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側妃って幸せですか?  作者: 岩骨
序章 出会いそして~
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#1.変わり始めた運命

乙女ゲームはほぼ未経験なので不自然な点が有ったら指摘して頂ければ幸いです。素人ですので温かい目で見て下さい。


乙女ゲーム開始までかなり時間が掛かりますのでご注意下さい。

 さあ、出番だぜお嬢ちゃん。


 今度のイベントは避けられねぇからな。ま、精々上手くやんな。万が一にも運命を受け入れたりして俺を落胆させないでくれよ? 俺は俺が楽しむ為にワザワザ面倒な事をしてるんだから。


 あっちは随分と前から盛んに動いてたが、お嬢ちゃんはチョピット動いただけだった。あれだけじゃ力を預けた甲斐が無いぜ?




 ・・・




 成る程それを選んだか。まあ良い合格だ。ただ油断はするなよ?


 ほら、もう一つの運命が扉を開ける。


 ああ、この先暫くは自分で決めて自分で進め。俺は手を出さないからその積もりでいろよ?


 言われなくともそうするだろうがな。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 西の大陸、ゴラ大陸の西端に位置するセルドア王国。二本の大河によって形成された広大で肥沃な平野を中心に広がるその国は、「西の盟主」とも称される世界でも五指に入る大国である。温暖な気候故の高い食料生産力を背景に、身分に囚われない騎士育成制度が確立されており、国費で運営する魔法学院で優れた魔術士、魔法戦士を育成している。単純な総兵力という意味では世界一と言っても過言ではない国だ。東に位置するルギスタン帝国とは国境で小競り合いを続けているものの、国土の大半で人々は平和な暮らしを営んでいる。


 そんなセルドア王国の北の国境には大陸西部を南北に分断するような巨大な山脈、ルーゼア山脈が聳えている。プロローグの舞台は、その西端の山裾に存在する巨大な要塞、ゴルゼア要塞である。


 ルダーツ王国からセルドア王国への侵攻を阻むゴルゼア要塞の内部、中心付近に存在する堅牢なこの屋敷には今、王国が誇る最強騎士団の鎧を纏った屈強な男達によって万全な警備が敷かれている。軍事施設内故に装飾品の少ないこの屋敷。しかし、その中でもこの部屋はやや少女趣味な調度品が並んでいる。そんな一室の寝台で寝息をたてている一人の少女。少女のその愛らしい顔が常に苦しそうに歪んでいるのは気のせいではない。なぜなら彼女は今現在熱病に侵されているからだ。


 灰色のフワッとした髪と王族に頻繁に見られる赤褐色の瞳を持つ彼女の名は、レイフィーラ・デュマ・セルドアス。紛うことなきセルドア王国の第一王女である。今は熱病で歪んでしまっているその顔に笑みが浮かべば、その様正に天使。しかしながら、万人を魅了するようなその笑顔が永遠に失われ兼ねない事態に陥ってしまっている。


 事の起こり四日前。夏至の休暇中に長男と長女を連れて里帰りをした王女の母、王太子妃レイテシア・デュマ・セルドアスが護衛の一団と共に帰路についた三日後の出来事だ。

 ルダーツ王国の王女でもある彼女は、滞在した宿でこんな報告を受けた。「侍女の1人が熱病に侵された」という、まあ珍しくも無い報告だ。医師に診せたところ「普通の風邪」という診断であった為、一日だけ滞在を延ばし経過を見ていたが回復の兆しがない。「しょうがないもう一日」とも思ったレイテシアだが、彼女には気がかりがあった。人見知りで父親にすら懐いていない次男のキーセ・デュマ・セルドアスだ。今回は長男を連れて来た為王宮に置いて来た、自ら腹を痛めて生んだ二人目の男の子。既に三週間以上顔を見ていない三歳の息子の心配をしない親など滅多にいない。


 故に彼女は決断する。熱病の侍女に近衛騎士を1人つけて出立するという決断を。


 侍女を置いて出発したその日の夕方、ゴルゼア要塞に到着し一休みした王太子妃に又もや報告が入った。それは、「もう一人侍女が熱病に罹った」というモノだ。元々王宮から連れて来た侍女は5人。中2人が病気では、暫くここに滞在するしかない。彼女は夫そっくりな色彩と顔立ちの息子の顔を見るのが数日遅れる事を覚悟し「仕方がないわね。数日の辛抱よ」と侍女に告げ、碌に食事も摂らずに寝台に入った。


 しかし翌朝、事態は更に悪化していた。「もう2人侍女が倒れまして、レイフィーラ様も────」そう告げた最後の1人となった侍女の言葉にレイテシアは耳を疑った。当然だろう。子供故かレイフィーラはかなりの重体で、見るからに衰弱していると言うのだ。加えて、侍女1人では娘1人の看病も大変な上に患者はここに4人も居る。彼女の気が遠くなったのは仕方がないことである。

 緊急事態とはいえ、若い男である騎士に自分や王女そして貴族の子女である侍女の身の回りの世話をさせるのは後々色々と問題がある。だが、一団の長として、または王太子妃としてそこで取り乱すわけにはいかなかったレイテシアは護衛騎士の隊長にこう命令した。


「近隣より身元がしっかりした女性を4,5名。いいえ、出来れば10名程集めて下さい」


 そうして集められた女性の中に彼女が居た。まだ8歳の彼女が。






 三つ年下、いや、厳密には四つ年下の灰色の髪の少女の苦しそうな顔を心配そうな顔で覗き込んでいる8歳の少女が居る。背中まで伸ばした細く滑らかな白金の髪を一つに結わいその上から布を被った彼女は、更に口と鼻も布で覆い隠している。さながら手術中の医師の様に。ただ、目元以外の顔のパーツは見えていない今の彼女しか見たことがないとしても美少女だと判断しない者はまずいない。何故ならば、彼女は8歳にして母の「絶世の美女」の気配オーラを受け継いでいるからだ。


 天蓋の内に入り寝台に半身を預けて王女の額にのせられた布に手を伸ばす少女。


「もう暖まっちゃいましたね」


 生温かくなった布を手に取り天蓋を出た彼女は、寝台の近くに置かれた机の上で作業を始める。机の上に置かれた桶に水を“満たし”それを“冷やして”布を水に浸け搾って王女の額へ。ここ二日間やりなれた手順だ。水を“満たす”のは毎回ではないけれど、数度となく繰り返している。実はこの作業、彼女の家族以外王族ぐらいしか繰り返しやることは出来ない。


 水出す。モノを冷やす。


 どちらも“生活魔法”に属するモノで、この世界では半数の人が使える簡単な魔法だ。しかし、一日でここまで繰り返し使用出来るのは彼女の膨大な魔力量故である。


 王女の額に冷えた布を優しく乗せた彼女は、天蓋を出ると口と頭を覆った布を乱雑に取り去った。そして部屋に備えられていた姿見の前に立つ。少し乱れた髪を整えてから彼女は呟いた。


「サラサラなのは良いけど、癖が付かないから髪型が変えられないのが欠点ですね」


 と贅沢な悩みを。


「本物のお姫様って本当に可愛いです。こんな可愛い友達が出来たら……うん。自慢しちゃいます」


 と自分の容姿をマルッと無視した願望を。


「よし!! 管理徹底です。今更お父様もお母様も気味悪がったりしないから前世の知識フル活用です。インフルエンザ……そうじゃなくても感染症なのは間違いないです。隔離と衛生管理をしましょう」


 と周囲の人間には全く理解出来ないことを。


 クリスティアーナが既に提案している隔離と衛生管理。それを如何にして徹底させるか、大人達をどう説得するか考えながら、廊下に続く扉に近付いて行く彼女。そして――――


 運命の扉が開いた。





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