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側妃って幸せですか?  作者: 岩骨
第五章 新婚生活と魔法学院
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#98.愛妾の集い

「妾の集いだった?」

「はい」


 今晩は抱擁されたあと何故かソファーに連れて行かれ、お膝の上に座らされている私です。後ろから抱き締められキスをされるのはむず痒い気もしますが、結局受け入れてしまうのですから私も私です。


「成る程、エリアスが妙に含みのあるような言い方で「若い侍女だけ」と言っていたのはそういう意味だったのか」


 ですね。男子寮限定なのも当然と言えば当然です。


「それで? 妾の集いでクリスはどうしたのだ? そうと分かって直ぐに退散したのか?」

「え? いいえ。普通にお茶会をしてから帰って来ました」


 何をしたかと問われれば普通のお茶会でしたけど、お喋りの内容がとっても赤裸々で普通ではありませんでしたけど。


「……まさか、愛妾だと認めてしまったわけではないだろうな?」


 うっ。


「認めてはいませんけど、そう思われてしまって……」

「きっぱり否定すれば良いだろう! クリスは側妃だが愛妾ではない!」


 怒らないで下さい!


「最初から分かっていたら否定出来ましたけど、向こうは初めからこっちをそうだと思って見ているのですから躊躇しただけで確信を持たれてしまっただけです。

 それにあれは伝統的だってクラウド様も仰っていたではないですか。ちゃんと調べて下さらないで送り出したからいけないのです」


 まあそれだけが理由ではありませんけどね。






「妾の集い?」


 驚いて言われた言葉をそのまま返してしまいました。


「そうだよぉ。貴女もそうなのでしょう?」

「え? 私は……」


 当然側妃と答えるわけにも行きませんが……ちょっと話を訊いてみたいです。


「隠さないで良いわ。皆同じなのだから」

「あ! 私は違いますよ。ヨーゼフ様は私にそういことはなさいません」

「シャーナは私が引き込んだんだよぉ。でもヨーゼフ様は好きなんでしょう?」


 シャーナと呼ばれた黄緑色の髪をした小柄で少しぽっちゃりした唯一お仕着せを着た侍女さんは、俯いて顔を赤くしています。いじらしくて可愛いですね。


「ここで隠すことはありませんわシャーナさん。皆貴女の恋を応援しているのですから」

「そうですね。妻は無理かもしれませんが、妾として愛でて頂けるよう応援しています」


 ……一度の会合で随分と打ち解けているのですね。


「男なんて裸で迫れば誰だって落ちるわよ。そして初めてを奪ってしまえばこっちのモノよ」

「実際にそうなったジョアンナが言うと説得力が違うねぇ」

「娼館に来る男性と上位貴族の男性と同じにはならないのでは?」


 娼館?


「結局男は男よ。私達がその証拠じゃない。15歳で二人も囲っているオルトラン様の妾のカマラがそんなことを言うわけ?」

「いえ、オルトラン様ではなくて、上位貴族の中には初めての女性を傷付けないように手解きを受ける方もいると聞きますし」


 手解き? ……クラウド様も受けたということでしょうか? うーん。手解き程度で済む上手さではない気がします。ほぼ毎回意識を保っていられないのですから。


「結局その講師に初めてをあげてしまうのよ。貴族の愛妾はそういうケースが多いと聞くわ」

「ジョアンナがそのケースでしょう?」


 嫌な話を聞いてしまいました。いえ、クラウド様が今愛妾を囲っている可能性は皆無ですが……別にクラウド様の初めてどうのこうのでは無くて、そう思い込んでいたから違うかもしれない可能性に気付いてシュックだったのですけどね。

 ああ、考えてみるとデビュタントの時と同じです。私は「知らない」のが嫌なんですね。


「座ったらぁ」

「え? あ、はい」


 黒髪おさげの女性に言われ私は空いている席に着きました。


「じゃあ、自己紹介ね。私はイリーナ。エリアス・ビルガー様の妾。宜しくねぇ」

「ジョアンナよ。カイザール・ベルノッティ様の妾よ」


 会話の流れから娼婦をしていたと思われるジョアンナ様のお相手がカイザール様ですか? イメージに合いませんね。カイザール様は本当になよっとしている方なので娼館と言うのがイメージに合わないです。


「シャーナ・クライフアンです。クライフアンの分家の庶子でヨーゼフ様とは一応親戚です。先程申し上げた通り妾ではなくただの侍女です」

「カマラです。オルトラン・ヘイブス様の妾をしています」

「ソアラ・ラッシュです。同じくオルトラン様の妾です」


 皆躊躇なく自分を妾だと称しました。ここはそういう場と言えば確かにそうですが……上位貴族の妾というのは誇りのある立場なのでしょうか?


「クリスティアーナ・ボトフです」


 そこで言葉を切るとジョアンナ様に睨まれてしまいました。


「貴族がそういうことを言い難いのは分かっているわ。でも皆がはっきり言っているのに貴女は逃げるわけ?」

「それにぃ、ここでの話はここだけの話。それがこのお茶会の伝統なんだぁ。皆宜しくねぇ」


 ……完全に逃げ道を塞がれてしまいました。


「クラウド様の妾、とは言えないのが現状です。とても表現し難い関係ですね。侍女の仕事もしていますし」


 嘘は言っていませんよ?


「ふーん。身体の関係は?」


 思い切り踏み込みますねジョアンナ様。いえ、全員が興味津々のようです。

 ただ、私が訊きたいのは正にそのことですし……諦めますか。どう話しても真実以外は疑いを掛けられそうですし、最悪準正妃であることがバレなければ良いのです。


「あります」


 皆の顔が輝きました……失敗でしょうか?


「じゃあ妾ではないの?」

「いえ、本当の愛妾は後宮に入らねばならないのです。だからこのことは是非ともご内密にお願い致します」


 誤魔化されてくれますかね?


「分かったぁ。良いよぉ。ねぇ皆も良いでしょう?」

「はい。言われてみれば当たり前ですね。その為の後宮なのですから」

「大変なんですね王族って」


 上手くいったようです。皆の目が同情的になりました。良かったです。


「ジョアンナも。良いでしょう?」

「条件があるわ?」


 え? 条件?


「ついこの間まで娼館で散々やらされてウンザリしていたのよ。そういう話し方。だから、畏まった話し方はここではしないで頂戴」

「はい。分かりました」


 明るい調子で返事をすると、妖艶な魅力が溢れるジョアンナ様が私に向かってウィンクしました。……何故か別の意図を感じたのは気のせいでしょうか?


「それで? クラウド様ってどんな感じぃ? 変なことされたりする?」


 その後、根掘り葉掘り(主に、というか、大半ベッドの上の)クラウド様のことを聞き出され、同時に上位貴族令息達の不可思議な性癖について聞かされた私でした。縛られるのは兎も角、縛るって……。


 収穫も有りましたよ。手解きの話もそうですが――――






「一応口止めには成功したわけか」

「はい。たぶん大丈夫だと思います」


 あとは信じるだけです。


「それにしても迂闊だな。逃げようと思えば逃げられただろう?」


 まあ最初からその積もりなら逃げられたと思いますが、私が彼女達とお話したいことがあったわけですからそれにはコチラの話をするしかありません。


「でもお陰で悩みが一つ解決しました」

「ん? それで今日は私を拒否しなかったのか」


 え? 拒否?


「一度も拒否した覚えはないのですけど」


 勿論ツキモノの日は無理ですから拒否しますが、事前に言って置けばクラウド様が誘って来ないので拒否したことは一度もありません。


「クリスは毎晩最初のキスが終わるまで硬い。今夜は全く抵抗無く受け入れてくれた。だからこうして語らいの時間を持っているのだ」


 クラウド様それ、


「逆ではないのですか? 拒否されないならそのまま突入すれば良いと思いますけど、拒否されたら話し合ってそれを解いた方が早いと思いますよ」

「クリスが話してくれなかったのだろう?」

「何かしら疑問があるなら訊いて下さい。訊かれれば答えられても、自分から話すのは勇気がいることもあるのです」

「……分かった」


 なんだかんだで15歳ですね。私が訊く立場であったことを見逃していますよクラウド様。


「そんなことよりクリス。悩みとは何だったのだ?」

「クラウド様が…………上手過ぎる気がして」


 うわぁ。恥ずかしい。座って後ろから抱き締められている状態なので、幸い顔は見えませんか……。


「それは詰まり――――」


 ええ?


「私を疑っていたということか?」


 いとも簡単に身体の向きを反転させられ、クラウド様対面するようにお膝に股がって座らされた私。右手で顎を持たれ瞳を覗き込まれ左手はぐるりと私の左腰まで回っていて逃げられないようロックされています。完全に捕縛されてしまいました。


「ええと、そのぉ……私は初めてで全然何も出来ないのにクラウド様は凄く上手に私を…………夢中にさせるし、もしかしたらクラウド様は初めてではなかったのかと思って。でも聞きました。上位貴族の男性は初めての女性を傷付けないように手解きを受ける習慣があるのですよね?」


 ああ。恥ずかしい。これでは私がクラウド様の初めての人に成りたかったみたいです。


「確かに手解きを受けたが……クリスは私がそれで君を裏切ったと思ったわけだな?」


 クラウド様の手と指に力が入り、顎も腰も更にガッチリと固められました。そしてその赤い瞳には確かに怒りが宿っています。怒るのは解りますがクラウド様……手解きは受けたのですね。


「逆です。裏切ってないと思ったから悩みが解消したのです。それに、手解きを受ける習慣があることは知ったのは今日です。私が悩んだのは、クラウド様が私を何度も……私の意識を何度も飛ばさせるぐらい上手だったからです」


 うぅ。恥ずかしい。顎はロックされていますが目は合わせられません。間違いなく今の私の顔は真っ赤でしょう。


「何故それで悩みが解消したのだ?」


 そこまで追及しますか? せめてベッドの上なら……。


「男女には相性があるそうです。上手い下手よりそちらの方が大事だと、お妾さんの一人が言っていました」

「相性?」


 ああもう!


「たぶん私にはクラウド様が合っているのです! 凄く! だからクラウド様が凄く上手だと感じたのだと思います!」


 ガッチリと固められた身体を身悶えさせる私。恥ずかしさのゲージがあったらとっくに振り切れて壊れていますね。


 なんとか気持ちを落ち着けてクラウド様の目を見ると穏やかな光がそこに在りました。ひと安心です。


「納得して下さいました?」

「ああ。納得した。だが――――私を疑ったことに変わりはないな」


 うぅ。なんか凄く黒い笑みを向けられました。


「ご免なさい」


 前世の記憶が悪いのです。比較出来なければ悩むことは無かったと思います。


「いや、許さない。罰を与える」


 えええ!


「罰ですか?」


 なんですかその舐め廻すような目は。何か凄くイヤらしいことを考えてませんか? イリーナ様みたいに縛られるのは兎も角ジョアンナ様みたいに縛るのは無理ですよ?


「暫く一緒に風呂に入って貰う」


 罰がレイフィーラ様と被ってますよクラウド様。






2015年11月中は毎日零時と十二時に更新します。

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