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近くて遠い恋  作者: 夢遥
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近くて遠い恋

恋によって、幼なじみ3人の関係が段々、変化していくお話です。


良かったら、是非、読んでみて下さい!!

チュンチュン……。



「行ってきまーす!!」


 あたしは、元気に玄関のドアを開けた。


「おはよー!凛」


 目の前には、2人の男の子が明るい笑顔で立っていた。



 あたし、永沢凛りん、17才。元気だけが取り柄。


 そして、あたしの前に立っている男の子は、谷本聖せい渡部大和やまと


 2人とも家がお隣同士で幼なじみだけど、あたしは、大和のことが好き。その事は、聖しか知らないんだ。


「よしよし、今日は、寝坊しなかったな」


 大和が、あたしの頭をポンポン叩いた。


「もぅー!そんなに毎回、寝坊しないってば」


 あたしは、唇を尖らせる。


「凛は、寝坊するの得意だもんな」


 聖まで、あたしをからかう。

「聖まで何、言ってるのよ!」


 いつもと、同じ変わらない朝。


 でも、こうして一緒に3人でいられるのが、崩れることになるなんて、思ってもいなかった。





「凛、おはよー!」


 学校へ行くと、教室に入るなり、友達の沙羅さらが、元気よく挨拶してきた。


「あ、谷本君と渡部君もおはよー!」


 沙羅は聖と大和にも気がついて挨拶する。


「おはよー。三浦さん」


 聖と大和は、笑顔で挨拶を交わした。


「3人ともいつも、仲が良くて羨ましいな」


 沙羅が、あたし達を見回しながら溜め息をついた。


「幼なじみだからなー。でも、三浦さんだって、俺達の仲間だろ!」


 大和が明るく沙羅に言う。


「そうだよ。沙羅だって、あたし達の仲間じゃない!」


 あたしも沙羅を励ますように、明るく言った。


「ありがとうー。凛、渡部君」


 沙羅は、嬉しそうに笑った。


 あたしの横で、大和が優しい瞳で沙羅を見つめているのは、あたしには感じた。



 沙羅は大和の好きな人。それは、あたしも聖も知っているけど、好きな人が、友達を好きなんて、あたしにとっては、複雑な気持ちだ。




「凛ー。三浦さんって、犬好きかな?」






 掃除の時間。


 あたしと大和は、美術室の掃除担当なので、掃き掃除をしていたら、呟くようにあたしに聞いてきた。



「好きじゃないかな?あ、わかった!大和の家で生まれた子犬、飼ってくれる人、探しているんでしょー?」


 大和の家で飼っている、ミックス犬のチップに赤ちゃんが生まれたと、お母さんが言っていた。



「そうなんだ。凛の所でも貰ってくれないか?おばさんに聞いておいてくれよ」


「いいよ。でも、沙羅が貰ってくれれば、もっと近づけるチャンスだもんね」


「バレたかー。でもさ、以外だよなぁー。あんな美人が、凛の友達なんてさ」


 大和は、溜め息混じりに言った。


「大和は、美人に目がないものねー」


 あたしは、子供がすねるみたいに、頬を膨らませた。



 大和に告白もできずに、いつも、相談にのっているに、大和って無神経すぎるよー。


「凛は美人と言うより、可愛い感じだよなー。あはは……」


 大和は、苦笑いしながら、あたしの髪をクシャっとする。


「やめてよ!大和」


 あたしは慌てて、手ぐしで髪を整えたけど、本当は大和に触ってもらえて心の中は嬉しかった。 





「大和ー!先生が呼んでたぞ」


 掃除が終わって、教室へ戻ると聖が大和を呼びに来た。


「やべー!レポートまだ、出してなかった」



 大和が慌てて、レポートを届けに職員室へ行ってしまった。


「大和ってば、いつもそうなんだからー!」


 呆れ顔で、あたしは大和の後ろ姿を見送った。


「凛は、そんな大和が好きなんだろ?」


 隣で、聖も呆れ顔であたしを見る。


「あはは……」


 そう言われると、何も言えなくなってしまう。


「大和には、告んないのか?」


「……うん」


「凛は、それでいいのか?」


 聖は、心配そうにあたしを見た。


「大和のこと、困らせたくないもんー」



 それに、大和に告白しても、振られるのはわかってるのに、そんな勇気は出ないー。


「凛がそれでいいんなら、俺は何も言わないけど、少しは俺のことも頼れよー」


 聖は、あたしの肩をポンと叩いた。


「ありがとう、聖……」



 聖は、いつも優しいなー。あたしの気持ち、知ってるからかも知れないけど……。






「今日は、宿泊学習の班を決めるぞー!」


 翌日ー。


 担任の金沢先生が、宿泊のプリントを配った。


「4人ずつに別れて、分担を決めるように」


 金沢先生に言われて、みんな散らばり始めた。



 当然、あたしは聖と大和、沙羅のグループで決定だ。


 班長は、じゃんけんで決める。


「あたしの負けだー」


 昔から、じゃんけんに弱くて、いつも負けてしまう。


「凛は、じゃんけん昔から弱いもんなぁー」


 聖と大和が、口をそろえて言った。


「凛、俺も手伝うから頑張れよ」


 大和が珍しく、優しい言葉をかけてくれたけど、


「その代わり、俺と三浦さん同じ担当でよろしく」


 大和は、そっとあたしに耳打ちした。


「仕方ないなぁー」


 あたしは、苦笑いしたけど、本当は沙羅とじゃなくて、あたしが大和と同じ仕事をやりたい。



 そう思っていたら先生が、


「食事担当や他にも仕事があるが、アミダで決めろよー」


 と、言ったので、クラスの男子が文句を言い始めた。


「えー。どうしてアミダなんですかー?俺、料理できないし、もし、当たったら嫌なんだけど」


「あのなー。この宿泊は、今まで、できなかったことを挑戦したり、人との交流を深めるためがポイントなんだぞ。だから、そう言うふうに、文句を出さないためにも、平等に決めるからな」



 アミダってことは、大和と一緒にできるチャンスがあるってことだよね?



 あたしは、期待に胸が弾んだ。


 でも、そんな期待も虚しくー。


「あたしと聖は、まき拾いとご飯炊くの担当かー」


 あたしは、残念そうにアミダの紙を見つめた。


「俺と三浦さんは食事担当かぁー」


 大和が、ホッとした顔で嬉しそうに笑った。


「……」


 何だか大和の顔を見たら、自分の気持ちを抑えてしまう。



「凛、いいのかよ……?」





 聖が、あたしを気にかけて声をかけてくれた。


「大丈夫大丈夫!アミダで決まったことだし、仕方ないしね」


 あたしは、無理に笑顔を作った。


「無理するなよ」


「べ、別に無理してないから。ありがとね、聖……」


 あたしは、聖の袖をそっと掴んだ。





 昼休みー。



 今日は日直なので、授業で使った資料を返しに行こうと、教室を出て行こうとしたら、大和が、あたしの所へ来て、資料を半分持ってくれた。


「大和、ありがとう」


 さりげなく、手伝ってくれるところが、大和のいいところなんだよねー。



「凛ー。三浦さんに、子犬のこと聞いてくれたか?」


「あ、ごめん。まだ……。今日か明日、聞いといてあげる」


「サンキュー。俺も三浦さんの前で上がらなければ、聞けるんだけどなー」


「……」


 上がっちゃうなんて、何だか普段の大和とは想像つかない。


「大和は……沙羅に告白しないの……?」


 聞くつもりじゃなかったのに、あたしの口から、ぽろっとこぼれ落ちた。


「告白する勇気があれば、今頃、とっくにしてるんだけどなー」


「大和らしくないなー。男らしく、告っちゃえばいいじゃない」


 大和の背中を、押している場合じゃないのに、応援してしまう……。



「凛、サンキュー。告白できる日がきたらするから。それより、凛には好きな奴いないのか?」


「え……。どうして、そんなこと聞くのー?」


 あたしの頬がピクッと引きつる。


「俺ばかり、凛に協力してもらったら悪いし。俺も凛に協力しようかと思ってさ」


「……好きな人はいるよ。でも、大和に協力してもらわなくても、大丈夫だから……」



 気持ちを感づかれないように、大和から目を逸らしてしまう。



「じゃあ、もし、好きな奴のことで困ったことがあったら、相談にのってやるから」


「い、いいよ……。あたしのことはー」




「遠慮するなって!俺達、ダテに幼なじみやってるんじゃないんだから」


「……」



 幼なじみ……。



 その一言が、あたしの胸に突き刺さる。



 あたしは、幼なじみじゃないほうが、よかったよ……。



 胸がキュッと締めつけられた。


 宿泊学習の日ー。



「これから、班ごとに別れて、食事を作ってもらうが、怪我しないように、気をつけて始めるように!」


 先生の合図で、みんな班ごとに別れて、材料を洗ったり切ったりと、それぞれ持ち場について仕事を始めた。



「聖、俺と三浦さんは野菜、切ってるから」


 大和に言われて、


「わかった。俺達も小枝拾ってくる」



 聖とあたしは、森の中に入っていった。


「凛は、向こうで拾ってきて。俺はあっちで拾って来るからー。集めて来たら、また、この場所に集合な」


「わかった」


 あたしは、小枝を拾いに聖と別れた。



 あたしは、小枝を夢中で、拾い集めて行く。


「ふぅー。このくらいで、いいかなー」


 両手で抱えるほど、小枝を拾うと、あたしは集合場所へ戻ろうとした。



 あれ?どっちから来たんだっけ?


 夢中で、拾ってて結構、奥まで入ってきてしまったみたいだ。



 あたしは、とりあえず、こっちかなと思う道を歩いていった。



 でも、なかなか、たどり着かない。



「聖ー!!」




 あたしは、思いっきり呼んでみた。



 でも、森の中は、しーんと静まり返ったままだ。



「どうしようー」


 あたしは、急に不安になってきた。



 どうしよう、このまま聖と会えなかったら……。



 あたしの頭の中に、「遭難」の文字がぐるぐる回った。



 その時だった。


「凛ー!!」


 遠くで、聖の声が聞こえた。


「聖ー!!ここだよ!」


 あたしは、聖に聞こえるように、思いっきり叫んだ。



「凛!!」


 聖が、あたしの声に気づいたのか、こっちに走ってくる足音が近づいて来たかと思うと、聖が目の前に現れた。



「凛ー!!大丈夫か!?」


 聖は、慌ててあたしに駆け寄った。


「う、うん……。良かったぁー、聖に会えて……」


 あたしは、その場にへなへなと座り込んでしまった。


「凛!」


 聖は、あたしを支えるながら、そっと立たせてくれた。



「なかなか戻って来ないから、道に迷っているんじゃないかと思って、あちこち捜してたんだ。ごめん、独りにさせて……」


 聖が、あたしをギュッと抱き締めると、ホッとさせた。


「ううん。あたしの方こそ心配かけてごめんね……」



 必死に捜してくれていたなんて、じーんときてしまう。



「大和達が待ってるから、行こう」



 気を取り直して、あたしと聖は集めた小枝を持って、森を出た。




「渡部君、上手ー!」


 大和達が待ってるからなんて、聖は言ったけど、大和と沙羅は仲良くカレーに入れる野菜を切っていた。


「三浦さんほどじゃないけど」


 沙羅の前だと上がっちゃうなんて言ってたけど、そんなの嘘だよ……。


 大和、あんなに楽しそうにしてるもんー。



 ズキン!!



 2人を見ていたら、胸が締め付けられて苦しくなる。



「あれ?2人とも、遅かったねー」


 大和があたし達に気づいて、野菜を切る手が止まった。


「凛が、道に迷ってて遅くなったー」


「ちょ、ちょっと、聖ー!」

 大和には、知られたくないのにー。



「迷子って…。大丈夫だったのか!?」



 大和が心配そうに、あたしを見た。




 子供の頃、聖大和と3人でカブト虫を取りに森へ入ったけど、あたしだけが道に迷って、2人を見つけている間に、転んで怪我して、聖と大和に心配かけたことがあったから、大和には心配かけたくなかったのにー。


「本当に大丈夫だから……。それより、さっさと作ろう」


 あたしと聖は、自分の仕事に戻る。


 拾って来た小枝に火をつけて、ご飯を炊いている間、ふきこぼれないように注意して見ていると、聖が小枝を持って来た。


「凛、小枝はこれで全部だよ」

「ありがとう。大和達の方は、もうすぐ、出来上がりかなー?」



 あちこちの班から、カレーのいい匂いが、鼻にぷーんと漂ってくる。



「うん。そろそろ、できるんじゃないかな?」


 聖は、鼻をピクピクさせた。


「あはは……!聖、犬いたい」


 あたしは、思わず笑ってしまった。


「美味しそうな匂いだから、つい……」


 聖は、恥ずかしそうに、鼻を隠した。


「聖は、昔から良い匂いがすると鼻をピクピクさせるよね」


「悪かったな」

 聖が、子供みたいにプイッとすねる。


「ごめん!あ、ほら。ご飯もできたし、大和達を呼んでこよう!」


 あたしは、聖を促すと、大和達の方へ歩いていった。



「沙羅ー。どう、できた?」


「あ、凛!今、ちょうどできたところ」



 あたし達が行くと、ちょうどカレーができたところだった。


 早速、できたてのカレーを、みんなで食べることにした。



「美味しい!」


 沙羅が、美味しそうにカレーを頬ばった。



 食べてみると、まろやかさが口に残って本当に美味しい!



「渡部君が、料理上手なんて、知らなかったなー」


 沙羅が、意外な顔で、大和に目をやった。


「三浦さんと一緒に作ったから、美味しくできたんだよ」


「やだなぁー。あたしは、野菜を切っただけだよー」


 沙羅は、照れた顔で、カレーを食べた。


「大和。昔から、料理得意だったもんねー?」


 あたしは、食べるのを止めて、大和の方を見る。


「確かにー。昔、凛の誕生日にケーキも作ったことがあったよなー」


 聖は思い出したように、昔のことを口にした。




 あの時は、サプライズで、大和がケーキを作ってくれたんだった。


あたし以外、みんな大和がケーキを作るのを知っていて、少し形は悪かったけど、嬉しくて泣いたことを覚えている。




「ケーキも作れるなんて、三浦君って、何でもできるんだね」


 沙羅は、尊敬する眼差しで、大和に言った。


「いやー。そんなことないよ」


 そう言っている大和の顔は、嬉しそうだ。


「……」



 何よ、大和ってば、鼻の下伸ばしちゃって!


 あたしは、ムッとしながらカレーを平らげた。







「風呂に入ったら、10時に消灯で時間厳守なー!」


 お風呂の時間になると、先生がみんなに、呼びかけているのが聞こえてきた。


 あたし達のクラスも、順番がきたら、お風呂に入って、後は先生に見つからないように、みんな彼氏の部屋に忍び込んだりしていた。




「喉渇いたなー」


 お風呂から上がると、自販機でジュースを買って、部屋へ戻ろうとした時だった。



 廊下の隅っこに大和がいるこに、気がついた。



「や……ま」


 あたしが、声をかけようとして、ハッとした。



 大和の陰で見えなかったけど、沙羅が大和と何か話していた。


あたしは、2人の会話に、耳を傾けた。



「渡部君。話って何?」


 どうやら、大和が沙羅を呼び出したみたいだ。


「あ、うん。話って言うのは……俺、前から三浦さんのことが好きだったんだ…‥。良かったら、俺と付き合ってくれないかなー?」


 大和が、沙羅に告白をした。



「……!!」


 あたしは、大和の言葉に絶句した。



 時期がきたら告白するって言ってたけどー、宿泊の時が、時期ってわけ……!?



 でも、沙羅からは、今まで大和の話なんて聞いたことがなかったし、断るよねー?



 でも、沙羅もまんざらじゃなさそうだ。



「ごめん、急にー。返事は後でもいいから……。」


「ううん。あたしを渡部君の彼女にして……」


 沙羅が、大和の告白をOKした。



 あたしは、ショックで、頭の中が真っ白になる。



「本当に、いいのか?」


 大和は、信じられない顔で、沙羅を見た。


「最初は、渡部君ってチャラい人かなと思っていたけど、今日、一緒にいてわかったの……。本当は、頼れる人なんだなってー。だから……」


「三浦さんー!」


 大和は、思わず沙羅を抱き締めた。




 次第に、あたしの目には、涙が溢れて2人がぼやけた。


「凛?こんな所で何してるの」


 いつの間にか、聖が自販機の前に立っていた。


「聖……」


 あたしは、慌てて涙を拭う。


「泣いてるのか?」


 聖が、驚いた顔で、あたしの顔を覗き込んだ。


「何でもないの……」


「何でもないって顔かよー。あ……」


 聖は大和達に気づいたらしく、呆然とした顔で2人を見た。


「何だよ、大和の奴……。いつの間に三浦さんと……」


 聖は、一瞬言葉を詰まらせた。


「……大和と沙羅……つき合うんだって……」


 あたしは、その場に立っていられず、身体がよろめいた。


「凛、大丈夫か!?」


 聖は慌てて、あたしの身体を支えてくれた。


「あーあ。こんなにショックなら告白しておけばよかったかな……」


「……」


「でも、大和が幸せなら仕方がないよね……」


 あたしは、ただ泣じゃくることしかできなかった。

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