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あの日の約束

作者: 花水仙

拙い分ですがよろしくお願いします。


空はどこまでも青く、旅立つのには絶好の日だった。


旅装束に黒い髪をまとめた少女、サヤは砦から森に向かって歩き出した。


「挨拶もなく出てくなんてひどくないか?」


その声に足を止め振り向くと茶色いぼさぼさの髪に体格がよく熊みたいな男、ヴィートが立っていた。


「リコ様には挨拶済ませてます。では失礼します」

「えー。一緒に行こうよ。俺あちこち旅してたし色々お得よ?」


にへらと笑いながら言うヴィートにサヤは深いため息をついた。


「あなたといくとトラブルしかついてこないのでお断りします」


そういうとサヤは再び歩き始めた。

その胸元にはエメラルドのネックレスが光をあびて光っている


「振られたなヴィート」

「うっさいぞ。フェリオ」

「諦めたほうがいいぞ?サヤはあのエメラルドの君しかみちゃいないさ」

「これからの時間はたくさんあるんだから。気長にいくさ」


金茶の髪の優男風なフェリオの発言にヴィートは唸るように呟いた。。


「俺たちもリコには挨拶したし、旅立とうぜ」

「次はどこいくんだ?」

「決まってる!!サヤのいるところだ!!」


ヴィートの言葉にフェリオは軽くため息をつきながら歩き始めた。








大きな湖に映る月が蒼いことから蒼月国と言われるこの国はつい最近まで王国軍と解放軍で紛争があり、先月に解放軍の勝利で終わりを告げた。


蒼月国最後の王となったルキータ王は争い好きで、些細なことかで民を殺し、異を唱える臣下は即処刑と言う残虐な王だった。


戦から一月ではまだまだ戦の爪痕は残っているが、徐々に良い方向にすすんでいくだろう。


遠くから聞こえる子供たちの笑い声を聞きながらサヤはぼんやりと湖に視線を向けた。


あの日もこんないい日だったなと過去を思い出す。


兄様がいて幼馴染のリクがいて、湖の側の草むらは子供たちの遊び場だった。

鬼ごっこしたり、花冠作ったり、父達が話してくれる遠征の話や遠い国の話を聞いてはリクと”世界中を旅しよう”と約束をしてた日々。


でも、あの日々はもう戻らない。


父は、王の命に背きその場で処刑され、隣町にお使いででかけてたわたし以外の家族は反逆罪で殺されてしまった。

わたしにも指名手配がかかっていたので、生き延びるために転々と逃げまわった。

数ヶ月経った頃、いつの間にかわたしの指名手配が消え代わりに、リクが王の命であちこちの村を滅ぼしているという噂を聞いた。

わたしはその噂を信じたくなくて、真実が知りたくて知り合った解放軍のリーダーのリコと行動を共にすることにした。


参加して、リクが村を襲うのに遭遇して噂は本当だったのかと絶望しそうになった時気づいた。

襲われた村には人がいなかったのだ。

逃げた村人に話を聞くと襲う前に村人を逃がしてたそうだ。

リクは被害を最小限に抑えるためにあえて討伐に参加してたと知る。

だけどもその後に何度か遭遇したリクの目は冷たく、わたしをみようとはしなかった。

ずっと共に生きてきたからわたしにはその瞳をみて理解してしまった。

リクは王国軍として討たれることを望んでいると・・・。


そして最終決戦の日、リクは王国側として最後まで解放軍の前に立ち塞いだ。

わたしはリコ達を先にすすませ、リクと一騎打ちを望んだ。

幼い頃から共に剣を学び、修行した中だから互いの癖はわかっている。


リクが討たれることを望んでるのは知っている。

そしてその道を選んだ理由も気づいてしまった。

突然消えたわたしの指名手配、調べた結果消えた理由はリクがだった。

詳しいことはわからなかったけどもリクが手をまわしたことだけは確かだった。


だからわたしは決めた。

共に逝こうと。

だからこの一撃一撃が重要であるとお互い睨みあったその時、

皮肉にもあちこちの攻撃で城はボロボロになり、天井が私の上に落ちてきた。

つぶれると思った瞬間、ドンと衝撃が走りわたしは壁にぶつかった。


目を開ければそこにはがれきの下敷きになったリクがいた。


「リク!?」

「サヤ・・。無事・・か・・?」

「どうして、何故助けたのよ!!」

「サヤが僕の気持ちわかったように、僕だってサヤが何を望んでるか気づいてたよ?」

「ならどうして!!」

「僕はサヤには生きていて欲しい・・・。きみの家族を助けることはできなかったから」

「それはあなたのせいではないわ!!それにわたしだってリクには生きててほしい、リクと一緒に旅したい」

「ごめん・・・。でも、これ・・・」


涙をこぼすわたしを見上げリクはエメラルドのペンダントをわたしに差し出した。

この国の古い習慣で子供が生まれたら家紋の入ったペンダントを作る。

そしてそれは遠く離れる大切な人に渡すことで”わたしは常にあなたのそばにいます”と言う意味になる。

わたしは自分のルビーのペンダントを取るとリクの首にかけ、リクのペンダントを受け取った。


「サヤ。生・・き・・・て。僕・・の分まで・・世界を見・・・・・て・・きて」


そう言うとリクの手が落ちた。

わたしは泣きじゃくることしかできなかった・・・・。



あの後、崩壊はひどくなり、わたしはヴィートに担がれて脱出をしたらしい。

あの後の記憶はあまりおぼえてなかった。


正直、今でも気持ちの整理はついてない。

でも、旅をしながらこの気持ちを整理しようと思う。


「行ってきます」


サヤは呟くと湖を後にした。

最後までありがとうございました。

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