卒業式
学園にセインと卒業式のために向かう。馬車の車窓から見る景色はとても懐かしく、たった数ヶ月、通っていない学園への道のりが胸にある郷愁のようなものを感じた。
「どうかした?」
「いえ、なんだか、とても懐かしくて。それほど、時間は経っていないはずなのに、不思議な感じがします」
「僕は毎日、通っていたからね。リアのいない学園は、色のない世界のようだったけど……」
「帰ってきてくれてよかった」と私の手を取り、微笑む。
……今日をセインと迎えられたこと、本当に嬉しい。この日を私は迎えられないと思っていたから。
ギュっと手を握り返し、学園に着いた馬車から、セインがエスコートしてくれる。
控室に通され、待機していると、廊下から生徒たちの声が聞こえてきた。
「そういえば、セイン殿下の婚約者は一体誰なんだろう?」
「発表されていなかったよな?」
「婚約したとだけ、新聞では出されていたけど……」
謎の婚約者に、国内外の貴族未婚女性が嫉妬していると声が聞こえてくると、少し怖くなる。私は、未だ失踪したままではあったが、セインのはからいで、学園卒業まで叶った。セインと同じく卒業することが出来た。
今日は、その卒業式だ。
貴族の子息令嬢は、この卒業式に婚約者を伴うことが習慣となっている。もちろん、一人の学生もいるが、殆どが将来の相手をこの場で披露するのだ。
セインの婚約者お披露目は、この日、されることになっていたので、みなが、セインの入場を待っているようだった。
「セイン、私、どこも変では、ありませんか?」
「変だなんて。とっても似合っているよ!」
「……本当ですか?」
「本当だとも。君の瞳の色に合わせたルビーの宝飾品も僕の正装に合わせたそのドレスも、とても似合っている」
「それなら……」
着慣れない豪奢なドレスに戸惑いながら、セインの腕に手をかけた。ふっと体を寄せてきたセインが、イタズラっぽく囁いた。
「ネズミのリアから、人間に戻ったときのリーリヤが一番綺麗だと思うよ!」
「……それって!」
真っ赤に顔をさせたとき、扉が開く。「行こうか。どんなことがあっても、守るから」と声がかかり、セインの隣で歩を進める。
……卒業式。本当に、私、戻ってこれたんだ。好奇の目にさらされるかもしれないけど、大丈夫。セインが隣にいてくれるから。
見慣れた同級生は、私の顔を見て、みな驚いていた。一番驚いた顔をしていたのは、他ならぬエリーゼだったが、その隣に座ってたアンダルトは私に見惚れている。
「アンダルトは、リーリヤの美しさに見惚れてしまったのかな? 口が開いたままだし、リーリヤをずっと目で追っているよ?」
「冗談は止めてください! 私はアンダルト様にとって、つまらない女なのですから……」
「今の様子だと、すぐにでもアンダルトの元へ戻ってきてくれと懇願されそうだよね? どう見ても」
クスクスと笑うセインに、不満そうな表情をする。「それも可愛いね」と愛おしそうに言うので、顔を前へと背けた。
「……戻ってきてくれとアンダルト様に懇願されても、婚約解消を申し出たのはアンダルト様ですから。それに、今は、あなたの側に」
「そうだった。アンダルトにも他の令息にも渡すつもりは、全くないよ?」
クスクスと仲睦まじく笑い合い、指定されたところへ着席する。公爵令息であるアンダルトの前に座ったため、私に、後ろから話しかけてきた。
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