第7話:〜梅雨〜 五月雨
自分の中で何かが変わっていく・・・
梅雨の時期になり、レンはトーヤに対する感情に変化があることに気づく。
雨の日が続いた。
空気は生暖かく、ジメジメしている。
梅雨にはいったらしい。
月もなかなか出なくなった。
おそらくはあの寒い冬以来だろう。こんなにも
トーヤに会えない日が続くのは・・・
きっと、あの時と同じなのだろう。
毎晩夜空を見上げて、それを繰り返していくうちに
いつしか時は経って。
そのうちトーヤに会えるだろう。
雨は毎日流れるように激しく降っていた。雨が降っていなくても、
空は薄暗い雲に覆われていて、気分さえもどんよりしていった。
トーヤに会いたい。
あの冬も同じだった。同じだと思っていた。
何かがあの時と確かに違う。
会いたい気持ちは同じだ。だけど、話したいことがあるとか、
急ぎの話があるとか、そういうことではない。
ただ会いたいのだ。
会いたくて、会いたくて、会いたくてたまらない。
こんな気持ちは初めて感じた。
――そのうち月も出るだろう――
私は自分に言い聞かせた。そうしなければ、自分が自分でなくなりそう
な気がした。
大丈夫、ひとりには慣れている。
大丈夫・・・大丈夫・・・ダイジョウブ・・・・
なんだろう、心の奥がポッカリと開いたような感じがする。
この気持ちはなんだろう。
何かが落ち着かなくて、やりきれない。
私は一体、どうしたというのだろうか・・・・
『寂しい?』
ふと誰かが自分に問いかけたような気がした。
辺りを見回したけど、そんなものは見当たらなかったし、第一
自分に声をかけるような存在だっていなかった。
それなのに、ふと聞こえた声が耳の奥で響いている。
”寂しい”なんて、生まれてから一度も思ったことなんて無かった。
そんな感情があること自体知らなかったし、意味だってわからなかった。
ねぇ、これが”寂しい”ということなの?
尋ねて帰ってくる声など無かった。
だけど、もしもこんな気持ちが”寂しい”という気持ちなら、なんて
切ないのだろう・・・・私はそう思った。
トーヤ、トーヤ、トーヤ―――
何度も何度も、心の中で彼の名前を呼んだ。呼んだところで、トーヤが
すぐに来てくれるわけがないということぐらい、私にはきちんとわかっていた。
だけど、そうせずにはいられなくて、私は彼の名を呼び続けた。
きっと、私はどこかで願っていたのだろう。
早くトーヤに会えるようにと。
だけど、彼の名を呼ぶたびに、心の奥に開いた穴が広がっていくような
気持ちになった。
雨はまだ降り続いている。
梅雨は始まったばかりだった――