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秘魔 =追放されし王は 荒天に煌めく星を目指す=   作者: 寄賀あける
11章 身を隠す

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16

 かんぬきがどう攻撃してくるのか、それをどう防ぐのか……さっぱり見当つかないが、縋ってくるクルテを見捨てられるはずもない。


「殺気に俺は敏感だ。きっとおまえよりずっと早く気が付く。かんぬきがおまえを叩こうとしたら、先に俺がかんぬきを叩き落としておまえを起こす。起きたら叩き起こす必要がなくなるから、かんぬきは襲って来ない――これでいいか?」

「ちょっと不安だけど、それでいいよ」

不安なのかよっ! ま、いーか。俺も自信があるわけじゃない。


「ま、誰もかんぬきを外さなきゃ、問題ない」

「ふぅん。今すぐ外したらどうなる?」

「わたしが起きてるんだから魔法は発動されない。だけど解除もされない」

ニヤッとするピエッチェ、

「じゃあさ、日の出まで起きてりゃいい」

クルテが即答、ムッとしている。

「無理」


「冗談は置いといて、もし外すとしたら俺かおまえかジランチェニシスしかいない。カッチーは朝まで寝てるからな」

「冗談なんか言うな……要するに注意しなきゃなんないのはジランチェニシスだけ」

「かんぬきを外して、ジランチェニシスが行くとしたらどこか?」

「ノホメかその仲間。あるいは、そのどちらかがこの部屋に入りたがって、それを察知した場合」


「ほかにもある。ヤツは王都に住んでいたって言った。土地勘があると考えた方がいい。ノホメたちの居所を知っていれば自分から行こうとするかもしれない――アイツの心は読めないんだったな?」

「読めるよ、ヤツが無防備になれば。わたしが居ると(しゃ)へい術を使うけど、居ないと使わない。偽カテロヘブは人形と同じだからね、警戒する必要ない。寝室で二人きりだと無防備」


「ん? 清風の丘の屋敷の(アプ)()(ーチ)で姿を消した時は、見えなくても遮蔽してたんだよな?」

「あの時はどこかに居るはずだって考えたんじゃ? で、別室からだと読めないって思ってるみたい。自分がそうなんだろうね」

「それじゃ、今、アイツが何を考えてるのか判るんだ?」

「今? 今は新生活を夢想してる。可哀想にね、そんな未来があいつに訪れることはない」


「新生活ってどんな?」

「聞かないほうがいいと思うし、カティはきっと不機嫌になる。だから言わない」

そんなふうに言われると、気になってますます聞きたくなる。アイツの〝新〟生活で俺が不機嫌になることって……


「あぁ、訊かない。想像しただけで気分が悪い」

きっとクルテのことだ。間違いなくクルテのことだ。どんな想像をしたのか知らないが、どんな想像だとしても胸糞悪いことに決まってる。


「で、他には? ノホメと連絡とろうとか、そんなのは?」

「それがさ、ノホメを考えたことがない。てか、他人を思い浮かべない。ギュームのこともレムシャンのことも、思い出したこともない。わたしとカティのことは時どき思い浮かべるけど、他の人が思考に出てきたことがない。だからノホメって名じゃなくても、誰も思い浮かべないんだからノホメのことも考えてないってこと」

なんか、回りくどい言いかただが、うん、言いたいことは伝わったぞ。


「マデルとカッチーのことは?」

「本人を目の前にしてなら考えてるかもしれないけどさ、アイツ、キャビンの中でも遮蔽術を使ってる。だからくたくたに疲れてて、あ、意識が飛んだ」

眠ったってことか。


「朝まで起きなきゃいいのに」

「カッチーを見習って欲しいよね。ところでさ、さっき、タスケッテの話になったじゃん。なんか思い浮かべたよね。森の女神?」

「ん? あぁ、変な夢を見たんだよ。森の女神の夢」

「色っぽい女神に誘惑された?」

「おまえさ、心を読んでどんな夢か判ってるんだろ?」

ムッとするピエッチェにクルテがクスッとする。


「カティ、それ、夢じゃない」

「えっ?」

「タスケッテの森の女神はカテルクルストと契約した。あの森に道を通すのに、カテルクルストは森ごと焼き払うかどうか迷ってた。ララティスチャングを囲む山の一部を切り崩し、そこからさらに平地を広げようって計画があったんだ」


「でも、それって実現してないな――契約の内容は?」

「平地を広げろってのは父王の意向だった。だけど、あの森を潰すのは忍びないと感じたカテルクルストは女神に願った。森を(ひら)くのは必要最低限とするから、工事に携わる者たちを守って欲しい」


「工夫たちを守れと?」

「うん、事故が頻発してた。伐採した大木の下敷きになる者、土砂を乗せた荷車の横転とか、なにしろ事故が多かった。さらに獣や魔物の襲来があったりで、カテルクルストは森の女神の怒りのせいだと考えたんだね」


「それで女神は?」

「女神は人間になんか、興味を持っていなかった。事故も獣たちの襲撃も、森の木や生き物たちが抵抗しただけで、女神の指示ではなかった。けれど願いを聞き入れることにした。カテルクルストに興味を持ったんだ。動植物たちを宥め、道を通させてやれと命じた」


「興味を持ったって言うのは?」

「まずはその願い、守りたいのが工夫たちだと言う事に注目した。森を開拓し平地を広げられなければ、責を問われる。自分の保身を考えない(たち)を好もしく感じた」


「カテルクルストとタスケッテの女神にロマンスが生まれそうだけど、カテルクルストの相手は自分じゃないって女神は言ってたぞ?」

「すでにカテルクルストは別の女神に愛を誓っていた。それをタスケッテの女神は知っていて、カテルクルストの人物に興味を持ったんだよ。なるほど、あの女神の愛を得るだけのことはあると」


「女神のお陰でカテール街道はタスケッテの森を無事に抜けられたんだな」

「イヤ、ちょっと違う」

「違う?」

「タスケッテの女神は動植物を制しただけ。元より過度な悪さを禁じていたから、それを徹底したんだ。女神の役目を果たしたってことだね」


「うん? ってなるとさ、契約てのは? 森を残すのと引き換えに道を通したんじゃないのか?」

「森を残すのと引き換えに、女神はカテルクルストに未来永劫の祝福を与えた。子々孫々、カテルクルストの血を受け継ぐもの、全てに及ぶ」

クルテがピエッチェを見上げ、ピエッチェがクルテを見詰める。


「俺にもタスケッテの女神の祝福が?」

「そうさ、だから彼女はカティの顔を見にきた。確かめる意味もあったんじゃないのかな? 自分が与えた祝福が生きているかどうか」


「それで、祝福は有効だと?」

「カテルクルストの血の匂いがすると女神は言った。つまり有効」

「しかし、そんな言い伝えはないぞ?」

「そりゃそうさ、タスケッテの女神が自分にそんな祝福を与えたなんて、本人は知らない」


 そう言えば、シャーレジアに貰ったペンダントも、女神の祝福だとシャーレジアは知らないんじゃなかったか?

「そうだね。でもさ、あのペンダントは何度もシャーレジアを危機から救った。持ち主を守る力があることに気が付いてた。だからカティにくれた」

知らないうちに女神の祝福を受けた人物って、世の中にどれくらい居るんだろう?


「ところでさ」

ニヤッと笑ってクルテが言った。

「殺気に敏感だって言ったけど、本当?」


「物心つく頃には、そんな鍛錬を受けてた。不意打ちを食らわないようにって」

「自信がありそうだけど、考え直した方がいい――()き出しにされるまで、ネネシリスの殺気に気が付かなかったんだから」

「あ……」

(おっしゃ)る通りです。


 クスッと笑ってクルテが立ち上がる。

「そろそろ寝ようか? 明日もまたいろいろと忙しい」

あぁ、そうだな……なんだかドッと疲れが出てきたよ。ピエッチェも立ち上がる。


 ベッドルームに入ると、壁に立てかけたフレヴァンスの絵をチラッと見てからクルテが言った。

「この絵、布をかけたまま、ここに置いておけばいいよね?」


「そうだな。他の部屋には置けないからな。カッチーに見られちゃまずいし――フレヴァンスをどうやって絵から出すかも考えないと」

「何かいい考え、ある?」

あればとっくに試してる。


 クルテがサックをベッドに放り投げた。いつもの通り花籠も同じベッドに置いてある。そう言えば、なんで花籠が必要なんだろう? クルテが生きていくには果物と花籠が必要って言ったけど、単に好きだってだけなのか?


 ベッドに潜り込んだクルテがピエッチェを待っている。トロンと眠たそうな目だ。ピエッチェが隣に横たわれば、すぐに抱き着いてきて寝息を立てることだろう。その前に、抱き締めてキスしたい――ベッドに向かった。


 真夜中? いいや、もう日の出が近い。()じろぎしたピエッチェに、クルテがギュッと抱き着いた。


(今、ドアを開け閉めする音がしなかったか?)

(した。誰かが寝室から居間に出た)


 物音を立てないよう、それでも素早い動きでピエッチェがベッドから降り、付属の居間に向かう。念のため、剣を手にした。クルテもすぐについてくる。


()しい……明かりが消えている)

部屋の照明は、いくつか残して点けておいた。なのに、全て落とされて暗い。付属の居間は真っ暗だ。


 付属の居間とメインの居間を隔てる、施錠したはずのドアが細く開いている。その細く開いた隙間から、メインの居間がこちらより明るいのが判った。窓から外の光が差し込んでいるのだろう。それでもうっすらとした明るさだ。


 そろそろと足音を忍ばせて細く開いたドアに近寄り、隙間からそっとメインの居間を覗く。水が流れる音が聞こえた。誰かがミニキッチンのシンクで水を汲んでいる。


(水を飲んでる?)

頭の中でクルテの声、

()が渇いてた?)

ピエッチェの呟きは、答えとも独り言とも言えない。


 静かな足音がしてギシッと何かの軋む音、椅子に座ったのだろう。コトンと音がしたのはカップをテーブルに置いたのか? そして聞こえた小さな溜息……


(女?)

しかも若い。つまりノホメじゃない。もちろんカッチーでもジランチェニシスでも、偽カテロヘブでもない。


(そんなのは最初から判ってる。いい匂いがしてる)

クルテが鼻で笑った。


(それじゃあ、ノホメの仲間? ノホメの仲間は若い女だった?)

(綺麗な声だよね、でも、声だけ若いのかも?)

またもクルテが鼻で笑う。なんとなく(とげ)とげしい。


(どうする?)

ピエッチェの問いに

(灯りを点けてみたら? 顔が見たいんでしょ?)

怒ったようなクルテの返事、確かに顔が見たいと思ったが、

(顔を見なくちゃ誰なのか判らないだろ?)

少しばかりイラつくピエッチェだ。


(顔を見れば誰かが判るんだ?)

(いや、そうとも限らないが)

(だったら、顔を見る意味なんかないじゃん)

(じゃあ聞くが、アイツをどうする? 顔を見なくちゃ何もできないぞ?)

(そんなに顔が見たけりゃ、明かりをつけなよっ!)

なんで怒ってるんだよ?


 どちらにしろ、クルテに構っている場合じゃない。そっとドアを押し開けて、メインの居間に飛び込こんだ――

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