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ドレッシングは誰が身にかかる?  作者: ロンギヌス
第一章 はじまりと人間王国編
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第九話 空から降り来る雷槌


「グォアアアアアアアアア!!!!」


 十時の方角から五月蠅い咆哮が聞こえてくる。私はそれを無視し、その咆哮からさらに東側に向かって目を凝らす。視力強化が50を超えたあたりで暗視能力がついたのだが、さすがに数百メートルを見通せるほどではない。カサリという音がすぐ脇で起こる。


「リルー、見つけたな?」


 偵察に行かせていたリルーが戻ってきたのだ。頷くリルーの見据える先、そこに指揮官がいるということだろう。私はその示す先に意識を集中する。街のほうからかなりの速度で東、五月蠅い場所に向かう魔力の気配がする。向かう先は五月蠅い場所、膨大な魔力が渦巻いている場所だろう。そこから五百メートルほど先だろうか、妙な魔力が感じられる。渦巻く魔力に絡みつくように放出された魔力が湧き出る元。その元に向かって貫通力強化・闇属性付加弾を込めた銃口を構える。念力でブレないように固定し、銃に魔力を込め、限界まで引き絞っていた引き金をそっと引いた。


 パァン!


 殺意のこめられた破裂音を伴い必殺の弾丸が粘つくような魔力目掛けて一直線に飛翔する。約一秒ほどの間。その間が終わり、奇妙な魔力は霧散した。





 女は今焦っていた。数は多いが弱々しい魔力が次々に消えていき、その中では飛びぬけて大きい――父と同程度の大きさだった――が潰えた直後。膨大な、感知しただけで怖気が走るような力強い魔力が突如出現した。召喚されたと考えるのが妥当だが、それにしたって強大すぎる。いくら“マーシーの剛槍”と言われた彼女の父であってもこれが相手ではまずい。これほどの強大な魔力を持つものが、まさか常駐型召喚ではないだろう。しかし、たとえ瞬発型召喚であっても街を焼き払うのに十分なのは疑いようがない。ドレスアーマーがガチャガチャと煩い音を立てるのも気にせず全力で走る。そうして目に飛び込んできたのは、男が真っ赤なドラゴンに切りかかる姿だった。援護しなければ。今の父では一合打ち合えれば重畳、それを召喚限界まで持たせることができればこの戦は勝ち。女は魔道書を開き、詠唱する。


「硬く鋭き我が友よ、その身を鎧と化し彼の者を守護し給え――《アダマントアーマー》!」


 呪文がマナを糧に、父親の身を纏うようにアダマンタイト――超硬金属――の鎧となって現れる。それと同時に竜の爪が薙ぎ払われる。アダマンタイトが砕け、しかしその犠牲によって元近衛騎士の命を守りきる。その光景を見届けるまで待つこともなく次の魔法を発現させる。


「大地よ我が願いを聞き届け給え。我はその恵みを与えんことを欲す。沸き立ち、巡れ! 《巡る恵み》(マーシーサーキュレイション)」


 結句の直後、子爵とその娘を大地から立ち上る力強い魔力が包み込む。その力は傷ついた子爵を癒し、さらに二人に付き添うように揺蕩う。


 大男が立ち上がると、竜はグルグルと唸り、口を閉じて鎌首をもたげる。そして挑むように立つ金髪の女と男をともに飲み込まんとする炎の波を吐き出した。二人の顔色が変わり、即座に防御魔法の詠唱にはいる。


「《アイスピラー》!」「《アクアウォール》!」


 氷の柱が男女をまとめて守るように突き出し、その柱を包むように水が覆う。魔法が完成したすぐ後、炎が殺到した。僅かに堪えるが抵抗むなしく魔法の水は蒸発していく。氷の柱を融かしながらそれでも炎は止まらない。柱がせき止めきれなかった波は、ようやく追いついてきた守備隊四十人を炭に変えた。


 魔力を急激に消耗し崩れ落ちるように膝をつく二人。荒い息を吐きながら、流れる汗を気にした風もなく、女は何かを決意したような目をレッドドラゴンに向ける。閉じてしまった魔道書を開き、口を開けたそのとき――小さな破裂音が戦場を走った。その音の余韻が消えたときには竜が動きを止めていた。しかし次の瞬間。剣を杖にようやく立ち上がった男の頭が消えていた。頭があったはずの場所には閉じられた竜の顎。わずかな隙間から赤い液体がドロリと垂れる。その光景をようやく理解したとき、ガディオンの体が倒れ伏した。金色の縦に割れた眼がクラウディアを見据え、嗜虐的に細められた。気付いた時には腹に衝撃を受けて十メートルほどを吹き飛んでいた。尻尾で殴られたのだと理解したときには、女の意識は闇にのまれていった。







 どでかい魔力の近くにいた二つの魔力が消えた。その前に消した奇妙な魔力のほうへ移動しようとしていた私は、リルーに飛び乗り膨大な魔力を避けその後ろ、弱い魔力が蠢いている場所が見える位置まで近づいた。膨大な魔力はゴブリン群れの北側に降り立つと嬲るように蹴散らし始めている。その混乱に合わせて他の集団に向けて魔法で闇を纏わせる。炎の明かりを遮るように出来た闇が作り出した影、それを操作して全ての魔物たちを一撃の下に殲滅する。そしてステータスを開き、レベルアップで得たポイント全てをINTに注ぎ込む。炎に照らされたドラゴンをどうにかするには、それが最善だと判断したのだ。


 INTは73まで上がったが、それでも通じる保証はない。別に私が攻撃をしかける理由はない。ないが……クラウディア女史を食い殺すなどというもったいないことを許すのも気が引ける。街を救った英雄という名声も、NPCに広まるだけならメリットのほうが大きいと思う。なにより……ドラゴンを倒せれば経験値もアイテムもがっぽがぽに違いないのだ。ゲーマーとして見逃すのは情けないに違いない。何より、死んでもデスペナがあるだけで復活できるのだから。


 深呼吸を一つ。狙撃銃を膝立ちで構え、再び深呼吸。赤いドラゴンに照準……ただ当てるだけではダメだ。竜の鱗と言えば堅牢で有名、少しでも倒す確率を上げるためには弱点を狙うべきだ。弱点はどこだ? 目か、角か、それともやはり口の中か。ドラゴンまで四百メートル。半秒ほどのラグを考えてしっかり狙う。セオリー通りに口の中を狙うことにする。奴が大口を開けた時に撃つ。一呼吸……二呼吸……、ブレスを吐こうと口を閉じた。ありったけの魔力を弾丸に込める。鎌首をもたげ、押し出すように頭を前に。今。そう思ったときには自然と指が引き金を引き切っていた。


「ギャウ!?」

「外したか!」


 タイミングは完璧、しかし吐かれた炎が上昇気流を生み出し、その空気の流れに沿って弾丸は上昇。口内ではなく金色の目玉を闇色の塊が撃ち抜いた。それを見届けた私はすぐに駆け出す……ことはなく瞑想を始める。怒りに震える咆哮が聞こえる。奴がこちらに気付くのにどれだけの猶予があるか。竜はプライドが高いと相場は決まっている。噛み殺しにくるはずだ。ならばここに到達するまで何秒だ。感覚を研ぎ澄ませ! みるみるうちに回復していくMP、こちらに猛然と迫る気配。目を開ける。噛み砕かんと突き出される竜の牙顎。私は自分の頭がある場所に《ダークネス》をかけ、同時に自らの足元の影に沈み込む。目前で闇の球体が左右から竜の牙に噛み裂かれようとしている。球体にわずかに触れている自らの輪郭を起点に《影操作》を発動! 影を凝縮した両刃の斧により竜の上下顎が自ら断ち割られる。マグマのように煮立った血潮が撒き散らされる。その血が付着した体に激痛が走る。それだけでMPが四割近く削られる。残り三割を切る命の証。逃げるように影に完全に沈み込む直前、私が見たのは天空から振り下ろされた一条の雷槌だった。


「グルラ!? グアアアン? グララララッ」


 何かを喋っているのか、生憎竜言語など分からない。しかし、好機。驚きのあまりか、撃ち抜かれたほうの目も見開いている。寸暇も惜しんで私は影をその目に伸ばす。眼孔内は闇。それは影の塊。掌握するのももどかしく、さらに奥へ。十センチほど奥に届いた瞬間、闇を押し固め叩きつけ、それに止まらず全霊を込めて爆発させる。《侵蝕スル影ノ世界》(シャドウエクスプロージョン)! 竜の目から光が消え、地響きとともにその身を大地に投げ出した。鈍く輝く黒角が炎を噴き上げ、紅色の結晶を撒き散らしながら竜の死骸は消滅した。


『よくぞグローリアスを滅してくれた。褒めてつかわす。さしあたっての褒美じゃ。謹んで受け取るがよいぞ』


 頭の中に響くような声とともに、私の体を眩い光が包んだ。





【Name】シェイド

【Race】影人

【称号】<筋肉ハンター>,<巨犬殺し>,<無慈悲な探究者>,<先駆者>,

    <屠竜の闇>

【Fame】 +1500 (街防衛+500,上位竜討伐+1000)

【Karma】- 600 (魔物討伐-1×400,暴竜討伐-200)

【Status】

Lv.23→27→41(残振り分けpt:14)

 HP  : 10/10

 MP  : 2/690

 STR :3   →5

 VIT :3   →5

 DEX :35→37→46 +16

 AGI :34→36→42 +22

 INT :57→73→87 +37

 MIN :35→39→53 + 3

 LUC :38→43→60

【スキル】

(メイン)

 《銃Lv.26→29→36》《視力強化Lv.62→83→88》《水属性魔法Lv.28》

 《風属性魔法Lv.49》《念力Lv.39→40→43》《付与術Lv.57→64》

 《気配遮断Lv.54→59》《火属性魔法Lv.73》《魔力探知Lv.1→35》New!

 《歩法Lv.27》《気配察知Lv.46→76→84》

(サブ)

 《細工Lv.15》《鑑定Lv.38》《鍛冶Lv.55》《錬金術Lv.54》

 《光属性魔法Lv.15》《解体Lv.18》《遮音Lv.41》

 《地属性魔法Lv.34》《方向感覚Lv.8》《罠Lv.4》

(控え)

《採掘Lv.42》《罠外しLv.14》《銃作成Lv.25》《矢玉作成Lv.25》

《採取Lv.33》

【加護】

 <???の祝福>

【状態】瀕死

【所持SP】60

・闇属性適正ⅩLv.56→81→95

・魔の才能Lv.72→84→92

・影操作Lv.81→99→110



【Name】リルー

【Race】巨犬

【称号】<付き従うもの>,<忍び寄る猟犬>,<賢狼>

【Fame】 0

【Karma】-30

【Status】

Lv.12→36(残振り分けpt:0)

 HP  :344/344→536/536

 MP  :108/108→226/226

 STR :23→ 60 +11

 VIT :23→ 60 +11

 DEX :14→ 33 + 2

 AGI :50→ 96 +11

 INT :58→126 

 MIN :56→121 

 LUC :48→103

【スキル】

(メイン)

 《牙Lv.81→105》《爪Lv.76→105》《体術Lv.79→105》《走力強化Lv.43→65》

 《闇属性耐性Lv.36→68》《毒耐性Lv.18→24》《麻痺耐性Lv.7→15》

 《視力強化Lv.45→61》《気配察知Lv.1→28》New!《気配遮断Lv.1→46》New!

(サブ)

 

【加護】

【状態】正常

・魔力の毛皮Lv.12

・???

・???


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