お幸せですか?
「許さないっ! 私を誰だと思っているのっ! 公爵夫人になるのよっ! ここまで、必死にアンダルト様の隣に並べるようにと、どれっだけ、私が苦労してきたかっ! 最大の邪魔は、あなた、リーリヤよ! たかだか、侯爵の娘が何を! 私が欲しくて欲しくて欲しくてたまらない地位ばかりを何故横取りしてしまうの!」
怒りに我を忘れたのか、エリーゼは大勢の前で、自身の想いを吐露してしまう。
……化けの皮がはがれてしまったわ。ここまで隠し通してきたのに、残念ね。それでも、わかる人にはわかってしまうものだとは思うけど。
チラリとセインの方を見れば、エリーゼをなにも言わず、見ているだけで、その瞳には何もうつしていないようだった。
「本当なら、セイン殿下の妃になりたかった。だから、一生懸命可愛いと思ってもらえるように、努力してきたのよ! 無理だと諦めて、次期公爵が約束されているアンダルト様と結婚しようと、それからは、舵を切ったのに、そこにはリーリヤが居座っていた。どれほど、アンダルト様にリーリヤとの婚約破棄をお願いしてきたと思っているの? あなたがいる場所は……本来なら、私のいるべきところよ! 返してっ!」
エリーゼが私に飛びつこうとしたところを、間一髪でアンダルトが取り押さえた。さすがに、アンダルトもエリーゼの豹変ぶりに戸惑っているようだったが、これ以上私たちに近づかないようにしてくれている。
「エリーゼ、落ち着けっ!」
「落ち着けですって? そんなことできるわけありませんわ! 私の地位があの女に奪われたのですよ!
アンダルト様は、あの女との復縁を望んでいたではありませんか。ちょうどいい。私が王太子妃になって、あの女をアンダルト様に差し上げますわ!」
指をさされ、理不尽なことを言い始めるエリーゼ。取り押さえているアンダルトも困り果てていたが、自身が招いたことなので、何もいえない。
「私は、もう、アンダルト様との婚約は一方的に解消されています。アンダルト様の元へ戻ることはありません。エリーゼが望む結果は、私にもアンダルト様にも用意はできないでしょう」
「残念だね、エリーゼ嬢。リーリヤは、もう王太子妃になることは決定だ。身分を弁え、言葉を慎め!」
「そんなの許さないっ!」
エリーゼは、自分の思いどおりにならなかったことが、我慢ならない様子だった。私は、エリーゼとは対照的に、ただ静かに、事実をアンダルトに確認する。
「アンダルト様」
「……なんでしょうか? リーリヤ様」
「今、お幸せですか?」
「……どうでしょう? 今しがた、真実も聞くに堪えがたい話もありましたし、それに……」
「次期公爵について、心中お察ししますわ」
「……知って?」
「もちろんです。こうなる前から、エリーゼ嬢とのことも含め、公爵様から、今後のことは聞いていましたから」
「……そうか」と呟き、まだ、腕の中で暴れ回っているエリーゼをアンダルトは憐れそうに見ている。
そのとき、エリーゼを拘束していたアンダルトの腕が緩んだのだろう。振りほどいて、あのときと同じように、高々に笑い、エリーゼが私の前へ立った。
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