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側妃って幸せですか?  作者: 岩骨
第九章 暗躍する王子
134/219

#133.腹違いの兄弟と配役

クラウド視点です

「――――が? 間違いないのか」

「間違いないとは言えませんが、かなり怪しいです」


 ティアまで追い出して何の話かと思いきやまさかこんな話とはな。


「今のところ証拠は見付かっていないのだろう」

「深夜に動いていたのは事実です。家が家ですし、元々妙な動きをしていたのですからこれが狙いだったとしても不思議ではありません。あの女を上手く隠れ蓑に利用したのでしょう」

「あの女が私を狙うよう指示されていたのは間違いない。利用したとしても偶然だろう?」

「ええ。偶然ですが舞い込んだ機会を逃さず計画したのでしょう。まあ実際はダミーを掴ませるだけで済むでしょうが」


 都合良く利用したということか。なんにしても、ある程度は想定しているとは言え、実際起こるとするとやはり影響は大きいだろうな。


「ん? そうなると姉もか?」

「姉は無関係でしょう。兄上の婚約者候補として名が挙がるようになってからはそれこそ四六時中監視が付いているようなモノだ。いつから計画されていたかによりますが、姉が関わっていたらもっと早くことが明らかになった筈です」

「しかし姉の方が動きが早かった。計画に狂いが生じたら強引に動く可能性は否定出来ない」


 最初からその積もりだったとは考え難いが、後付けで指示を出すことは充分に考えられる。姉の方も警戒を怠るわけにはいかないだろう。


「弟すら知らない可能性も低くないですから、そう考えると、本当に只偶然出来た状況を利用する積もりなのかもしれません」


 元々計画していたのではなく只の思い付きという可能性もあるということか。


「だとしたら、家中にも反対する者が居るかもしれんな」

「しかし兄上としてもやぶ蛇は御免でしょう? 私も下手に突つくのは避けたい。上位貴族なんか叩けば埃が出るのが大半でしょうし、今の情勢はそんなことをやっている状況ではない」


 確かに王家と上位貴族家が揉めるような事態は避けたいが、


「ルダーツは一枚だが、ルギスタンもゴラもハイテルダルも皆同じように派閥争いをしている。飽くまで正妃争いで、跡目で揉めているわけではないセルドアは楽な方だ。なら多少の衝突は覚悟の上で踏み込む必要もある。ことが起こってからでは遅い」


 今がその時かどうかまだ判断する段階には至っていないだろうがな。


「泳がすのも手では?」


 様子を見るか。向こうにも期限があるし、監視するにしてもそう長い時間にはならない。確かに有効な手ではあるな。


「そうだな。監視を強化して、ダミーを用意しろ。詳細はウィリアムに一任する。しっかり守れ」

「……私を信用して良いのですか兄上。私が奴らと手を組んでいるかもしれませんよ?」


 ふっ。ひねくれた奴だ。


「笑いますか?」

「お前がその情報を掴んだのは彼女の為だろう? 解放する口実が欲しかった。違うか?」


 そんな回りくどい真似をしなくても、正面からぶつかって行けばことが済んだ可能性は充分ある。まあ、私やティアを頼ることが前提だがな。


「……だとしたら余計に警戒が必要でしょう。私が裏切る可能性も充分出てくる」


 否定はしないのだな。


「既に側妃であることは知らないが、クリスと私の関係を彼女は知っている。クリス本人が明かしたからだ。要するに彼女はクリスに信用されている。

 そして、恐らく彼女はもう奴から離れている。こちらに協力する可能性が高い」


 あ! そう言えば確実に協力者になる人物がいたな。


「……クリスと彼女が親しい?」

「ああ」


 何故私を睨み付ける。


「だとしたら、こんな回りくどい真似は必要無かったではないですか」

「私やクリスを頼らないお前が悪い。クリスも出席者の一人だと最初に説明した時言った筈だ。なのに自分一人でやろうとしたお前が悪い」


 てっきりウィリアムは私に話さないでことを進める積もりだと思っていたが、ただ単にクリスと彼女の関係に気付いていなかっただけか。


「……クリスと彼女が親しいと知っているなら一言言って――――」

「お前が何を考えているかなど私は知らない。推測は出来ても確信は持てないからな。兄弟でそんなことをやりたくもないし、お前から何も言って来ない限り協力する義理もないだろう?」

「だからって放って置くことは……」

「そう恨むな。結果的に収穫はあったのだ。それより、確実に向こうの味方にはならない人間から話を訊いて来い」


 偶然とは恐ろしいな。結果的に彼女を救ったのもクリスだ。今の今まで黙っていたことも含めて。


「向こうの味方にはならない人間?」

「ああ。奴の息子の母親だ」

「は!?」






「ものの見事にシルヴィアンナの言う通りの配役になったな」

「そうですね。杏奈さんの言っていたことの信憑性が増しましたね」


 最近後ろからでも表情が分かるようになったな。今は、少し驚きながらも嬉しげ。といった感じだろう。


「疑っていたのか?」

「簡単に信じられるような話ではありませんから、全く疑っていないと言えば嘘に成ります。でも杏奈さんを信じたい気持ちの方が遥かに強かったです。旦那様は少し疑っていましたよね?」


 幾ら親友の言葉でも、小説の舞台にその登場人物として転生したなんて話は信じられないか。


「まあな。信じろという方が無理がある。だが、これでだいぶ信憑性が増した。「魔劇祭」の配役で誰がどの役になるかなど、こうまで完璧に予言出来るわけがない。逆に言えば、今年の配役は読めるような結果ではない」


 シルヴィアンナが裏に手を回して配役を動かしたのかと勘繰りたくなる程、予告するのは不可能な配役だ。何故なら、


「王様が女王様に変更になっていますからね」


 毎年「魔劇祭」の配役は組毎に二人ずつ選らばれる魔劇祭実行会員の合議によって決定する。故に、誰が何の役をやるかは基本的に発表まで分からない。名前のある登場人物は大半が三年生から選ばれる慣例があるが、王族と上位貴族の子女は一年生でも何かしらやらされることが多い。私も去年はルドア王国の騎士の役をやらされたが、今年はシルヴィアンナの予告通り主役だ。まあこれは全く予想外とは言えないが、


「しかも、シルヴィアンナ本人が予告通り女王役になるとはな」


 イダーツ王国の王が女王に変更になり、その役に就くのがシルヴィアンナ。これが二ヶ月程前彼女が予告したことだ。変更になり就いたと言うより、シルヴィアンナに相応しい役を与える為に役柄の方を変更したと見た方が正確だがな。


「それからイダーツ王国のお姫様役にマリア様かサリサ様と言っていました。これもぴったりでしたね」


 いや、それを当てたのも確かに驚きだが、


「それよりルンバートだろう。ルドア王国の“姫”にルンバートなんて配役は驚愕だ」


 幾ら何でも主役級の姫役にルンバートを配役するのは極端だ。


「え? そうですか? ギスタの第二王子にウィリアム様ならルドアのお姫様はルンバート様が必然ではないでしょうか?」


 は?


「知らないのですか? 使用人の間でも一年生で一番お似合いの二人だと有名なのですよ?」


 お似合いの二人?


「……男だろ。ルンバートは」

「はい。間違いなく。劇だから良いではないですか。ルンバート様がお綺麗なのは誰が見ても明らかですし」


 ……当然のように肯定されてもな。


「それにしても良くオルトランが選ばれたな。外されるかと思っていたが」

「見栄えが良いですからねオルトラン様は。その変わりイダーツ王子の見せ場は殆どシルヴィアンナ女王様に持って行かれるそうですけど」

「まあ元々イダーツの王子は端役だからな」


 見せ場でもシルヴィアンナを中心に添えるよう脚本を変えたと言うから驚きだ。本当に裏で実行会を動かしたわけではないよな?


「暫く刺繍はお預けになりますね」

「ん? 何故だ? 刺繍用品ならこの間中心区で買って来たのだろう?」


 未だに家紋の刺繍が学院内で流行っているから院内商店では刺繍用品の売り切れが続いているが、街に出れば幾らでも売っている。


「いつお稽古するのですか? 夜しかありませんよね?」


 言われてみれば……所詮端役の騎士と、ど真ん中の主役である王子では台詞の量が全く違うしな……。


「私も手伝いますから。頑張って下さい。舞台の上の旦那様を楽しみにしています。それと、全く出来なくなるわけではありませんからそんなに落ち込まないで下さい。時間が短くなるだけです」


 ティアを動けなくする程の時間がないわけか……母上に怒られないように慣れる為には丁度良いかもな。






2015年11月中は毎日零時と十二時に更新します。

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