おまじないが
「それより、卒業式のあとの話がしたくて……やっと時間がとれたから、聞いてもいいかい?」
「えぇ、もちろんです。ですが、あとの話といいますと?」
「エリーゼ嬢のことだよ!」
「すっかり、忘れてしまっていましたわ」
卒業式でのことは、いい想い出しか残っていない。セインと歩いた花道とか、ダンスを踊ったとか、胸いっぱいの幸せなこと以外は、すっかり記憶から消してしまっていた。
もちろん、アンダルトととの再会は覚えている。少々高圧的に話してしまったことは、もう少し、優しい言葉をかけれたのではないかと、今も、後悔している。
「リアは、少し忙しくしすぎじゃないかい?」
「そんなことはないですよ。セインに比べれば、私などまだまだです」
ニコリと笑い、セインの反論を許さなかった。セインも私に勝とうとは思っていなかったようで、こちらを見てはいたが、何も言わなかった。
「エリーゼのことですよね?」
「そう。どうして、あのとき、ネズミに変わったんだと思う?」
「……呪いが、エリーゼに返ったのではないかと思っています」
「呪いが?」
「正確には、おまじないですけど……」
「おまじない? おまじないが、そんな作用をするのかい?」
「想像ですけど、アンダルト様の側にいてアンダルト様のことを好きな私にしか効果がなかったのでしょう。それで、エリーゼに跳ね返った。本によると、想い人、その側にいる者、それから自身の名を書くとありましたから」
私は立ち上がり、机の上に置かれていた王妃からの借り物の本をセインに手渡した。分厚い本を読み進めるうちに、見つけたおまじないがあった。卒業式の前には、知っていたので、もし、次にエリーゼが何かをしてきたとしても、私には効果がないのではないかと推測していた。
「これは、確か……母上がリアに貸した本だよね?」
「えぇ、このページを」
しおりが挟んである場所を開くと、1つのおまじないが書かれている。恋敵を無くす方法と書かれているおまじないで、手順やらどういう効果があるのか、解呪方法などが書かれていた。
「これをエリーゼ嬢が?」
「正確にはわかりません。エリーゼがこの本を持っていた確証もありませんから。ただ、ここに書かれているように、このおまじないをしたのなら、呪符のようなものが存在するらしいですし、手順通りことを運べば……」
「あなたの恋敵をネズミやカエルや蛇など、害獣などに変えてしまいますぅ?」
「不思議ですよね。たかだかおまじないなのに……私、本当にネズミになってしまったのですから」
「信じられない!」とセインは呟くが、現実に私がネズミになっていたことを考えても、このおまじないは効果があることがわかっている。
「解呪方法は……あぁ、字がにじんで読めないじゃないか。母上は、何をしていたんだ?」
「王妃様もこのおまじないの本を愛用されていたそうですよ?」
「母上が? それで、ところどころ、読めない箇所があるんだな。母上……おまじないって、何を?」
「陛下に愛されたかったようです。嫁いだころは、まだ幼かったため、ただ一人、陛下に愛されたいと願ったそうですよ」
「あぁ、それで……父上は、側妃を勧められても断っているのか?」
「違うと思いますけどね? 陛下はおまじないなんてなくても、王妃様を心から愛してらっしゃるのですよ。優しいお顔をして、いつも寄り添っていらっしゃいますから」
「知らなかったな」と感心するように頷いている。私は耳元で「セインも陛下のようになってくださいますか?」と囁いた。
「もちろん、そのつもりだよ?」
「それでは、私にはこのおまじないの本は必要ありませんね?」
「どうするんだい?」
「王妃様にお返しします」
二人で寄り添い、王妃から借りた本を見ていく。たくさんあるおまじないの中、私がかけられたものがいかに異常なものなのか、二人で再確認した。
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