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3-3 今、朝鮮がパクるべきものがある

ここまで見てきたように、朝鮮半島の思想史は、決して「完全な独自文明」の歴史ではない。


むしろその本質は、

「外来思想を吸収し、朝鮮的感情構造に合わせて再編成する能力」

にあった。


事大主義は、中華秩序への適応だった。

朱子学は、朝鮮社会の道徳OSへ変換された。

プロテスタントは、儒教化・民族化・シャーマニズム化された。

主体思想ですら、マルクス主義の朝鮮化である。


つまり朝鮮半島は、本来的に「翻訳文明」なのである。


だから著者は、事大主義由来の「パクリ」そのものを、全面的に否定するつもりはない。

国家形成期や転換期において、外部から制度や思想を導入することは、歴史上ごく普通に行われてきた営みである。日本もまた律令制を中国から導入し、近代には西洋制度を大量に輸入した。


問題は、「何を」「どうパクるか」である。


単なる起源主張や他国文化の横取り、あるいは歪んだ民族感情だけを満たす模倣では、共同体は持続的には安定しない。

国家観を自力で変更するべきは、他ならぬ当事者である国民自身だからだ。


ここで、かつて一部で流行した「振り子の法則トランスサーフィン」のような、集団の過熱から身をかわす思想を参考にする者がいるかもしれない。確かにそれは、個人が実存を防衛するための認知ハックとしては極めて強力である。しかし、あれは徹底した個人主義の哲学であり、数千年間「ウリ(我々)」という強烈な集団同調性で縛られてきたマクロな共同体を引き上げるための駆動エンジンにはなり得ない。


だからこそ彼らは、自力で先述の「七つの要素」を泥臭く組み上げるしかないのだ。


では、彼らは一体何をパクればいいのか。

著者はここで、具体例が何もないのは不親切だと考え、一つの補助線として日本の「報徳思想(二宮尊徳)」を挙げておく。


報徳思想の「勤労・分度・推譲・積小為大」は、敵を必要とせず、カリスマを絶対化せず、民族被害をエネルギー源にしないまま、「昨日より少し良くなる」ことを積み上げる実践思想である。これは、大義や革命といった「巨大物語」に流れて自滅しやすい朝鮮思想のバグを補う上で、極めて相性が良いサンプルだ。


しかし、誤解しないでほしい。

著者は何も、朝鮮半島に対して「日本の報徳思想を崇拝せよ」などという、安直な押し付けをしたいわけではない。報徳思想は唯一の正解ではなく、システムの要件を満たすための「仮の具体例」に過ぎないのだ。


ハッキリと言えば、ガワ(思想の名称や出処)は何でもいい。

彼らが今すぐ事大的に翻訳し、ローカライズすべき思想の「絶対条件(範疇)」は、極めてシンプルに以下の2点に集約される。


① 共同体の経済性と実利性を、泥臭く効率化していくこと。

② その駆動エネルギーのために、外部に「敵」を設定しないこと。


```

【新OSが満たすべき思想的範疇】

[経済性の効率化] + [外部の敵のパージ(他責の停止)]

この2条件を満たすならば、パクる対象は「何でもいい(彼らの自由)」。


```


この2つの条件さえ満たしているならば、それがアメリカ由来のプラグマティズム(実用主義)であろうが、現代シリコンバレー型のアジャイル思想であろうが、あるいはその他の現世利益的な成功哲学であろうが、彼らは何を選んでも構わないし、それをどういじくり回そうが彼らの自由である。


本来、朝鮮半島社会は「高熱量」「高集中力」「高共同体性」を持つ、能力にあふれた社会である。

問題は「能力がない」ことではなく、「熱量が強すぎて外部の敵やカリスマへの依存に暴走しやすい」という回路の欠陥にある。


だからこそ、感情を否定するのではなく、


> 「感情を生活安定と経済的成功へ変換する思想OS」


であれば、ガワの選択肢は無限に開かれている。


朝鮮半島は歴史上ずっと、外来思想を驚異的速度で吸収し、自分たちなりに再編してきた。

ならば今こそ、その事大主義的能力を、自らの国家観を自力でアップデートするために使うべきだ。


選ぶべきは、敵を作る思想ではない。熱狂を煽るイデオロギーでもない。

条件の範疇パラメーターの中で、自らの「情」を軸にローカライズできる「人間を少しずつ安定的・効率的に成功させる思想」である。


彼らが自らの意志でその最適解を選び取り、自走し始めるなら、その時初めて、「熱狂の文明」から「持続的成長の文明」への転換が始まるのかもしれない。

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