卒業の通知
卒業式の数日前には、用意された課題は全て終わり、無事、セインと同じく学園を卒業することが決まった。夜、いつものようにセインが部屋に来て、私に手紙を渡してくれる。
「卒業が決まった知らせだよ」
セインのおかげで、特別に許可をもらい、課題の提出を以て、卒業することを許されたのだが、今日、学園側から、卒業の通達をセインがもらってきてくれた。
「セインのおかげで、無事に卒業をすることができます。ありがとうございました」
「たいしたことは、していないよ。課題を頑張ったのは、リアだから。一緒に卒業できるよう、少し先生たちに頼んだだけだから」
「……特別措置ってことですよね? よかったのでしょうか?」
「もちろん! 僕がリアと一緒に卒業をしたかったからね!」
「私もセインや他の友人たちと一緒に卒業式を迎えられることは、とても嬉しいです!」
「アンダルトもだけど? それも嬉しい?」
「……どうですかね。正直、アンダルト様とエリーゼ嬢のことはわかりません。会ってみないと、何とも。それより、どうやって、特別措置をお願いしたのですか?」
「……どうって……、すごく簡単だよ?」
手招きされたので、セインの隣に座り直すと引き寄せられる。耳元で「リアが僕のお嫁さんになるための花嫁修業中だから、大目に見てって言ったんだ」と囁かれ、驚きでセインの方を見ると、少し頬が赤くなっていた。
「もう、学園では、知っている人がいるのですか?」
「いや、一部のものだけだよ。多くのものは、当日まで知らないだろう。口止めしてあるから」
いたずら好きなセインは笑う。卒業式の前日に一度侯爵の屋敷に戻る提案もしてくれたが、私は首を横に振り、一緒に卒業式へ行くことをお願いした。
「そういえば、先日、王妃様から借りたおまじないの本があるのですけど」
「何かいいのがある? リアと僕が死ぬまで……死んでからもずっと仲良くいられるようにとか……」
「セインもこういうおまじないを信じるほうなのですか?」
「いや、もし、そういうおまじないをしたと言われたら、嬉しいと思っただけだ」
「おまじないをしなくても、私はセインのことを心から愛しています。ネズミだった私にまで愛情をかけてくださったこと、私は忘れませんから」
「僕もリアのこと、愛しているよ。ずっとね……」
「陛下と王妃様のように、仲睦まじくいられたら、幸せですね」
肩に寄りかかると、「そうだね」と返ってくる。その言葉は、とても優しい。
気になるおまじないの話をしないとと思いセインから離れる。名残惜しいとお互い思っていることは、離れていく距離で感じていた。
「そういえば、おまじないの本で1つ気になるものがありました。もしかしたら……と思っています」
「どれ? 見せてくれる?」
王妃から借りているおまじないの本をベルに持ってきてもらい、気になるページを捲ると表情が変わった。
「エリーゼ嬢の前に立つことになる。リアはもう大丈夫だと思うけど、一応、気を付けておいた方がいいね」
「はい」と返事をし、卒業式当日、もしものときを考え、ベルとロン兄妹を含め、対抗策を深夜まで話し合った。
このおまじないが、私の探している呪いだとしても、対処しきれるかの不安ではあった。「大丈夫、僕がついているから」と手を握ってくれるセインの優しい表情を見て頷く。セインの愛情に包まれている、そう感じずにはいられなかった。
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