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ドレッシングは誰が身にかかる?  作者: ロンギヌス
第一章 はじまりと人間王国編
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第三話 影の力


 歩きながらステータスを確認すると、なんとレベルが上がっていた。魔猪さんのおかげに違いない。伊達にムキムキじゃないんだろうな。


【Name】シェイド

【Race】影人

【称号】<筋肉ハンター>

【Fame】 0

【Karma】-1

【Status】

Lv.3(残振り分けpt:6)

 HP  : 4/4

 MP  :120/120

 STR :1

 VIT :1

 DEX :7

 AGI :4

 INT :12

 MIN :12

 LUC :14

【スキル】

(メイン)

 《銃Lv.4》《視力強化Lv.8》《鍛冶Lv.1》《気配遮断Lv.8》《風属性魔法Lv.3》

 《念力Lv.6》《付与術Lv.1》《錬金術Lv.1》

(サブ)


【加護】

【状態】正常

【所持SP】0


 色々突っ込みどころがあるが、グッと我慢だ。振り分けポイントを全てAGIに投入して10にする。不意打ちを受けたとはいえ、素早さがあればあの突撃も回避できていたかもしれないからだ。ちなみに種族固有スキルもレベルが少し上がっていた。


・闇属性適正ⅩLv.2

・魔の才能Lv.4

・影操作Lv.3



 遠くの緑色が山だと分かるようになったころ、木々はより一層密度を増している。道中にはイノシシの他に野犬が散発的に襲ってくるようになった。レベル上げのために肉薄されるまでは銃を撃ち、犬が自分の体を通り抜けて戸惑っているところを影武器で仕留めるということの繰り返しだ。【野犬の牙】や【野犬の毛皮】、【野犬の肉】が入手できている。【魔猪の牙】も新しくドロップした。ボロボロになった木造の駅舎のような建物を横目に、ついに山の麓を強化した目が捉えた。薄青い光のベールが山の以前と以後を隔てるように揺れている。


 朽ちた教会を出発して6時間ほど経っただろうか、ついにヴェールの下へと辿り着いた。その間にレベルもいくらか上昇した。野犬だけでも50匹以上狩っているのだからさもありなん。食事が必要かとも思ったが、特に空腹感などもない。


 幅自体は短いだろうが、山と街道を隔てるかのように密度の濃い森が目の前に広がる。樹高も10メートルを超えるような立派な木々が、街道だったはずの地面すらその版図に加えている。甘やかな世界はここで終わりだと宣言するかのごとく、優しげな草花は森の向こうには見えない。虻蚊のごとくまとわりついてきた野犬共もこの境界には近づけないのか、静謐とさえ言ってもよい凛とした空気を漂わせる。


【Name】シェイド

【Race】影人

【称号】<筋肉ハンター>,<犬殺し>

【Fame】 0

【Karma】4

【Status】

Lv.6(残振り分けpt:0)

 HP  : 4/4

 MP  :150/150

 STR :1

 VIT :1

 DEX :9

 AGI :12 (+6)

 INT :24 (+9)

 MIN :15

 LUC :18

【スキル】

(メイン)

 《銃Lv.15》《視力強化Lv.25》《鍛冶Lv.1》《気配遮断Lv.25》《風属性魔法Lv.8》

 《念力Lv.18》《付与術Lv.6》《錬金術Lv.1》

(サブ)


【加護】

【状態】正常

【所持SP】6



 振り分けポイントは9ポイント全てをINTに振った。SPとはスキルを新たに習得するのに必要なポイントで、おそらく所持スキルが10レベルになるごとに1加算される。現在習得可能なスキルは、《走力強化》《歩法》《伐採》《片手剣》《爪》《片手斧》《短槍》《解体》《採取》《気配察知》《罠》だ。それぞれ取得に3ポイントかかるようだ。早速《歩法》と《気配察知》を習得した。気配察知は文字通り。イノシシの不意打ちを反省した結果すぐに取ることを決めた。そして、《歩法》。これは字面ではイマイチよく分からないが、なかなかに強力なスキルのようだ。“歩くこと”全般に補正がかかるのだ。緊急回避用のステップも所詮は一歩、武技として存在しているか分からない――というかおそらく個人の技量で行う必要がある――ものだからこそ、それを実現できれば対魔法攻撃への対策になる。そうそう、種族固有のほうはレベル10まで届いていないので割愛する。



 ステータスを確認し、MPが満タンなのを再度確認したところで、いよいよヴェールに触れてみた。目がくらむほどの光が広がる。変化は突然だった。立っていたはずの地面、土が踏み固められただけの簡素な道ではない感触が足裏から伝わってくる。目の前の景色はさらに違う。


 光が収まると、いつのまにか森の中にぽっかりと空いた広場のような場所だ。半径10メートルほどの円には低い草が生え、その外周に木々が林立している。やや傾きつつある陽光はそれでも遮るものなく降り注ぎ、それが故に木々の向こうを見通すことを妨げる。首を巡らし周囲を警戒する。どこから何が襲い掛かってきても対応できるよう、腰を落としていつでも動けるように重心を揺らす。ジリジリと、焦らすように何かの気配が森の奥から感じられる。レベルが足りないのだろう、どこから何が気配を伝えてきているのかまでは分からない。


 出しておいた銃の重み、感じないはずのそれを意識してしまう。汗が垂れ落ちた錯覚が、私の視線を銃に落とさせた。瞬間。左手側から草葉をかき分けるガサリという音と同時に、すさまじいプレッシャーが空間を詰める。勘に従ってその場に伏せるように体勢を落としつつ左を見る。目に映ったのは、黄ばんだ、それでいて触れれば裂けることが否応なく分かるほど鋭い白。そして場違いなほどに柔らかい桜色の細長い肉、その奥には、暗い洞。呑み込まれんほどぽっかりと、貪欲に生きるものを求める闇。紙一重で避けたが、それはつまり紙一重で避けられなかったということでもある。牙こそ逃れたものの、顎下の硬い毛が物理に完全な耐性をもつはずの肉体を擦った。それだけでMPが三割は削られた。まともに受ければ……死。


「なんとォ!」


 ヴァーチャルなはずのリアル過ぎる死の感触、それを気合で押しのけ、咢を縫い付けるように影を突き刺す。カウンターとしてはまずまずのタイミングのその一撃は、しかし意図した通りの結果はもたらさない。体重を膂力でねじ伏せるようなバックステップが咢の先端僅かを切り裂くに止まらせる。強敵だ。


「ッグルルルルルル……」


 悠長とすら言えるくらい確実に起き上った私の視界には、とても巨大な犬がいた。ここまで大きいと犬というのもはばかられるような、体高3メートルはある巨犬。尻尾まで含めれば体長は10メートルを超えるだろう。銃を仕舞う。こいつには豆鉄砲など通じまい。そして同時に付与術で肉体の性能を上げる。詠唱はしない。魔法はイメージだ。詠唱句などイメージを固めるための手段にすぎない。印を切ってもいいし、そもそも考えるだけで発動できる。巨犬も私の体が魔力に包まれるのを察したか、咆哮を上げざまに咢をことさらに突き出して襲い掛かる。


「グルルルルラアアアアアアアア!!!」


 牙が迫る。だが見逃さない、この目はその程度では見逃さない。私は足元の影をそのままに全力で後ろに跳躍した。一瞬後に私がそれまでいた場所を牙ではなく左腕が大気を切り裂くような速さで薙ぎ払われる。咢は中途半端に突き出されこちらまで届かない。腕を剣に変え、巨犬の眼球めがけて斬り下ろすがそれはブラフ、意趣返しとばかりに置いてきたままの影が無防備に晒された前肢の付け根を食い破る!


「ギャゥ!?」

「生の犬肉じゃぁ、やっぱり美味くないな」


 骨までは達しなかったが、それでも血管を傷つける程度はできた。ややえぐれた左腕の付け根からは赤黒い血が止まる様子もなく流れ続ける。普通の生物ならこのまま失血死を狙えるかもしれないが、この巨体だ、そこまで甘いはずもない。たとえ甘くともそんな幕引きを認めるつもりもない。


 巨犬は健気にも傷ついた前肢を庇いながら噛みつきを繰り出す。だが遅い。


「お前は奇襲に失敗した時点で死んでいたんだよ」


 せめて安らかに。


 影が巨犬の全肢を呑み込み、引きずり込む。暴れるが逃さない。全速力で犬の首横に移動し、両手を合わせて斧を形成。斧に鎌鼬の風刃を纏わせ全力の踏み込みとともに首に一閃。地面を捉えた斧の両側に土砂がめくれ上がるようにして盛り上がる。柔らかく空気を含んだ土は、斧に遅れて落ちてきた巨犬の頭を優しく受け止めた。遠くで泣き叫ぶような遠吠えが響いた気がした。




【Name】シェイド

【Race】影人

【称号】<筋肉ハンター>,<巨犬殺し>

【Fame】 0

【Karma】4

【Status】

Lv.18(残振り分けpt:0)

 HP  : 4/4

 MP  :60/315

 STR :2

 VIT :2

 DEX :32 (+16)

 AGI :32 (+6)(+16

 INT :40 (+9)(+4)

 MIN :27

 LUC :32

【スキル】

(メイン)

 《銃Lv.15》《視力強化Lv.35》《鍛冶Lv.1》《気配遮断Lv.28》《風属性魔法Lv.22》

 《念力Lv.20》《付与術Lv.6》《錬金術Lv.1》《歩法Lv.12》《気配察知Lv.15》

(サブ)


【加護】

【状態】正常

【所持SP】9

・闇属性適正ⅩLv.11

・魔の才能Lv.16

・影操作Lv.14


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