第15話:〜秋〜 冷たい秋風
秋は短い。季節を感じさせた木の葉は、日に日に
枝から離れ、どの木もすっかり寂しくなってしまった。
風も、以前に比べて冷たくなってきているようだ。
冬の近さを肌で感じていた――
「いつも上着を借りて悪いわ・・・」肌寒い日々に
なり、トーヤはまた私に、自分の着ている上着を貸して
くれるようになった。
「だって寒いだろう。僕のことなら気にしなくて
いいよ。前にも言ったように、地球の寒さは僕にとっては
全然温かい方なんだ。」とトーヤは言った。
「私だってこれくらいはまだ平気よ。」と私は言った。
トーヤは、そうかい――、と言うと、その大きな手で
私の背中を優しく撫でた。
「こんなに体を冷たくしているのに?」と彼は言った。
確かに体は冷えていた。
「僕が好きでやっていることんなんだ。本当に気にしない
でくれよ。」
「どうもありがとう。」私はトーヤの優しさに甘えた。
トーヤを見て、時々衝動に駆られる。
――私の全てを受け入れて欲しい――
駆け出して、何もかも委ねたくて、すがりつきたくなる。
私は弱い。
本当はとても弱い。
そんな自分を見せたくなくて、いつも強がってきた。強く
なんてないのに、そんな自分を必死に隠してきた。
トーヤなら、そんな、弱い自分も、強がっている自分も全て
受け入れてくれるように思った。そんな確信なんてどこにも
無いのに、彼の存在がそうさせた。
ひどく勝手な言い分だけど・・・・
「もう冬になるのかい?」トーヤは言った。
「そうね。もうだいぶ寒くなってきたし、そろそろ冬ね。」
「じゃあ、またユキが見られるのかい?」
トーヤは随分雪が気にいったらしい。
「すぐには降らないと思うけど、その時が来たらきっとまた
振るでしょうね。」私は言った。
「そっか。楽しみだなぁ。」
「そんなに雪に興味があるの?」私は聞いた。
「まぁね。地球は、僕の国に無いものがたくさんあるから。」
「でも、雪が降ったら月がなかなか出なくなるわ。」
また、トーヤと会えない日が続くのかと思うと、冬になんて
なってほしくないと思った。
そうか――、とトーヤは言った。
「僕は必ず会いに来るよ。」トーヤは言った。
「えっ?」
「月の出る夜は、必ず君に会いに来る。突然辞めたりはしない。
約束するよ。」とトーヤは言った。
そんなことを言われたら期待してしまう――
あまり期待しないでおこう。
そう言いつつも、陽気になる気持ちを抑えることはできなかった。
もうすぐ、トーヤと過ごす二度目の冬が来る。