003.Love The Things You Hate<食わず嫌い>
Congohトーキョーのメンバーには、好き嫌いが無い。
ユウの自家製納豆を皆朝食では美味しそうに食べているし、卵かけ御飯にも特に違和感を感じていない。
焼き鳥屋ではかなりの珍味であるキンカンを美味しそうに食べるし、塩辛やウニも新鮮なものなら残さずに平らげてしまう。
世界中のジビエ料理や発酵食品に慣れたメンバーは、このようにニホンの食文化にしっかりと適合しているが数少ない例外も存在する。
「なんだ、その出来損ないのパンケーキのようなものは?」
「ああ、鯛焼きです。近所に有名店の暖簾分けが出店したので沢山買ってきました」
「あ〜、それって粒餡が入ってるんだよな……私はパス」
「あれっ、フウさんでも苦手なニホン食材があるんですね」
「いや、食べれない事は無いんだが……豆を甘く煮るという文化が無い土地で育ったからな。
それにあの黒っぽい見た目が苦手でね。以前味見したのもなんか甘味がしつこくて、何か切っ掛けがあれば好きになるとは思うんだが」
「これはそんなに甘過ぎなくて、美味しいよ」
「マリーは先入観が無いから、その点は羨ましいな」
「アンちゃんが食べれるなら、取っておきますけど」
「いや、アンも私と同じで苦手みたいだから、残して置かなくて良いぞ」
「マリー、じゃぁ二人で食べちゃおうか」
「取り分が増えた、ラッキー!」
☆
「あっ、鯛焼きですわね。私の分はありますの?」
「まだたっぷりあるよ。あれっ、アンちゃんって粒餡駄目じゃなかった?」
「ジェラートショップ開店前にニホンの甘味は大分研究しましたから、それ以来餡子も好きになりましたの」
「なんだよ、苦手なのは私だけか……ユウ、気が変わった一枚貰うぞ」
「……」
「あれっ、粒餡ってこんな味だっけ?」
「この鯛焼き屋さんは老舗ですから、大納言と和三盆糖という高級な材料を使ってますからね」
「なんだ、皮も薄くて香ばしいし普通に美味しいじゃないか。
前食べたやつなんか、皮が柔らかくてふやけたパンケーキみたいだったぞ。喰わず嫌いをしていて損した気分だな」
「いや、これは老舗の一本釣りっていう古典的な焼き方ですからね。
こんなに美味しい鯛焼きは、どこでも食べれるものじゃないですよ」
「フウさん、食べ過ぎ」
「いいじゃん、ご近所ならまた買ってくれば」
こうしてCongohトーキョーのメンバーは、ニホンの食文化にどっぷりと浸って行くのであった。
お読みいただきありがとうございます。