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My Dear MOON  作者: 黒蝶
24/24

第24話:〜春〜 告白

 いよいよトーヤとの別れの時、悲しいながらもすべてを受け入れたレン。

 お待たせいたしました、最終話です。

 夜桜を月が照らすと、一層美しさが増す。

 月が出た。

 桜が咲いた――


 午前12時の、いつもの空き地。

 目の前に光が現れた。中から、真っ白のシャツに、黒のスーツ

を着て、綺麗な青色のネクタイをした青年が現れた。

 「やぁ、レン。」

 トーヤが来た。

 「行きましょう。」私は言った。

 あぁ――、とトーヤは言う。

 私達は歩き出した。目指すものは桜の木。きっと、今夜も綺麗に

咲き誇っていることだろう・・・


 「美しい・・・・」トーヤは桜を眺めて言った。

 「えぇ、本当に。」塀に登っていた私は言った。

 「もう一度、見ることができて良かった。」

 桜は綺麗だった。桜を見ているトーヤも綺麗だった。

 しばらくするとトーヤが、行こうか――、と言ったので、私は塀から

降りて、トーヤと並んで歩きながら空き地へと戻った。


 空き地に着いた頃にはもう、残された時間はあと半分ほどしか無かった。

 もう本当に、あとわずか。

 「トーヤ・・」私は重たい口を開いた。

 「なんだい?」


 「私、あなたが好きよ。」


 やっと言えた。ずっと言いたくて言えなかった。

 今言わなければ、もう二度と言えない。そんなのは嫌だった。

 桜の花の美しさと、それを見るトーヤの微笑が、私に勇気を与えてくれた。

 レン――、とトーヤは言った。

 「私、ずっとあなたが好きだったの。好きで好きでたまらなかったの。

こんな気持ちになったのは初めて。きっと、あなたじゃなかったら、私は

知らないままだったわ。」

 私は続けた。

 「私、あなたを好きで幸せだった。」

 本音だった。私は幸せだった。

 ――トーヤを好きで、幸せだった――

 「もしかして、僕は知らない間に君を傷つけていたかな?」トーヤは言った。

 「いいえ、そんなことはないわ。確かに悲しいこともあったけど、あなたが

悪いわけじゃないのよ。そういうものなだけなのよ。」私は言った。

 「ありがとう。」

 トーヤは笑って言った。最後に、トーヤの笑顔が見れて良かった。

 「レン、君は生まれ変わったら何になりたい?」トーヤが聞いた。

 そんなもの、決まっている。

 「あなたと同じ”もの”になりたいわ。」

 そうか――、とトーヤは言った。


 「それならレン、君が生まれ変わったら、生まれ変わった僕と結婚しよう。」

 そんな言葉が聞けるとは、思ってもいなかった。

 「私でいいの?」

 「もちろん。ただ、それまでは君にひとつも愛の言葉が言えないんだ。それを

許してくれないか・・・」

 「そんなものは、無くていいわ。あなたがそんなことを言ってくれるなんて、思って

もいなかった。嬉しいわ。」

 「でも、生まれ変わった君に会えるかな?」トーヤは言った。

 「きっと会えるわ。私があなたを探す。私はきっとまた、あなたに出逢えるように

生まれてくるだろうから。」

 「それは良かった。」とトーヤは言った。


 トーヤの体が光り始めた。

 「もう、時間だ・・・」とトーヤが言う。

 「これでもう、会えないのね・・・・」

 もう、もがくことも足掻くこともできない。

 「今まで、ありがとう。」トーヤは片手を差し出した。

 「私のほうこそ、本当にありがとう。」私も片手を差し出した。

 初めて出逢った頃はきちんとできなかった。今ならできる。心のこもった握手が。

 トーヤの体は、もう半分くらい光に埋もれていた。

 やがて、強く握り締めたふたりの手も離れていく。


 「あなたが大好きよ・・・・」

 そう言った私に、トーヤはただ微笑みだけを返してくれた。

 

 ―――さよなら――、とトーヤ。

 

 ―――さよなら――、と私。


 光がトーヤを包み、やがて、消えていった。



 空き地に静寂が戻った。

 私はそこを一歩も動かなかった。

 瞬間、何かが頬を伝った。

 雨が降ってきたのだろうか。でも、空は晴れている。


 涙が流れた――

 生まれて初めて、私は涙を流した。

 涙は枯れることなく、尽きることもなく、ただひたすら私は泣いた。


 トーヤ――、トーヤ――、トーヤ――・・・・


 心から愛していた。

 叶わない恋だったけど、幸せだった。

 本当に、幸せだった――


 ありがとう、トーヤ、大好きよ・・・・・・

 空高く光る月に向かって、私は言った。




 私は、街を彷徨う真っ黒な野良猫。

 私の名前はレン。

 これからもずっと、私の名前は『レン』――・・・ 

 長くこのお話を読んでくださった皆様、本当にありがとうごさいます。

 所々に未熟な点が見られると思いますが、多くの方に読んでいただければそれだけで幸いです。

 今、恋をしている方、恋に悩んでいる方、恋に悲しみはつきもので、それがあるからこそ恋は楽しいのではないでしょうか。

 そんな、恋の悩みを抱えている方々に、この小説を通してエールとなれば良いと思っています。

 みなさん、頑張ってください。

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