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近くて遠い恋  作者: 夢遥
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近くて遠い恋

 大和の気持ちを知った聖は、沙羅を説得すると凛に告げてから、沙羅が大和と別れると宣言。

 凛は罪悪感でいっぱいになるけどー。


 凛、聖、大和、沙羅の恋の行方はー!?



 翌朝、珍しく寝坊した。


 沙羅に、大和と別れるって聞いてから、何だか眠れず、うとうとしているうちに朝になってしまった。


「お母さん!寝坊したから、朝ご飯パス」


「トースト、1枚くらいかじっていったら?」


 お母さんは、トーストにバターを塗りながら、あたしの方を見る。


「いい!時間ないから」


 慌てて玄関へ行こうとした。


「そうね、外で大和君が待ってるし、待たせちゃ悪いわねー」


 お母さんは、溜め息をつく。


「行ってきます……」


 あたしは、靴を履くと玄関のドアを開けて外へ出た。


「凛、おはよー!」


 大和が、笑顔で出迎えてくれた。


「おはよう……」


 挨拶をすると、大和の隣に聖がいないことに気がついた。


「あれ?聖はー」


「先に、学校へ行ったけど」


「そうなんだ……」


 あたしは、大和と肩を並べて歩き出す。



 今日、聖は日直なのかな?

……違う。昨日、他の子が日直だったしー。





「おはよー!凛」


 学校へ行くと、今までのことが嘘のように、沙羅が元気よく声をかけてくた。



「お、おはようー」


 あたしは、ぎこちなく挨拶を交わした。


「ねえねえ、凛。谷本君って、彼女いるのかな?」



 急にそんなこと聞いて、どうしたんだろうー。



「いないと思うけどー?」


「良かった~!毎日、谷本君と話して、やっと気がつくなんてバカだけど、大和君より気が合うみたいなんだよねー」


 沙羅は、嬉しそうに言う。


「沙羅……?」


「あ、ごめん。あたし、谷本君のこと好きになっちゃったんだよね……。告白しようかな」


「えっ……。でも、大和と別れたばかりだよね?」


「そうなんだけどー。元々は、大和君から告白してきたんだし。自分から、告白しようと思ったの、谷本君が始めてなんだよねー」


 沙羅は、はにかんだ顔であたしを見た。


「……」


 あたしは、何て言ったらいいのか言葉を詰まらせる。


「凛も大和君に告るんでしょ?頑張ってね」


「う、うんー」


 頷いてみたけど、何だか胸の辺りがモヤモヤする。


「あ、谷本君!」


 沙羅は、教室に入ってくる聖を見つけると、嬉しそうに駆け寄った。


「凛、どうしたんだよ。ハトが豆鉄砲食らったような顔して」


 大和が、苦笑いしながら、あたしの頭にポンと手をやった。


「あ、うんー。沙羅の行動に、ついて行けないなと思って……」


「沙羅ー、何かあったのか?」


「それがね……」


 あたしは、大和に訳を話した。




「ふーん。沙羅が聖にねぇー」


 大和が意外そうな顔で頷く。


「大和は……いいの?沙羅が聖に告白しても」


「別れたんだから、沙羅の自由でいいんじゃないか?」


 大和が、ケロッとした顔をしてるものだから、あたしは呆れた。



 昨日、一昨日までは恋人同士だったのに、そんなにあっさりと、気持ちの切り替えができるの?



「それより、俺との約束の日。明日なんだけど、覚えてる?」


「う、うんー」


「明日、学校が終わったら、凛の家に行くから。その時、返事ちょうだい」


「……」


 あたしは、小さく頷いた。



 やっと、大和に気持ちを伝えられるんだし、告白の返事をOKしたほうがいいよね?




 ザーーー。


 放課後、朝は晴れていた空も、お昼頃から雲行きが怪しくなってきて、帰る頃には、とうとう雨が本降りになった。



 持ってきた傘を昇降口で、広げていると、聖が困った顔で、空を見上げていた。


「せ……聖。傘忘れたの?」


 今まで、聖と話さない日はなかったのに、今日、始めて聖に話しかけた。


「うん……。朝、急いでいたか……三浦、悪い!傘、持ってたら、途中まで傘に一緒に入れて」


 聖は喋り終わらないうちに、、後から来た沙羅に声をかけた。


「え?うん。持ってきてるからいいよ!」


 沙羅は驚いた顔で、聖を見たけど、すぐに、嬉しそうに受け入れた。



「凛、悪い。先に帰るから」


 聖は、傘に入れてもらうと、沙羅と肩を並べて歩き出す。



 ツキン……。


 急に、心臓が苦しくなる。


 何だろう?この気持ち……。



 今までは、聖が傘を忘れると、せがまれて一緒に入れてあげていたのに、急によそよそしくされたからかな……?



「何だ。あいつら、本当はもう、付き合ってるんじゃないのか?」


 大和が呆気にとられながら、2人の後ろ姿を見つめていた。




 さっきの聖の様子だと、付き合い始めたとは思えないけどー。



「それより、俺も傘忘れたから、入れさせて」


 あたしが、差していた傘に手を伸ばすと、大和が代わりに差した。


「聖も大和も傘、持ってこないの多すぎ~」


「仕方ないだろー。朝、雨が降ってないと、どうしても忘れるんだよな~」


 文句を言うあたしに、大和は苦笑いする。


「だから、忘れるんだよぉー」


 あたしも、思わず苦笑いする。




 あたし達が家に到着する頃、雨は少し小降りになってきていた。



「良かった~。小降りになってきたみたい」


「凛、また明日」


 大和が、優しくあたしの手に触れると、引き寄せた。



 ドキン……。


 あたしの心臓の鼓動が、一気に速くなる。



「明日、いい返事期待してるから」


 あたしの耳元で囁くと、大和は家の中へ入って行った。



「あはは……!谷本君ってば面白い」


 先に帰ったはずの、聖と沙羅が仲良さそうに歩いてきた。


「あれ?凛も今、帰ってきたとこなんだ?」




 沙羅があたしに気がついた。


「うんー。沙羅達は寄り道……?」



 もう、とっくに帰っていると思ってたのにー。



「もうすぐ、弟の誕生日だから、谷本君に、買い物付き合ってもらってたんだ」



 沙羅には、2つ下の弟がいるのは知っていたけど、もうすぐ誕生日だったのは知らなかった。



「三浦、傘ーサンキュ~。また明日な」


「待って!谷本君」


 家の中へ入ろうとしていた聖を、沙羅が引き止めた。


「話があるんだけど、また明日、一緒に帰れないかな?」


「?……いいけど」


「良かった!また明日ね。谷本君」


「また明日」


 聖は、軽く手を上げると家の中へ入って行った。


「沙羅ー。聖に話って……」


「あたし、明日……谷本君に告白する」


「え……」


 あたしは、言葉を詰まらせた。


「やだぁ~。そんなに驚かなくても。そんなに、あたしから告白するの変かな?」


「ううん……ただ、聖のこと好きって言ってから、そんなに経ってないなと思って……」



 しかも、明日大和に返事をする日に、沙羅も大和に告白するなんてー。



「時間なんて、関係ないよぉー。今日、一緒に帰って、やっぱり、大和君の時とはドキドキ感が違うんだよね~」


「ドキドキ感が違うって……?」


「何て言うの?谷本君といる時の方が、ときめくって言うかー」


 沙羅は、恥ずかしそうに顔を赤らめた。


「……」


 こんな沙羅の顔、始めてだ。


「じゃあね。凛も頑張りなよ!」


 意味ありげにあたしに言うと、沙羅は帰って行った。





「おはよー!凛」


 今朝も、聖の姿はなく大和だけが、いつもと変わらない笑顔で、家の前で待っていた。


「聖、今日も先に学校に行ったんだ……?」


「課題が、終わってないから先に行って、やるって言っていたけど……聖のこと気になるのか?」


「え?べ、別に……いつも、一緒だったから、変な感じだなと思って……」


 聖があたしのこと諦めるって宣言してから、一緒にいることは勿論、まともに話さなくなった。



「ふーん。あ、そうだ。今日、委員会の集まりで、遅くなるから、帰ったら凛の家に行くから」


「うん……」


 大和に言われて、あたしは、小さく頷く。


 大和は、あたしの手を触れると、優しく握り締めた。


「行こう、凛」


 大和が、あたしの顔を覗き込んだ。



 ドキン……。


 大和に見つめられて、また、心臓の鼓動が騒ぎ立てた。





「凛!おはよー。あれ?谷本君は、一緒じゃないんだ?」


 学校へ行くと、あたしと大和が、教室へ入るなり、沙羅が残念そうな顔で肩を落とした。


「聖、まだ来てないの?」


 あたしは、教室の中を見渡した。


「うん。鞄もないし、まだみたい……」


「おかしいなぁ~。聖の奴、先に学校へ行ってるって言ってたのに」


 大和は、不思議そうな顔で首を傾げる。


「あ、あたし、捜してくる!」

 無意識のうちに、あたしは教室を飛び出していた。



 聖は課題が終わっていないから、先に学校へ行ってるって、大和が言っていた言葉を思い出す。



 教室で課題をやってないってことは、あそこかも……。




 あたしが、辿り着いた場所は、図書室だった。


 まだ、誰もいない図書室の隅で、聖が机に俯せになっているのが見えた。



 課題は終わったのか、ノートを広げたまま寝ていた。


 あたしは、そっとノートを閉じると、聖の顔を覗き込んだ。


「聖、起きて。沙羅が捜してたよ」


 あたしは、聖の肩を揺すってみたけど、起きる気配はなく、反対にスヤスヤと気持ちよさそうに眠ったままだ。



 昔も、こんなことがあったなぁ~。


 宿題やるから、先に学校へ行って図書室でやるとか言って、大和と様子を見に来たら、やっぱり、聖は寝ていて夢の中で、起こしても起きなかったんだよねー。



「仕方ない。沙羅、連れてくるか……」


 あたしが、図書室を出て行こうとした時、


「好きだ」


 急に、聖に腕を掴まれて、ドキッとして振り向いた。



 でも、聖はさっきと変わらず、寝ている。


「寝言か……」


 あたしは、思わず苦笑いをする。


 あたしのこと諦めるって言ったのに、告白なんてあり得ない。



「いたいた」


 図書室から出て行こ

うとした時、大和と沙羅が入ってきた。


「聖の奴。また、寝てるのか~」


 大和も、昔のことを想い出したのか、呆れた顔で寝ている聖を見た。


「え?またって?」


 キョトンとしている沙羅に、あたしは訳を話した。


「へぇ~。でも、わかるなぁ~。図書室って、静かだから眠くなるんだよね」


 話を聞いて、沙羅は納得した顔で頷いた。



「起きろ!聖。授業が始まるぞ」


 大和は勢いよく、聖を揺すり起こした。


「ん……」


 聖はムクッと起き上がると、大きなあくびをした。


「何だよ。みんな揃って」


 驚いた顔で、聖はあたし達を見る。


「もうすぐ、授業が始まるから、呼びにきたんだろ。凛にも、起こされなかったのか?」


 大和は、溜め息混じりに言う。


「……いや」


 聖は、左右に首を振る。



 やっぱり、さっきのは寝言だったんだ……。


 ホッとしたけど、何だかモヤモヤした気持ちでいっぱいだ。


「凛、先に教室に戻ってよう」


 聖と沙羅に気を使ったのか、大和は、あたしの手を掴むと、図書室を出た。


「大和ー。沙羅のこと気にならないの?一応、元カノなのに……」


 何となく、2人のことが気になって、図書室の方を振り向いた。


「何だよー。気にしてほしいのか?」


 少しガッカリした顔で、あたしを見る。


「そ、そんなことないよー」


「本当にー?」


 大和に顔を覗かれて、ドキンとしてしまう。


「うん」


 大和に聞かれて、あたしは小さく頷いた。



 どうしようー。


 大和に見つめられても、聖の寝言にも、いちいち心臓が反応しちゃう。


 こんな気持ちで、明日、大和に告白の返事できるのかな……?





 翌日の昼休み。


「ビックニュス!」


 購買に行って教室に戻ってきたら、クラスの子達が騒いでいるのが聞こえてきた。


「今日、沙羅が谷本君に告白するらしいよ」


 クラスでも、情報屋の美奈が言う。


「えー!ショック。あたし、谷本君狙ってたのにぃー。美奈だって、谷本君狙いだったじゃない?」



 聖って、結構モテるみたいで、クラスの子でも何人か狙っている子がいたのは、薄々と気づいてはいた。


 でも、誰に聞いたんだろう?あたししか知らないはずなのにー。



「そうなんだけどー、実は言うと、渡部君も狙ってたから、別に沙羅が告白しようといいんだけどね~」



 美奈、大和のことも狙ってたんだ…?





 あたしの胸に、ツキンと突き刺さる。



「でも、美奈。よくわかったね?沙羅が谷本君に告白すること」


「沙羅が、朝から様子がおかしかったから、問いただしたら、白状したんだ~」



 何かあると、すぐに沙羅は顔に出ちゃうからなー。



「でもさー。沙羅、渡部君と別れたばかりなのに、よく次にいけるよね」


 美奈の周りの子達が、呆れ返っている。



「好きになるのに、時間なんて関係ないってことよ」


 美奈はサバサバした顔で言う。




 今まで、教室にいなかった聖が戻って来ると、美奈が駆け寄っていった。



「ねえねえ、谷本君!今、付き合ってる人とかいるの?」


「いないけど」


 急に美奈に聞かれて、聖は驚いていたけど、すぐ即答した。


「もし、誰かに告られたらどうする?」



 そんなこと、直接、聞けちゃうなんて、美奈は凄い。



「その子が真剣な気持ちだったら、付き合ってあげてもいいかな」


「ふ~ん」


 聖の言葉に真奈は、つまんなさそうな顔をさせたけど、今度は大和の方にも聖と同じ質問をした。


「付き合ってる子はいないけど、好きな子はいるよ」


「えっ、誰ー?」


 最初は驚いた顔した美奈だけど、ガッカリと肩を落とした。


「まだ、名前は言えない」


「教えてよ~」


 美奈は、何とか白状させようと、大和に迫った。



「そんなこと言われても、好きな子は大切にしたいし、軽く口に出したくない」





 情報屋の美奈に話すと、校内中に知れ渡るかも知れないし、大和の判断は正しい。



 でも、大和がそんなにあたしのこと思ってくれていたなんて、胸がキュ~ンとしてしまう。


 大和の口の硬さに諦めて、美奈は席へ戻っていった。




「大和ー。もしかして、好きな子がいたから、三浦と別れたのか?」



 美奈と大和の会話を聞いて、聖は大和を見た。


「聖だから言うけど、俺、凛のことが好きなんだ」


「……!!じゃあ、どうして、三浦と付き合ったんだよ」


「仕方ないだろ。沙羅と付き合って、本当は凛のことが好きなんだって気がついたんだから」


 大和は、小さな溜め息をつく。


「……」


 聖は、ただ黙って、大和の言葉に耳を傾けているだけだった。






「凛、谷本君と先に帰るね」


 放課後ー。


 聖と帰る約束をしていた沙羅は、あたしに一言、言うと聖と肩を並べて教室を出て行った。


「凛、悪い!これから、委員会なんだ。家で待ってて」


 聖達が帰った後、時間を気にしながら、大和があたしのところやってきた。


「わかった。先に帰ってるね」


 あたしは、帰りの用意をすると、学校を出た。



 帰る途中、家の近くの曲がり角で、誰かにぶつかった。



 ドン!!



 威勢良く相手の肩にぶつかって、よろめいてしまった。



 痛いなぁー!誰よ!?



 あたしは、じろっと相手の顔睨みつけた相手は、沙羅だった。



「凛ー!ごめん」


 沙羅は、ハッとあたしの顔を見ると、慌てて謝った。


「沙羅……。どうしたの?そんなに慌てて。聖と一緒に帰ったんじゃないの?」



 聖に告白するから、一緒に帰ったんだよね……?



「た、谷本君と一緒に帰ってきたよー」



 何だか、沙羅の様子が変だ。


「聖に、告白できたの……?」


「うん……」


 沙羅は、小さく頷いて見せた。



「せ、聖の返事は、なんて?」


「あ、あたしと付き合ってくれるって……」


「……!!」


 沙羅の言葉に、あたしは言葉を失った。


「付き合ってくれるとは、思わなかったから、まだ、信じられなくてー。自分から、告白してOKしてもらうのって、こんなに嬉しいことだったんだね」


「……」


「あ、じゃあ……あたし、帰るね。凛、また、明日!」


 一方的に喋ると、沙羅はそそくさと帰って行った。



 聖、沙羅と付き合うんだ……?



 そう思ったら、聖に告白されたことが、昔のことのように思えてきた。





 沙羅と別れてから、自分の部屋で宿題をしながら、大和が来るのを待っていた。



 でも、何だか気持ちが落ち着かなくて、宿題がはかどらない。



「はあー」


 無意識のうちに、溜め息が漏れた。



「凛!大和君が来たわよ」



 お母さんが、ドア開けて顔を出した。


「凛、遅くなってごめん!」


 お母さんの後ろから、大和が顔を出す。



「大和君、夕ご飯食べてって~」


 お母さんが、いつものように大和を誘った。


「じゃ、ご馳走になろうかなー」


「良かった~!じゃぁ、お家の方に電話しておくわね~」


 お母さんは、嬉しそうに階段を下りていった。



 お母さんが部屋から出て行った後、あたしと大和は、しばらく沈黙のまま、座っていた。


 大和と2人になることなんて慣れているはずなのに、何だか緊張してしまう。


 今まで、大和に告白できないでいたけど、どんな形でも大和に告白できる。


 聖も大和の気持ちを知って、身を引いたんだし……。



「や……大和。あたしね、小さい頃から、大和のことが好きだったんだ」


「ーー!!ごめん、知らなかった……」


 驚いた顔で、あたしに目を向けた。


「言ってなかったし、知らなくても、しょうがないんだけどね……」


「……じゃあ、今は?」


 大和は、あたしの顔を覗き込む。



「す……好きだよ」


 ドキドキしながら、告白した。


「……ってことは、告白の返事、OK?」


「……」


 あたしは、コクリと頷いてみせた。


「良かった~!実は、聖に凛のこと取られたら、どうしようかと思って、ハラハラしてたんだ」


 大和は、ほっとした顔であたしを抱き締めた。


「……」


 やっと、告白できて、付き合えるようになったのに、何でかな?心の奥に引っかかる物があるのは……。



「どうした?凛ー」


 そっと、大和があたしから身体を離した。



「ううん。何でもない」


「俺達、付き合うようになったけど、昨日や今日の付き合いじゃないんだから、隠し事なしだからな」


 大和に軽く睨まれて、あたしは口を開いた。


「い……今まで、幼なじみだったから、大和と付き合うなんて、何か変な感じで……」



 それは、本当のことだ。



「あはは……!そんなことか~」



「な、何よ。笑うことないでしょー」


 あたしは、ムッとしながら大和を見た。


「だって、俺だって、凛と同じだから」


「……」



 幼なじみ以上になるなんて、最初は、戸惑うことかも。





 大和と付き合うことになった翌日。


「凛ー!おはよー」


 学校に行く準備をして、家の玄関のドアを開けると、ちょっと、恥ずかしそうな顔で大和が待っていた。


「おはよう、大和」



 あたしは、大和に挨拶する。


「今日も聖、先に行ってるって」


「そうなんだ……」



 朝、聖と一緒に行かなくなってから、何日になるかな?


 でも、沙羅と付き合うようになったんだし、もう、一緒に行くことはないのかも知れない。


 あたしは、胸の奥で、ギューッとと縮む思いがした。



 どうしたのかな?あたし……。


 沙羅と聖が付き合うって聞いてから、昨夜は全然、眠れなかった。


 それに、いちいち心臓が反応してしまう。



 そういえば、大和が沙羅と付き合うって知った時も、眠れない日はあったなー。

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