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第二十五話 ラッキースケベに制裁を

校舎に囲まれた中庭、その戦況はカオスに包まれていた。


 死神と形容できる姿で登場したマリオン先輩、オーバー:ツーに到達したファイアーバード。回復をするため少々後方に陣取っているユイナとカトレア先輩。


 四肢を広げて仰向けに倒れている俺、そんな俺の顔面にエレナが飛んできて視界をジャック。スカートを履いたエレナが大胆にも俺の顔に跨がっているため、俺の両目には彼女のパンツがありありと映っている。


「ビューティフォー……」俺はスカートの中、感嘆符を一つ呟く。


 興奮、というよりも崇拝。この世に生を受け、初めて享受する花園の素晴らしさ。未だ誰にも踏破されていないクレバス。人類で初めてという甘美な響きが俺を更なる深みへと誘う。


 しかしその感動も一瞬にして過去のこと。この景色には重大な副作用があり、その存在から逃げられぬという現実。


「だけどなぁ、さて、どうやって説明したものか」


またしても呟く。今度はため息に近い言葉。


 不慮の事故や、不可抗力……。しかし今のエレナにそんな言葉は通用しない。理不尽な暴力に沈められるのがオチ、運命、逃れられない。ゆえに天国でも考えているのだ、この難問を。


「意識は……あるのよね?」


エレナの声と共に新鮮な空気に包まれる。


 視界が開けた。オーバー:ワンは健在で、世界はモノクロ。すなわち俺を覗き込んでいるエレナにも色がないわけだが、彼女の額に表れている筋の名を青筋と言うらしい。


「ア・ス・ト?」


 スタッカート気味に俺の名を確認するエレナ。怒りのボルテージは二度目の初対面の時の比ではない。圧倒的な殺意。


ゆえに俺も慎重な言葉選びをしなければならない。


「これはこれはエレナさん、今日も美しい。この美しさに当てられて、さっきの事も頭から吹っ飛びましたよ」


「じゃあ記憶と一緒に頭も吹っ飛ばしましょう?」


「いやいやエレナさん、冗談キツイですって。俺、そうなったら死体になっちゃいますよ」


「未婚の娘を辱めた挙句、そのことを水に流す方が冗談みたいな話でしょ? ほら、責任とって腹を切りなさい?」


「いやぁ、そこまでしなくたって──」


 ズドンとエレナは剣を振り下ろす。俺はその一撃をギロチンと形容できるほど見えていた。横に転がって回避。俺はその勢いで立ち上がり、周囲を見渡す。


「ちーたんに手を出したのはキミかぁ?」


 マリオン先輩が俺を襲撃。空から降って来る動作に加えて上から鎌を振り下ろす。しかしこれは体の軸を横にズラすだけの回避で難なく対応。追撃も来ない。


  そのまま彼女から距離を取るためワンステップ。その着地の瞬間に違和感。俺の右手側から異音が聞こえる。


──ギィャァァァァ!


 ファイアーバードが口を開いて待機していた。すでに炎がチラつく口内。発射まで秒読み、俺も対抗して右腕を構える。


「ファイア!」


 そのまま吐き出されたブレスと火球の衝突。俺は風圧に任せて後方へ下がる。吹き荒れる突風が砂埃を形成し、視界不良のためしばしの休戦。その後埃が晴れた時点で状況を飲み込んだ。


「敵の敵は味方ってやつ? それにしたって戦力差がありすぎるよね」


 敵の分布は分かりやすい。マリオン先輩が左、ファイアーバードが中央、エレナが右。完全に全員が結託し、パーソナルスペースが友人の領域にまで狭まっていた。


エレナにいたってはファイアーバードを撫でている。


「そこの鳥やるじゃない! 私の配下に加えてやるわ!」


──クルルル


 ファイアーバードは全長二階建ての建物ほど。しかしエレナに頭を撫でられている。それすなわち頭を下げているわけで、奴は完全にペットの風格だった。


「エレナちゃん、この子ちーたんって言うんですよ。ほら、呼ばれると尻尾をフリフリって、可愛いでしょ?」


「ふふっ、可愛いわね。しかもこのモフモフ……」


 なぜファイアーバードに自我が戻っているのか。おそらくはエレナの攻撃によってオーバー:ワンに弱体化されたから。じゃあ何でそんな事になったのか。それはアイツの攻撃を俺が相殺したから。


因果が絡まり首を絞めてくる。


「はっ! そんなことしてる場合じゃないわ! あの変態を殺さなきゃお嫁に行けない!」


 エレナは急に舵をとって方向転換した。船の先端、彼女の人差し指が俺に向いている。


「そうです! ちーたんを傷つけた奴がいるんでした!」


──グルギャャォ!


ギランッと二人と一匹の視線が突き刺さる。


「俺が何をしたって言うんだよ……」


俺の呟きは儚く空へ消えてゆく。


「アスト、ドンマイ」


「アストさん、私たちは味方ですよ!」


 そういえば味方はいた。俺の背後にはヒーラーの味方。かつてのゾンビアタックをするのなら一人の方が都合がいいし、むしろ好機なのか?


「いやいや、何を血迷ってるんだよ俺は」


またしても独り言、空の彼方へ消えてゆく。


「だいたい、俺への攻撃はエレナ達に返さ……れる……わけで。あれ?」


なんで俺がオーバー:ワンになってんだ?


 マリオン先輩のヒール中毒の件から、ヒールも五人に返されるって分かった。なら今回のオーバー:ワンだって、五人のうち誰かがなっていないとおかしい。


しかし事実、俺がオーバー:ワンになっている。


「……どういう法則があるんだ? はっ!」


 思い返してみるともう一つ不可解なことが。いや、当時は気にもとめなかったこと。

 新入生テストの時にあった『ユイナの回復』。そのヒールは負傷したエレナに対して行ったが、キチンとエレナにヒールの効果が出た。


──つまり?


ユイナのヒールは通常の挙動、マリオン先輩のヒールは制約に従っていた。


 どちらかが間違いでどちらかが正しい。しかし現段階、サンプルが少なすぎる故、安易な憶測や仮説も立てづらい。


「しゃーねぇなぁ、とりあえずやってみっか!」

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