課題
上機嫌のセインは私から体を離していく。少し名残惜しいような気がしたが、それは言わない。隣に座ったままのセインは、私と手を繋いで、肩にコテンと頭を乗せる。
「お茶をお淹れいたしましたので、冷めないうちに……殿下、心配しなくても……」
「ベル、それ以上は言わないであげて欲しい」
「……ロン」
「殿下は、少々舞い上がっているようなので、少しの間だけ、リーリヤ様との時間を楽しませて……」
「少しとかいうもんじゃないよ? ロン。これからは、毎晩通うのだから!」
セインの『毎晩』という言葉に反応したのは、私だけではない。ベルもロンもセインを見て、少し引いている。
「……毎晩ですか?」
「あぁ、毎晩」
「……そんな」
「何か、リアは僕がこの部屋に通うことに不都合でも?」
「いえ、嬉しいのですけど、セイン殿下……」
「リア、セインね?」
「……セインは、お忙しいので、無理はされていませんか?」
「あぁ、それなら大丈夫。お茶を一杯飲む休憩も兼ねてだよ。それに、用事があってくるのだから、やましいことは、何もないわけだし」
ジトっとした目で見ているベルに、居心地の悪そうなセイン。これまでの二人の関係性が垣間見える。
「……殿下、嫁入り前のご令嬢です。ただでさえ、今は、趣味の悪い殿下の悪だくみにリーリア様を巻き込んでいるのですから、もう少し配慮が必要ではないですか?」
「趣味の悪い……、確かに。でも、一日の終わりに、好きな女性の顔を見るくらい、ベル、頼むから許してくれ」
盛大なため息とともに、ベルに許されたセインではあるが、ロンの方がやれやれとこっそり首を振っていた。
「あの、セイン殿下」
「セインね。ほら、セイン」
「セイン。お気持ちは嬉しいのですが、毎晩となると、外聞がよろしくないのではないですか? まだ、婚約も公表されていないのですし」
「そういえば、そうだね。まだだった。こういうことは、気持ちが逸りすぎていけないね。年も明けたことだし、卒業式に向けて、先に婚約をした発表をしてもいいか父に聞いておこう。それなら、なんの問題もないだろう」
「……あると思いますが」
「ベルは、リアの侍女になってから、僕に手厳しくないかい?」
「そんなことないですよ? 今まで通り、殿下には、誠心誠意、真心を込めてお仕えいたしておりますから。リーリヤ様を悪しきものからお守りするのも、私の役目でございますし」
「その悪しきものに、僕も含まれていそうなんだけど」
「いえ……」といいながらも、それ以上は言わないベルに、入っているんだと確信した。そろそろ、話題を変えた方がいいだろう。セインに向き直る。
「……あの、それで、今日、お話があると聞いていたのですけど」
「そうだった、ロン」
セインに呼ばれ、ロンが持っていた書類を机に置く。
「……これは?」
「学園の課題だよ。学園長にお願いして、特別処置で、この課題を仕上げれば、リアも卒業できると話を付けてきた。これに手間取ってしまって、会いに来るのが遅くなってしまったんだ。精力的に活動をしてくれていたみたいだけど、明日からは、これに取り組んでもらえるかな?」
「かしこまりました。明日は、課題をしておきます」
「採点については、学園ですることになってる。出来上がったものは、毎日来るから、そのときに渡してもらえればいい。それと……」
「他に何か?」
首を傾げていると、少しだけ赤らめた顔で、私とベルの名を呼んだのである。
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