王妃とお茶会
ベルに準備をされ、翌日王妃のお茶会へと出向く。中庭に私とのお茶会だけのために作られた特設の会場で、王妃の侍女たちが、せわしなく準備をしているところだった。
チラリと見れば、昨日来ていた侍女はいないようだった。
「少し早すぎたかしら?」
侍女に話しかけると、私とベルを見て優しく微笑んでくれる。
「王太子妃様、ようこそおいでくださいました。今、準備は整っていますので、どうぞおかけください」
……ここでも、王太子妃なのね。まだ、違うのに……。
心の中で、複雑な想いを抱えながらも、ニコリと笑かけた。
侍女に勧められるまま、ベルに椅子を引いてもらい座る。王妃の私的なお茶会とはいえ、とてもこじんまりしているが、上品さを失わずに落ち着く場所であった。
「素敵な場所ね!」
「えぇ、そうでしょ? 王宮の中で、1番好きなところよ」
「王妃様!」
「リーリヤ、そのままで」
ベルに話しかけたつもりが、近くまで王妃が来ていたようで、驚いて立ち上がろうとした。それを制してくれ、対面に用意された席へと座る。日差しは真冬ではあるので冷たいように感じるが、用意されている場所は中庭にある温室なので、寒さは感じなかった。
「よく来てくださったわ。あまり、お会いする機会がなかったから……」
「お招きいただき、ありがとうございます。とても素敵な場所ですね? 王宮にはあまり縁がなかったので、初めてです」
「そうだったの。それなら、もっと早く、招待すればよかったわ。今日は、リーリヤと二人でゆっくり話をしてみたいと思って開かせてもらったわ。楽しんでくれると嬉しいのだけど」
……王妃様は、私のことをよく思っていらっしゃらないのね。
王妃は優しく微笑んでいるが、目は笑っていないように見える。王太子であるセインが選んだものを見定めてやろうという感じを受けた。
……大丈夫、そういうのには慣れているから。王妃様のお眼鏡に適うとは思えないけど……精一杯、気に入っていただけるようにするしかないわ。
今後も続くであろう嫁姑問題。私は、幼い頃から今まで公爵夫人とは仲良くさせてもらっていた。今回、急にセインの婚約者として、事件にもなっている私を迎え入れることをよく思っていないのかもしれないと考えていた。
「リーリヤ、それほど身構えないでちょうだい」
私が緊張をしていることが、伝わったようで、今度はニコリと笑う王妃。さっきとは、雰囲気すら変わったことに、戸惑う。
「いえ、身構えてなど……」
「それならいいわ。ここだけの話、私、セインとの結婚をとても嬉しく思っているのよ」
扇子で口元隠した王妃は、秘密だと言わんばかりに小声になった。
「公爵夫人には内緒ですけど……アンダルトには、リーリヤはもったいないわ」
前置きをしてから、公爵夫人が王妃とのお茶会で私のことを褒めてくれていたようで、以前から気になっていたそうだ。
「リーリヤがうちのお嫁さんにくるって、いつも私に自慢をいうの。私、ちょっと悔しくて。あなたのことを調べさせてもらったの。そうすると、ますます羨ましくなってしまって……セインもあなたのことを好いていると知ったとき、どうやって息子の恋の後押しをしようかって、ずっと悩んでいたわ!」
表情をコロコロと変えて、王妃は私に自身の胸の内を話していく。まさかの話に、私はきょとんとなってしまい、王妃を見つめることしかできなかった。
「叶わないとしても、セインと結ばれてくれればと何度も何度も願っていたら、まさか、こんな事態になるとは、嬉しくて仕方がないの!
リーリヤ、これから王家を支える者同士、末永く仲良くいたしましょう! 今日は、そのためのお茶会ですから、楽しんでちょうだい」
実のところ、ベルにも、セインとの婚約のことをよく思っていないのでは? と、王妃に警戒をしていた。私自身も王妃とは数回しか会ったことがなかったので、人となりがわからず、身構えていたのだが、私を快く迎えてくれるというので、いくぶんかホッと胸を撫で下ろした。
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