髪を切る事
じょぎりじょぎりと前髪を切る。文房具バサミで。
しゃわらしゃわらとゴミ箱に落ちていく。
髪の毛が名残惜しそうにこちらを見ているような気がした。もっと切ろう。
後ろ髪を切る。束ねて一気に。じょぎりと深い音がする。
もっと切りたい。
命さえも切ってしまいたい。
もういいよね。
疲れたね。
涙が滾々と溢れる。
思えば、もう、何を心残りにしようかわからない。
ベランダに出る。
ひやりとコンクリートの冷たさが心にまで届いた。
脚をかけて高いところに立った。いい景色かもしれない。
twitterを開いて呟く「絶景なう」。
意外と、感じたものは浮遊感ではなく開放感であった。
人の命は伸びた髪の毛を切るようにすぐに切れてしまう。
もしかしたらこの少女は誰かに助けを求めていたかもね。自殺者の多い国だよまったく。
この子が自殺をした原因は未だわからない。特にいじめを受けていたわけでもなさそうだ。
謎ばかり残る。男か?
遺書も見つかっていない。「絶景なう」?なんじゃそりゃ
最近はこの手の自殺が多いなぁ。困っちゃうなぁ。
捜査もロクに進まん。
「手を引かれたんですよ。きっと。」
「誰にだ」
「神様、に」
「そんな神様がいるか」
変な事を言う助手だよ。最近の若者はわからんわ。
「僕も。髪を切ろうかな。」
「あぁ行ってくるか?暇だしな。」
「では。失礼します。」
「すぐ戻ってこいよー」
1時間後。助手は今回の事件の少女のように飛び降り自殺をして死んでしまった。
髪はまだらに雑に切られており、自分で切ったものと思われる。
手を引かれたのか。お前も。いつから手を引かれていたんだ。教えてくれよ。
「俺ももう、髪を切ろうかな。」




