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第一話『イヤな家』

 俺の名前は櫻井潤、19歳だ。大学2年生で、今年から一人暮らしを始める。

 今日は、不動産屋で探してもらったアパートに初めて来た。決め手は、なんといってもその破格の安さだった。しかも1LDKで風呂とトイレは別。何か隠れた訳ありポイントがあるのではないかと疑うほどだった。

 しかし、実際来てみると不動産屋のパソコンで見た通りの外観で、文句無しの部屋だった。俺は、今から始める新生活に胸を躍らせながら和室の床に布団を敷き、眠りにつこうとしていた。

 「小僧!もう寝るんか!」

「誰!?」

 バンっという音とともにふすまが開き、中から髭と髪の白いおじさんがこちらを覗いていた。

 「寝るなら電気を消さんかい!眩しいわい!」

 おじさんはすごい剣幕で文句を言ってきた。

 「いや、その前になんで人の家に勝手に上がり込んでるんだよ!早く出てってくれ!警察を呼びますよ!?」

 「何を言っとんじゃ小僧!不動産屋のにいちゃんが説明せんとったか?1LDKや言うとったやろ?」

 突然の主張に意味がわからず呆然としていると、おじさんが続けて言った。

 「1りんたろう(L)いるけど大(D)丈夫か(K)の1LDKや!わしは森永倫太郎(78歳)じゃ!」

 「はァ 〜〜ー〜?」

 たしかに1LDKにしては破格の安さだったが、見知らぬじいさん(78)を抱え込むのはいささかマイナスが大きすぎた。

 「む?いかん、小僧!下がっておれ!」

!?

 突然倫太郎が押し入れから飛び降りたと思うと、数珠を取り出し、顔の前で両掌を合わせ、合掌のポーズをとった。

 「ハァーーーーーーーー!」

 倫太郎は、何か力を込め始めた。何事かと思って見ていると、

 「キェーーーーーーー!」

突然、何もないはずの空間から、黒いフードをかぶって黒いマントに覆われた、鎌を持った何かが出現した。

 「うぉお!なんだよこれ!」

「死神じゃ!」

 「えぇーーー!」

 すると、死神は鎌を振り回し、置いたばかりの家財をめちゃくちゃにしながらこちらに迫ってきた。

すると、

 「ハァーーーーー!」

 力を込め始めた倫太郎の背から、白い何かが浮かび上がってきた。

「今度はなんだよ!」

 「背後霊じゃ!」

 すると、背後霊はするすると倫太郎の背から伸びていき、メキメキと音を立てながら部屋の天井を突き破った。首から上は天井裏にあるため見えないが、青白い顔をしていたと思う。

 「何してくれてんだよちょっと!まだ敷金も払ってないっていうのに!」

 「小僧!危ないぞ!下がっておれ!」

 すると、轟音を立てながら死神と背後霊の激しい戦闘が始まった。俺は衝撃波に吹っ飛ばされ、部屋の片隅で縮こまっていた。

 「いかん、この死神強いぞ!このままだと負けそうじゃ!」

 「えぇーーー!?せめて勝ってくれよ!家がめちゃくちゃなんだから!」

 俺はほぼ泣きながら倫太郎に懇願した。

 「待っておれ!今、援軍を呼ぶ。」

 倫太郎はもう誰も持っていない型であろうガラケーを取り出し、誰かに電話をし始めた。

 すると数10分の後、ドアが開き、何者かが家に入ってくる音が聞こえた。その間、死神と背後霊はずっと戦闘を続けていた。

 「待たせたな、じいちゃん!」

 「今度は誰!?」

 すると、そこには孫とその兄弟、その両親、倫太郎の奥さんであろう5人が見えていて、全員手に数珠を持っていた。

 「小僧!わしの家族が来たぞ!もう安心じゃ」

 「もういいから帰ってくれ」


第一話、完!!!


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