ドレスの図案
セインはコホンと咳をひとつし、これをと数枚の薄い冊子を差し出してきた。
……何かしら?
手に取って、近くの1冊を広げてみると、そこにはドレスの図案があった。
「……これは?」
「卒業式にリアが着るドレスの図案だよ。一通り見てみたんだけど、どれもこれもリアに似合いそうで……どれがいいかな?」
「殿下、全て広げてもよろしいですか?」
「あぁ、構わない。リアにも見せてあげて!」
私が持ったそれは、純白のドレスに青いリボンがとても綺麗なドレスであった。
「卒業式に間に合うよう、作らないといけないからね。どれがいいか、決めて欲しいんだ」
「……セインは、どれがいいと思いますか?」
「僕の意見を? それより、リアが身につけたいもののほうがいいのでは?」
「殿下、わかっていらっしゃいませんね? リーリヤ様は、選んでほしいのですよ。殿下に」
「ベルっ!」
私は慌ててベルを呼ぶ。ニヤニヤとしているベルと頭が痛そうにこめかみを押さえているロン。セインは、私の顔を見て嬉しそうにしている。
「リーリヤ様、この際です、はっきり申しましょう。アンダルト様より、殿下の方が、女性の気持ちには鈍いですから、どんどん思ったことを口にされないと、気付いていただけませんよ? リーリヤ様の好みになんて言っていますが、結局のところ、何を着ても可愛いとしか言ってもらえませんから、きちんと、想いを伝えてください」
「……は、はい。ベル、そういたします」
「ドレスはお好みもあるでしょうから、殿下には3つほど選んでいただきましょう!」
セインの性格も私のことも把握しているベルは、とても頼りになる。考えていたことを先に言われてしまったが、私は理由を口にしようともしなかったので、ベルのおかげで行き違いがなくなったようだ。
「そういうことなら……リアに着てもらいたいドレスは、これと、これと……リアが持っているこれだな。その中に、リアが気に入るものがあればいいけど……?」
セインが持ってきてくれた図案を片付け選んだものだけを前に置いてくれた。
「どれも素敵ですね。春らしい温かみのある薄紅色、若葉芽吹くときを思い起こさせる若草色、それと……」
「結婚式の花嫁のようだね。結婚式で青い色は幸せをもたらす色って言われているし。……ん?」
「……見ないでください!」
私は想像してしまったのだ。このドレスを着て、みなに祝福され、教会のバージンロード歩く姿を。顔が、全身が、とにかく熱い。
それを見て、セインがニヤッと笑っている。
「あれあれ? リアは何か想像したのかなぁ? それ、僕にも詳しく聞かせてくれる?」
「……何もしていません! セインは、優しい王子様だと思っていたのに、意外と意地悪なんですね!」
「そうかもね。僕も知らない一面をリアが引き出してしまったようだ。リアが、可愛いから仕方がない」
「……仕方がなくはないです! もう!」
「リアが想像したことは、僕も想像したから恥ずかしいことではないよ。どのドレスがいいか、考えておいて」
「いえ、今」
「もう? 気に入ったのがあったなら、いいけど……大丈夫? 無理はしていない?」
「……していません! あの、このドレスでお願いします!」
1番初めに手に取っていた図案をセインに渡すと「だと思った」と、嬉しそうに笑う。
「最後にこれをと言ったけど、先に見させてもらったときに、見た瞬間にこれがいいと思っていたんだ。リアと意見が合って、嬉しいよ」
図案を引き寄せ、一緒に見る。「楽しみだね」と優しく囁くので、頷いた。
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