコニコっと立っており、先生はこちらが視線を送っているのに気付いて、すかさずチラチラ視線を何度も送り返してきます。それは、もうとっても。早く引き取って下さい的なニュアンスがひしひしと。


 数分後。


「私はイギリスのBibury (バイブリー)からやって来たドロシー・オズナウェルでーす! みんなー、よろしくねー!☆」


 紅葉のような綺麗な茶髪に草原のような綺麗な緑色の目をしたドロシーちゃんは、そんなアイドルっぽい感じで私達にウインクしながらポーズを決めて自己紹介をし、私達の思っている心はある意味一つに集約しました。

 

「「「「「また、とんでもなく濃い奴が来た!!!」」」」」っと。


 でも、ある意味みんながみんな、個性があってこれはこれで班としては良い…… のかな? あっ、でも私はどちらかというと無個性なよーな。うん、無個性。


「よ、よろしくね。ドロシーちゃん」


 あのコミュ強な恵美さんがタジタジになる程度には、ドロシーちゃんは他を超える個性を放っている逸材で、彼女の挨拶と共に差し出した手を取るや、腕が引き千切れんばかりにブンブン上下に振りながらドロシーちゃんは笑顔で彼女に返事をします。


「こちらこそ!!!」


 個性…… っというより、もしかしたら元気? 


 私にも気さくに話しかけてくれた恵美さんは勿論の事、何だか謎めいたかぐやさんやおどおどしていて、いつも震えてばかりでほっとけなさ200%な赤井さん、クールでさっぱりしてそうな小枝さんに、アイドル気質っぽい元気っ娘なドロシーちゃん。


 私は改めて彼女達の事を振り返ると、最初こそ不安だったのだけど、この班だったらきっと楽しく学校生活を送れそうだと私は心の中で自信が付き、少しだけ嬉しくなりました。


 すると、それが顔に出ていたのか、恵美さんは私を見て不思議そうに尋ねてきます。


「あれ、アリス何を笑ってるの?」

「あ、ごめんなさい。何だかこの班だったら、色々安心出来そうだなーって思ってそれで……」

「そ、そう? でも確かに毎日退屈は無さそうな班になるかも」


 恵美さんは私の言葉に頷いて、それから微笑みながら賛同してくれました。そこに私はやっぱり恵美さんは優しくてお姉さんみたいな人だなーっと心の中で感動していると、彼女の次の一言で、その感動が一瞬にして悲劇的ビフォーアフターします。


「アリスも天然可愛いし、赤井ちゃんもいじらしくて可愛いし、最初は驚いたけどドロシーちゃんも明るくて愛くるしいし本当お姉ちゃん…… はぁ、夢見たい」

「え゛?」


 これが彼女の素なのか、それとも冗談か分かりませんがさっきの真面目な恵美さんとは違う、どことなく変態チックな、今にもよだれ垂らしそうな。そんなかぐやさんやドロシーちゃんを超える一線を画す変人っぷりをさらけ出し、私はただただ口を開けて驚くしかなかったのでした……


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