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側妃って幸せですか?  作者: 岩骨
第一章 侍女見習い
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#20.嫡子認定

 お姉様とリシュタリカ様はあの日以降頻繁にダンスでパートナーを組んでいます。打ち解けたとは言えないようですが、お姉様が孤立するような状況は無くなりました。まあ、リシュタリカ様達以外のクラスメイトとは作戦前から近づいていたので、孤立は解消傾向にあったのですけどね。

 それはそれで良かったのですが、どうやらリシュタリカ様とリーレイヌ様が決裂したようでして……なんと今度はリシュタリカ様が孤立状態にあるようですね。

 最初から浮く要素の強いリシュタリカ様ですから、少しバランスが崩れればその可能性は充分にあったので納得と言えば納得ですが……。


 ついでと言わんばかりにリーレイヌ様達と他のクラスメイトも今一つギクシャクしていますし、更には、逆にリシュタリカ様とクラスメイトとの間を取り持つような状態にあるお姉様。どうにも巧くいかないモノですね。もう少し仲良くしようとか思わないのでしょうか?

 まあリーレイヌ様達に関しては諦めました。どうやら、虎の威を借る狐で、リシュタリカ様の見えない所でクラスメイトに横柄な態度を取っていたようで。何処にでも居るんですねそういう人って……。


 余り出しゃばっても良くないですし、今のところお姉様に大きな負担は掛かっていませんので、牡丹組に関しては少し様子を見ることにしましょう。どうせ新年からは薔薇組と統合されますしね。


 え? どうして統合?


 例年よりは少し多く残っているそうですが、夏至休暇までで10人、夏至休暇で9人、それ以降に1人辞めています。牡丹組も薔薇組も半分までは減っていませんが、今は合わせて30人ですので、新年からは一クラスです。まあ私は人数に入っていませんけどね。






 そんな感じでお姉様の問題が一段落し少しの平穏を取り戻した私は、今レイフィーラ様付きの侍女として晩餐会場にいます。今日の晩餐会を題するなら「王太子と妻と子の集い」でしょうか?

 詰まり出席者は、王太子ジークフリート殿下を中心に、王太子妃レイテシア様。その子供のお三方。側妃のメリザント様とその長男のウィリアム様。そして愛妾のモイラ様とその長男ベニート様。以上九名です。


 最初は全員と満遍なく話していたジークフリート様ですが、時が経つにつれてレイテシア様とクラウド様そしてウィリアム様辺りとしか話さなくなりました。

 まあ、席順から言って末席のモイラ様とベニート様とは話し難いですし、キーセ様とレイフィーラ様はお二人でお喋りしていますから仕方がないと言えば仕方がないのですが……お隣に座っているのにウィリアム様はジークフリート様とお話していますので、メリザント様がお一人様状態ですね。皆で一緒に食事しているのに……。

 ジークフリート様も気付いてはいるのでしょう。何度かチラッと他の方にも目は向けていますが、実際に話し掛けるには至りません。気に掛けてはいるのですから、疎んでいるわけではないと思いますが、どういう心理状態なのでしょうか?


 因みにジークフリート様は髪が水色で瞳が赤褐色です。色彩は全く異なりますが、顔立ちとパーツはクラウド様とそっくりで、父子であることを感じさせるイケメンです。但し、決してキラキラ王子様という雰囲気ではありませんね。雰囲気はどちらかと言えばウィリアム様に近いです。


「そう言えばクラウド。お前が恋をしたと聞いたが?」


 え? 男親がそんな話をするのですか? それを話題にするのは普通母親だと思いますよ?


「父上まで止めて頂きたい。パトリシア様方に散々話しました」


 うんざりと言った顔のクラウド様です。ソフィア様の取り巻きのお三方は本当にバイタリティーがある方々ですからね。分かります。


「“嫡子”であるクラウドの恋愛はある種の内政問題だ。国を統べる者として把握しておく必要があるだろう?」


 ジークフリート様は明らかに“嫡子”を強調しました。どうやら今日の本題はこれのようです。


 それに反応して、メリザント様がクラウド様を睨むような目付きで見ています。少しあからさま過ぎませんか?

 幸いウィリアム様は睨むようなことはしていないのでそこまで険悪な雰囲気はありませんね。と言うか、ウィリアム様は相変わらず胡散臭いあの笑顔を浮かべています。

 私が「一度止めてみれば?」と言ったあのあと少しだけ止めている期間があったのですが、また直ぐに元の胡散臭い笑みをデフォルトにしていました。

 何故そうなったのか心理変化の過程を訊いてみたいですが、接点が少ないので無理です。


「大袈裟です。まだ妃に迎えると言った覚えはありません」

「“まだ”ねぇ」


 息子の言葉尻を捕らえてどこか嬉しそうに指摘したのはレイテシア様です。からかってますね?


「母上。戯れはお止め下さい」

「あら、私は真剣よ? だって未来の義娘むすめはちゃんと見極めなくてはならないもの」


 ん? 何故今レイテシア様は私の方を見て微笑まれたのでしょうか? あ、勘違いですね。レイフィーラ様を見たのでしょう。


「……もう良いです勝手にして下さい」


 少し感情的になっていたクラウド様は、いつもの無愛想な表情に戻りました。

 やっぱり反抗期なのでしょうね。クラウド様はレイフィーラ様とキーセ様になら笑い掛けることが少しだけ有りますが、ご両親に対しては笑顔を見せません。安定の残念イケメンです。少し笑うだけで本当に素敵な王子様になるだけに、残念感倍増です。


 それにしても、クラウド様はお相手が居ることを一切否定しませんでした。下世話ですがどんな方なのか気になります。きっと見目麗しい方なのでしょうね。そうでなければその方がちょっと可哀想になってしまいますし。

 え? だってクラウド様みたいな美形の横に並ぶんですよ? 自分の容姿に自信が無い方でなければ惨めな気にさせられます。女性の、特に貴族女性の美への評価は厳しいですしね。


 イケメンは 並び歩くより 観てたのし (字あまり)


 晩餐会はその後表面上和やかに進みましたが、ジークフリート殿下は度々クラウド様に対して「世継ぎ」や「次期王太子」又は「嫡子」といった言葉を使ってその地位を明確化させていました。今回の晩餐はそういう意図で開かれたのでしょう。

 9歳とは少し早すぎる気もしますが、魔才値が相当高いクラウド様は剣も学問も優秀だそうで、実際頭も良いですからね。嫡子扱いが問題になることは無いでしょう。まあメリザント様のご実家のルセデイア侯爵家が異を唱える可能性はありますが、ルダーツとの政略結婚を考えれば表立って反対するのは難しい筈です。結論として同盟に反対しなければなりませんからね。


 問題になる可能性が一番高いのはメリザント様ご自身の動きです。多少なりとも警戒の必要があるのですが……。

 うーん。晩餐中メリザント様はずっとお一人様状態で、ジークフリート様の発言に反応はしていたのですがウィリアム様とは到頭一度も会話をなさいませんでした。喧嘩でもしましたかね?


 ウィリアム様ともですが、メリザント様ともあまり接点がありませんので、お二人が普段どのように接しているかは分かりません。しかしこういった公に近い場では“王族らしい”普通の母子として接していたように思うのですが……。

 お取り巻きのお三方とは違って、正妻とも距離のあるメリザント様ですからね。なんか凄く嫌な感じです。だからと言って、メリザント様の味方をする気には成れないのは何故でしょうね?


 側妃という立場の中途半端さ感じた晩餐会でした。





次回 2015/09/30 7時更新予定です。


月末一斉更新!

2015/09/30 四話更新です。なんとなくまたやってみたくなりました。




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