第19話:〜冬〜 違和感
あの後も、何日か月の出ない夜が続いた。
そして、ある日昇った月は、どこか違和感があった。
見ればいつもと同じ月なのに、でも何かが違う。
その『何か』は、私にもわからなかった。
きっと気のせいに違いない――、そう思って私は、
今夜もトーヤを待った。
月は空高く昇り、時刻は午前12時になる。
もうじきトーヤが、微笑みながら光の中から現れる。
――早く、トーヤに会いたい――
光が現れない――
時刻は確実に、午前12時を過ぎている。
私は空を見上げた。間違いなく月は出ている。
それなのにトーヤは来ない。
どうしたのだろう?
もしかしたら、今夜は少し遅くなるのかもしれない、
私は確証もないのにそう思った。
私はひたすらトーヤを待った。
時刻は午前1時になっていた。トーヤはまだ来ない。
この空き地は、風通しだけは良い。おかげで、冬の
寒い風が、痛いほど横切る。そんな中で、私はただただ
トーヤを待った。
私がしていることは、もしかしたらすごく馬鹿げている
ことなのかもしれない。
――あと1時間待ってもトーヤが来なかったら、行って
しまおう――
そんなことを繰り返しているうちに、周囲は明るくなり、
夜が明けた。気がつけば、一晩中空き地に佇んでいた。
体はひんやりと冷たかった。
ついにトーヤは来なかった・・・
空は明るくなり、月は消えた。
――月の出る夜は、必ず君に会いに来る――
トーヤは確かにそう言った。それなのに、彼は来なかった。
――トーヤ、トーヤ、トーヤ、――・・・
私は嫌われてしまったの?
地球に来るのが嫌になったの?
ねぇ、答えて。お願い、トーヤ・・・・・
伝わることの無い声が、寒風に連れられて消えていった。
不安が、胸を競りあげる――