表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
近くて遠い恋  作者: 夢遥
5/7

近くて遠い恋

聖に告られてから、大和が沙羅と別れて、凛と付き合うと打ち明けられる中。

 沙羅とも気まずくなってしまった凛ー。


本当に大和と沙羅は別れるのかー?


 大和が沙羅と別れ話をしてから、沙羅はあたしを無視するようになった。



「沙羅、次の移動教室なんだけど、一緒に行こ……」


「真奈、梨花!次の移動教室、一緒に行かない?」


 あたしが、言い終わらないうちに、沙羅は他の子達の方へ行ってしまった。


「……」



 無視されるのも、当然っていえば当然だけど……。さすがに、落ち込んでしまう。



 あたしは、仕方なく、独りで次の教室へ向かった。


 教室へ入ってから、ぼんやりしていると、


「大丈夫か?凛」


 そんなあたしを気にかけながら、聖が声をかけてくれた。


「あはは……。仕方ないよ、沙羅の気持ちもわかるし」


 あたしは、無理に笑顔を作る。


「凛ー。ちょっと、来いよ」


 聖はあたしの手を掴むと、教室を出て行こうとした。


「聖!何処に行くんだよ?もうすぐ、授業が始まるぞ」


 大和が、驚いた顔であたし達の方を見ている。


「凛が、お腹が痛いって言うから、保健室に連れて行くから、先生に言っといて」


 聖は強引にあたしを連れて、さっさと、教室を出た。


「せ、聖!あたし、お腹なんて痛くないんだけど……」


 保健室の前まで行くと、あたしは慌てて聖の手を振り解いた。



「……わかってる。ただ、凛がいずらいんじゃないんかと思って、連れ出しただけだから……」



 あたしに背を向けたままの聖の言葉が、凄く優しく感じた。


「ありがとう、聖ー。でも、大丈夫だから……」


 あたしは、教室へ戻ろうとした。


「先生!お腹が痛いって言うので休ませていいですか?」


 あたしの言葉を無視して、保健室の先生の所へ連れて行った。


「あら、大変!ベッドが空いてるから、胃薬飲んで休んでなさい。先生は職員室に用事があるからいなくなるけどー、戻ってくるまで君がついてあげてくれるかなー?」


「はい」


 聖が返事をすると、先生は安心した顔で、職員室へ行ってしまった。


「ちょ、ちょっと、待ってー。本当に大丈夫だから、教室に戻るから……」



「凛ー、少し休んでけよ。俺……教室にいる時の凛の辛そうな顔、見てられない」


 そう言って、無理やりあたしをベッドに寝せた。


「聖……」


「でも、考えてみれば、良かったなー。大和と両想いになれて……。二度とないチャンスだし、俺が……三浦さんのこと何とかするから、大和に告れよ」


「えっ……」


 あたしは、聖の言葉に耳を疑った。



 聖、あたしのこと好き……なんだよね?

それなのに、どうして、あたしのこと応援してくれるの?



「凛が喜ぶ顔が見られるなら……、喜んで応援するよ」


 そう言った聖の顔は、何だか寂しそうだ。




 昨日今日の付き合いじゃないし、あたしにはわかる……。


 聖は、こんなこと言ってるけど、あたしのことを考えて、諦めようとしてるんだ……。




「わかった……。大和に告白してみるー」


 あたしは、決心した顔で聖を見た。



 こんなに、応援してくれるんだもん。聖の気持ちに応えてあげようー。



「頑張れよ」


 聖は、あたしの頭に、優しくポンと手をやった。




 その日の夕方ー。


 結局、今日はあれから教室に行きづらくて早退して帰ってきてしまった。


「凛ー!大和君が来てるわよ」


 気分転換に、自分の部屋でイヤホンを耳に当てながら、音楽を聴いていると、お母さんが顔を覗かせた。



「寝てるって、言っといてー」


 聖には、告白するなんて言ったものの、沙羅のことも気がかりだし、今は、大和には逢いたくない。



「そんなこといってもね……」

 お母さんは、困った顔で頬に手をやる。


「ーー?」



 どうしたのかな?



「何だよー。そんなに、俺に逢いたくないのかー?」


 大和が、お母さんの後ろからヒョイと顔を出した。


「べ、別に……。そんなことないけどー」


 あたしは、顔を背けたまま言った。


「凛ー。せっかく、大和君が来てくれたのに、何その態度は?ごめんなさいね、大和君」


 すまなさそうに、お母さんが言ったら、


「いつものことだから」


 と、大和が笑って応えた。


「そうー?あ、それより、大和君。ご飯まだだったら食べてって」


 お母さんは、食べていって欲しそうな顔で、大和を誘った。


「ご馳走になっていこうかな~!」



「じゃぁ、大和君の家に連絡しておくわね~」


 お母さんはさっさと、部屋から出て行った。


 もぅー!お母さんってば、勝手なんだから……。



「それで……?何か用?」


 つい、素っ気ない態度になってしまう。



「何だよー。途中で帰ったから、心配して来たのに、凛、おかしいぞ……?」


「……」



 誰のせいで、途中で帰ってきたと思ってるのよー?



「凛……」


 大和が自分のおでこを、あたしのおでこにコツンとあてた。


 ドキン……。


 急に、大和が急接近してきたので、あたしの心臓がうるさく騒ぎ立てた。


「元気ないな?……って、俺のことが原因か……」


「そ、そうだよ!元はといえば大和が悪いんだから……」


 すねた顔でそっぽを向く。


「でもさぁー。凛だって、俺が告ったのに、返事くれないのが悪いんだぜ。はっきりしておけば、沙羅だって凛のこと無視することはないと思うけど」



 知ってたんだー?沙羅に、無視されていること……。



「……今じゃなくてもいいから、1週間後に返事くれないかー?」


「う……うん」


 変なの……。告白の返事をしようと思っていたのに、大和に1週間後でもいいなんて言われて、何だか、ほっとしてる自分がいる。



「凛ー」


 大和は、あたしを抱きしめると耳元で囁いた。


「沙羅のことは気にしなくていいから、俺のこと幼なじみじゃなくて、男として考えて」


「……」


 そんなの、大和が沙羅と付き合う前から、幼なじみじゃなくて、あたしにとっては、独りの男の子として見てきた。



 少しの時間、大和はあたしを抱き締めると、身体を離した。


「凛、大和君!ご飯できたから、下りてらっしゃい!」


 下で、お母さんの呼ぶ声が聞こえてきた。


「は、はーい!」


 あたしは、慌てて返事をして立ち上がろうとした時、足がもつれて大和の上に倒れてしまった。


「ご……ごめん!大和」


「……」



 あたしが、急いで起き上がろうと身体を起こそうとした時、大和にグイッと腕を引っ張られたかと思うと、いきなり大和は、あたしにキスをした。


「……!!」


 何が起こったのかわからず、あたしは一瞬、戸惑ってしまった。



「ごめん、いきなりキスして……。凛の慌てた顔が可愛くてついー」


 大和は、耳まで真っ赤にしながら、恥ずかしそうに言った。



「凛ー!下りてらっしゃい」


 また、お母さん呼ぶ声が聞こえてきた。


「行こう、凛」


 大和は、立ち上がるとあたしに手を差し伸べた。


「や……大和、先に行ってて。イヤホン、片付けてから行くから……」


 大和が来る前に、音楽を聴いたままイヤホンが床に無造作に置かれたままだ。


「わかった」


 大和が部屋から出て行った後、指で自分の唇を触れてみた。


 ファーストキッスの相手が大和で、嬉しいはずなのに、モヤモヤするのは何だろう、この気持ち……。





 それから、5日経ったある日のことー。



「凛ー。おはよう」



 昨日まで、沙羅に無視されていたのに、急に声をかけられた。


「お、おはよう……」


 あたしは、ぎこちなく挨拶を返す。



 沙羅と話するなんて、久し振りだ。


 こうして、話しかけてくれたのも、聖が沙羅に何か言ってくれたからだよね……。



「今まで、無視したりして、ごめんね……」


「……」



「最初は、谷本君の話なんて、聞く気なかったけど、あまりにも真剣に言うものだから、訳を聞いたら、凛はずっと前から大和君のこと好きだったから、友達なら2人の気持ちを大切にして応援してあげろって……」



「……」


 聖、そこまで話したんだ……。



「凛には、大和君のこととらないでなんて言ったけど、本当は、付き合ってみて、何か違うような気はしていたんだ……」


「……」


「だから、大和君と別れるよ……」


 沙羅は、決心した顔で唇を噛み締めた。


「……」


 沙羅が大和と別れる話をしたとたん。

また、罪悪感で、いっぱいになってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ