第16話〜夢〜 儚き幻想
温かさなど感じたことがなかった。
自分は汚れていて、嫌われ者だとそう信じていた。
誰もが私にそう言っていたから。
ある日突然出逢った人は、私の心を揺さぶった。
ずっとすっとひとりぼっちだった私。
恐いものなんてひとつもなかった。
だけど、その人と出逢った事で、私はひとりが
恐くなった。
胸の奥にはいつも、誰かを想う愛しさがあった。
あの人が愛しい――、と今日まで何度思った
ことだろう。
それが、例え叶わず散ってしまうとわかっていようと、
簡単に諦めきれるほど、私は彼を生半可に愛してはいない。
それは揺るぎない真実――
――夢を見た――
トーヤの夢だった。
詳しくは覚えていないけど、あれは確かにトーヤで、
そしてとても幸せな夢だった気がする。
夢は、その人の見たいものや願望が現れると聞いた
ことがある。もしそうなら、あの夢は私の欲望だったの
かもしれない。
目を覚ました瞬間は、どこか切なかった。嬉しい夢を
見たのに、寂しさを感じた。
トーヤに夢で会えたことは嬉しかった。
会いたいときに会えない私にとって、それは心からの
喜びでもあった。
でも所詮は夢だ。
いつかは消えて、嫌でも現実に引き戻される。
目が覚めるとそこは、見慣れたどこかの路地裏の、真っ暗な
隅っこだった。そんな所にトーヤがいるはずもない。
私が切なく思ったのは、夢の中でのトーヤを、あまりにも
鮮明に、色褪すことなく覚えていたからかもしれない。
突然飛び込んできた現実に、彼はいないから・・・
だけど心地良いひと時だった。
また、夢で会えるといい――