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側妃って幸せですか?  作者: 岩骨
第七章 マリアと愛妾達
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#118.院生昼餐会

マリア視点です

 オープニングの夜会から嫌な予感はあったけど、やっぱり攻略が上手く進まないわ。まともにイベントが起こるのはオルトランぐらいで、好感度は上がったみたいだけどエリアスさえイベントらしいイベントが起こらない。そもそもゲームのエリアスはもっと俺様な性格でマリアに対しても命令ばかりするキャラだった。いえ、エリアスはだいぶまともだわ。オルトラン以外の他のキャラは、もっと酷い。


 一番酷いのは第一王子。クラウド王子は全く私に興味を示さない。シルヴィアンナは元々マリアを苛めるようなキャラじゃないけれど、頭の良い打算的なキャラだった。正妃エンドで去って行く時も「どうせ負けるからこれ以上争うのは無駄」そんなシーンだったわ。そんな計算高い女が転生者だとしたら、第一王子を誑かしてイベントを潰してても不思議じゃない。いえ、既に王太子なんだから主人公の座を奪ってイベントを終えてしまったのかもしれない。

 そう考えると、第一王子は攻略不可能ということ? ……やってくれたわ。ビルガー家に入る前にゲームだと気付くべきだった。そしたらあの上から目線の物言いをする生意気女の高い鼻をへし折ってやったのに。


 まあ何れにせよ、あんなにわたしに興味がないクラウド王子を落とすなんて不可能だわ。別に思い入れのあるキャラとかじゃないし、逆ハーエンドは諦めた方が利口かもしれない。それに、此処がゲームの設定を変えられる世界だとしたら、それはわたしだって出来るってことよ。なら、第一王子の居ない逆ハーだって充分可能性があるわ。


 そうなると、もっと絞り込んだ方が良いわね。


 まずは全く好みじゃない格闘家体型のヨーゼフ。それから完全に女にしか見えないルンバート。この二人はもう良いわ。どっちもテクニシャンとは思えないし、最初から今一反応が薄かった。丁度良いかもしれないわ。と言うか、シスコンとか気持ち悪いし、男の娘とか意味が解んない。

 逆ハーには出来ればアンドレアスを引き込みたいけれど、そもそも彼は学院に居ない。特別講師として三ヶ月に一度二週間だけ居るって……ゲーム期間は一年しかないのよ。全部合わせても八週間しかないじゃない。元々難しいアンドレアスを八週間で攻略とか絶対無理よ。優しく爽やかな騎士のアンドレアスは一番欲しかったけれど、既婚者を逆ハーレムに引き込むなんて無理だろうし諦めるしかないわ。


 今はあとの四人の好感度を如何に上げるかね。順調なオルトランは良いとして、好感度は上がっているエリアスさえもイベントがちゃんと起きているとは言えない。カイザールもウィリアムもイベントらしいイベントは起きてない。まあまだ授業が始まってから一ヶ月だし、一日一回しか行動出来ないなんて制限もないから、昼と放課後と夕方と夜と行動すれば一日で四人全員好感度を上げることも難しくないわ。


 問題は、カイザールもウィリアムもゲームの攻略法では効果がないことね。

 カイザールはヴァネッサから強引に引き離すのが最初のステップなのに、オープニングの夜会の時カイザールは既に一人で行動してた。ヴァネッサのことは一応気に掛けているようだけど、服従していたゲームの状況からは程遠いわ。ただ、今のところ接触出来さえすれば好感度が上がっている節があるから、今後接触回数を増やせればどうにかなるかもしれない。

 それからウィリアムは裏工作で王太子となることを画策している彼を止めて、正面から第一王子と対峙することを促して行くのがウィリアムの攻略法なのに……もう第一王子が王太子になっているし、ウィリアムもそれを妬んでいる節は無い。でもカイザールと同じで接触出来さえすれば好感度は上がっているようだし、同じクラスのウィリアムはカイザールより簡単な筈ね。

 なんにしてもウィリアムは最優先だわ。オルトランにも劣らない美形なのに女好きではないし、中背で細マッチョで吊り目。ドストライクだわ。一見遊び人に見えて実は一人の女に尽くすなんて最高ね。今はまだクラスメイトの殆んどに向けているあの笑顔を独占出来るなら言うこと無い。甘い笑みでわたしを酔わせて熱い激しい夜を送るのが今から楽しみね。

 でもルンバートにはあの笑みを向けないのはどういう理屈なのかしらね? まあもう少しで院生会室に入れるようになるだろうしそのうち解るかもね。


 それより腹が立つのはシルヴィアンナ。あのあばずれの策略の余波がウィリアム攻略にも回って来てる。しょうがないから第一王子はくれてやるけど、わたしを邪魔した報いは受けて貰うわ。二度も死刑なんて御免だし、慎重に時間を掛けて復讐してやる。


 まあそれはゲームが終わってからでもいいから、今は兎に角接触する回数を増やして好感度を上げるしかないわ。


 ただ個別イベントは滅多に起きないのに、固定イベントは起きるのよね。その証拠が今日の院生昼餐会。学年関係なしに好感度の一番高いキャラが分かる序盤の分岐点。逆ハーエンドには第一王子の好感度が高くないといけないから、ここで第一王子以外が出て来ちゃうと逆ハーエンドは難しかった。


 だから今日こうなったのは第一王子を見限る良い切っ掛け。


「どうしたマリア。考え事か?」

「ごめんなさいお義兄様」


 隣の席から声を掛けられ、考え込んでいたわたしは食事を再開した。

 目の前にあるポタージュはわたしが学院で普段食べている物より質が劣る。でも小作農家の娘だったわたしから考えると手の届かない高級品。この国の貴族と平民はそれぐらい違って当たり前で、わたしも例外では無かった。詰まり、それだけわたしは苦労をして来たということ。なら逆ハーを作る権利ぐらいあって当然よ。


「謝ることはないが、お前には珍しく長いこと黙っていた。何か悩み事でもあるのか?」


 やっぱりエリアスらしくない。マリアを気に掛ける台詞なんて殆んど無かったのに……。


「少し疑問がありまして、いつもは上位貴族と下位貴族と平民で場所が別れているこの大食堂なのに、何故皆バラバラに座っているのですか?」


 それは別にどうでも良いんだけど……スチルは二人しか描かれて無かったから知らなかったけど、同じテーブルにモブが四人も座るなんて邪魔なだけだわ。寄りにもよって一人は子爵令嬢。エリアスにも気後れしないで話掛けるもんだからうざったくてしょうがない。


「この昼餐会は身分、学年問わず交流する為に開かれているのだから当然だろう」


 身分別に分かれてくれれば何人か同時に好感度が上がるかもしれないのに……。


「お義兄様は平民と交流を持つことに抵抗はないのですか?」


 ゲームだったら選民意識の固まりだったエリアスが、今日はそのことに対して一切触れていない。前から気付いていたけど、エリアスもゲームとはキャラが違う。


「学院が実力主義である以上仕方がない。それに、平民だろうと大事にせねばならない者も居る」


 平民だろうと……わたしに向けて言ったわけ? ということは、院生会室に入れるぐらい好感度が上がったのかもしれない。これは良い機会ね。


「お義兄様それは具体的にどなたのことですか?」

「具体的? ……うちの使用人にも平民は居る。お前に付いてるハビッツだって優秀な侍従だが平民だ。公爵騎士も御用商人も大半は平民。そういう奴とは交流を持たざるを得ん」


 ちょっと考えてから答えた。恥ずかしくてわたしの名前は出せなかったようね。普段は俺様なくせして愛しい人には正直に成れないウブな感じはゲームでもあったし、選民意識が高い割には素朴な女が良いとか言うのよね。まあなんにしても好感度が高いのは間違いなさそうね。


「そうですよね。公爵としてやって行くには必要なことでしたわ。話は変わりますけどお義兄様。お願いが一つあるのですけど」

「お願い?」


 一瞬だけ眉間に皺を寄せたエリアスだけど、わたしの話を聞く気はあるようね。


「一度院生会室にお連れして頂けないかと思いまして。養子とは言えわたしも上位貴族の端くれ。ご挨拶の必要があるかと存じますの」


 わたしの要望を聞いて顎に手を置いて考え込むような仕草を見せたエリアスは、数十秒掛けて漸く答えを出した。


「良いだろう。但し仕事はする必要があるぞ」


 仕事? ……そんなの無かったわ。ああ、このモブ達と一緒でゲームでは描かれていない部分ね。まあ良いわ。院生会室に行かなければ始まらないイベントも沢山あるし。


「勿論です。宜しくお願い致しますお義兄様」







2015年11月中は毎日零時と十二時に更新します。

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