表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
近くて遠い恋  作者: 夢遥
4/7

近くて遠い恋

聖と大和に告白された凛。


大和に告白されたことを、沙羅に打ち明けられずにいた。


凛、沙羅、聖、大和の関係はどうなっていくのかー!?



 沙羅に、どんな顔をすればいいんだろうー。


 今までなら、大和に告白されて、素直に喜べたはずなのに、今は、罪悪感でいっぱいな感じだ。




 家に帰っても、その気持ちは抜けないままだった。


「凛ー!ごはんよ」


 自分の部屋で、宿題をやった後、ぼんやりしていたら、お母さんの呼ぶ声が聞こえてきた。


「は~い!」


 あたしは、返事をすると、リビングへ下りていった。


「よぉ!」


 リビングに行くと、聖がちゃっかりと、うちでご飯を食べながら、くつろいでいた。



「お母さん、どうして聖がいるの?」


「どうしてってー。聖君の家、誰も帰ってきてないんですって。だから、夕ご飯誘ったのよ。うちも、今日は、お父さん遅いし、聖君がいてくれると、賑やかだし……ついでに、大和君も誘っちゃおうかしら?」


 お母さんは、大和を呼びに行こうと、玄関の方へ行こうとした。


「お、お母さん!大和だって忙しいだろうし……急には無理じゃないかなー」


 何とか思いとどめるように、慌ててお母さんを引き止めた。


「それもそうねー。急だと悪いわね。また、今度にしましょうか」



 お母さんは、納得するとキッチンへ戻って行った。



 今は、大和と話す言葉がみつからないから、顔を合わせたくない。




「凛、どうしたんだよ?今日、1日。おかしいぞ」


 食事が終わって、ソファーに座ると、聖はテレビのリモコンのスイッチを押しながら、あたしを見た。



 聖、気づいてたんだー?



「せ……聖の気のせいだよ。そんなことないから」



 告白されたなんて話したら、聖はどう思うだろう……?




「凛ー!ココア入れたから、取りに来て。お母さんは、聖君の家で帰ってきてるか、様子見てくるから」


 キッチンの奥で、お母さんの呼ぶ声が聞こえてきた。


「はーい」


 ココアを取りに行くと、聖に出してあげた。


「サンキュー」


 聖はカップを手に取ると、ココアを飲もうとした。


「アチッ!」


 熱かったのか、聖は顔をしかめながら、口を押さえた。


「大丈夫!?」


 あたしは、聖の方へ目をやった。


「やけどしたかも……」


「えっ!ちょっと、見せて」


 慌てて、聖の顔を覗き込むと、聖の口元へ手をやろうとした時、聖は、あたしの腕を掴んだ。


「せ、聖ー?」



 どうしたんだろう……?



 あたしは、改めて聖の顔を見ると、聖は、真剣な瞳であたし見つめていた。


「凛、俺に隠し事はなしだからな」


「やだなぁ~。さっきも言ったけど、聖の気のせいだって言ったじゃない」



 苦笑いしながら、耳たぶに手をやった。



 昔から聖は、あたしが隠し事をしていると、すぐに見抜いてしまう。



「気づいてないかも知れないけど……」


 聖の指先が、そっと、あたしの耳に触れる。


「……!!」


 ドキンドキン……。


 聖に触れられて、急に心臓の鼓動が騒がしくなる。



「凛が、嘘つくときって、耳たぶ触るよな~」


 そう言うと聖は、あたしの耳たぶを軽く引っ張った。



「やだなぁ~。じ、自分の癖くらいわかってるよ」


 あたしは、また、耳たぶに手をやりそうになって、慌てて抑えた。


「で?何があったんだよ」


「……」



 これ以上、隠すことは難しそうだ……。


 あたしは、仕方なく、大和に告白されたことを打ち明けた。



「何だよ、それ……」


 打ち明けた後、聖は愕然とした。


「あはは……。本当、大和ってば何考えてるんだろうね」


 あたしは、ココアを飲みながら、苦笑いをする。


「あいつらが別れたら、凛はどうするんだよ?」


「どうって……」


 何て言っていいのかわからず、言葉に詰まってしまう。


「凛……」


 困っているあたしを見て、聖は優しく、あたしを抱き締めた。


「ごめん……。凛のこと、困らせるつもりはなかったんだ……」


「聖……」


 聖の優しさに、キューンとしてしまう。


「でも、大和の奴。今頃、凛のこと好きだなんて、気づくのが遅すぎ……。三浦さんのことだって、どうするつもりなんだか」


「……」


 沙羅に事情を話して、あたしと付き合いたいってことは、別れるってことだよね……?



 その時は、大和か聖か選ばないといけないー。



「凛……」


 聖は、あたしの瞳を覗き込むと、ゆっくりと顔を近づけた。


 キスされる……!


 ドキンドキン……。


 そう思ったら、あたしの心臓が、また波を打って速くなっていた。




 聖の唇があたしの唇に触れる瞬間、あたしは無意識のうちに、顔を背けていた。



「ごめん、嫌だよな……」


 聖が、寂しそうに謝ると、あたしから身体を離した。


「ち、違うのー。ただ、びっくりして……」


「いいよ。大和に告られたって聞いて、俺も少し焦りすぎたかな~。凛の気持ちが一番大事なのに」




 ソファーから立ち上がると、聖はぐ~んと背伸びをした。


「おばさん帰ってこないけど、多分、お袋も帰ってるだろうから、俺は帰るかなー。凛、お休み」


「……おやすみ」


 聖が出て行った後、パタンとソファーの上に倒れた。


 今まで、幼なじみだと思っていた聖に、キスされそうになったなんて、信じられないー。




 何分か経ってから、お母さんが帰ってきた。


「ごめんね、凛!遅くなって。聖君の家で帰って来てたから、聖君に伝えようと思ったら、つい、聖君のお母さんと話が弾んじゃって」


 お母さんは、ウキウキした声で食べ終わった食器の洗いものを始めた。


「凛、どうかしたの?」


 あたしの様子に気づいたのか、洗いものをする手を止めると、お母さんがキッチンから顔を出す。


「何でもないー。ちょっと、疲れただけ……」


「そぉー?なら、いいんだけど。じゃあ、先にお風呂に入ってらっしゃい」


「はーい」


 お母さんに言われて、ソファーから起き上がると、お風呂に入ることにした。



 明日、聖に逢ったらどんな顔をすればいいんだろう……。


 顎まで、お風呂のお湯に浸かりながら溜め息をついた。




「凛、おはよー!」


 翌朝、いつものように、家の前で聖が待っていてくれていた。


「お、おはよー」


 あたしが、聖に挨拶した時だった。


「聖、凛、おはよー」


 とっくに、学校へ行ったと思っていた大和が、家の中から出てきた。



「大和……。どうしたの?沙羅と一緒に学校に行くんじゃないのー?」


「沙羅には、断った。今日から、今まで通り凛達と学校へ行くからって」


「えっ……」


 あたしは、一瞬、言葉に詰まってしまう。


「大和、お前ー」


 聖も、何も言えずにただ、大和を見つめていた。





「凛、大和君。好きな子ができたから、あたしと別れたいって言うの……」


 その日の昼休みのことだった。


 沙羅に呼び出されて校舎裏へついて行くと、悲しそうな顔で話した。


「……」



 沙羅に話したんだ……。



「好きな子って、やっぱり、凛のこと……?」


「……ま、まさかぁ~。大和とは、ただの幼なじみだし……」



 大和、誰を好きなのかは、まだ言ってないみたいだー。



「でも……前にも言ったけど、大和君は、絶対、凛のこと幼なじみ以上に想ってるよー」


「……」


 あたしは、何も言えず、目を閉じた。


「り、凛……。大和君のこと、取らないでー!!このまま、幼なじみでいて、ね!?」


 沙羅は、あたしの肩を掴むと、声を荒立てた。


「さ、沙羅!落ち着いて」


 何度か落ち着かせようとしたけど、沙羅は興奮した状態で、あたしの肩を激しく揺すった。


「沙羅!何、やってるんだよ」


 大和が慌てて、駆けつけてきた。


「大和……」


「廊下の窓から、沙羅と凛が見えたから、慌てて来てみたけどー、何があったんだよ!?」


「だって、大和君が別れたいって言うから……、凛のことが原因だと思って、今、聞いていただけよ……」


 あたしの肩から手を離すと、沙羅はうなだれた。


「だからって、凛を困らせるようなことは、やめろよ……」


「そんなに、凛のことが心配ないなんだね……やっぱり、好きな子って、凛なんでしょ?」



「……」


 大和は、観念したのか静かに頷いて見せた。

「やっぱりね……ずっと、そうなんじゃないかなと思ってたんだー」


 沙羅は、瞳に涙を浮かべながら、顔を背けた。


「さ……沙羅」


 あたしは、心配になって、沙羅の身体に触れようとした時、沙羅は、パシッとあたしの手を払いのけると、逃げるように駆け出した。


「待って、沙羅ー!!」


 急いで追いかけようとした時、大和に腕を掴まれて、引き寄せられた。


「凛、行くなよ。沙羅には、わかってもらえなかったけど、凛のこと好きな気持ちだけは、変わらないから」


 大和にそう言われて、心臓の鼓動が速くなる。



 ドキンドキン……。



「か……勝手すぎるよ。大和から沙羅に告白しておいて、今更……あたしのこと好きだなんてー」



 でも、大和のこと言えないか……聖にも大和にも、ドキドキしてる自分がいるなんて、あたしも勝手だよねー。



 あたしは、そっと、唇を噛みしめると俯いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ